引用:西武・山川穂高「三冠王を目標に」 天性の本塁打アーチストが語る夢 - スポーツナビ
柔の中村剛也、剛の山川穂高。
似た身長体重、右投げ右打ちの内野手、魅力は本塁打。
埼玉西武ライオンズの山川穂高選手は、ライオンズの先輩・中村剛也選手と比較され続けてきた。
一時はバッティングフォームまでそっくりになり、おかわり二世とまで呼ばれるように。
入団してから3年間。
山川選手が一軍に定着することはなかった。
しかし、悩み、もがき苦しんだ3年間は決して無駄ではない。
貴重な3年間は山川選手を真のスラッガーとして覚醒させようとしている。
そこで今日は球界を代表するホームランバッターになれる逸材、埼玉西武ライオンズの山川穂高選手の魅力について語っていく。
山川穂高選手とは
【基本プロフィール】
- 生年月日 1991年11月23日(26歳)
- 出身地 沖縄県那覇市
- 身長 176㎝
- 体重 100g
- 所属 埼玉西武ライオンズ
- ポジション 三塁手、一塁手
- 推定年俸 3,240万円(2018年)
- 経歴 沖縄県立中部商業高等学校→富士大学→埼玉西武ライオンズ
沖縄県立中部商業高等学校では2年生時の秋から4番・右翼手。
高校通算27本塁打。
甲子園出場経験なし。
高校卒業後は富士大学に進学。
富士大学では1年生の春から4番。
北東北大学野球・秋季リーグでは打点王を獲得するなど、リーグ屈指の強打者として活躍。
2年生の時に、第38回日米大学野球選手権大会の日本代表に選出されるなど、徐々に知名度が増していった。
3年生の時には、11月開幕の第26回アジア野球選手権大会の日本代表に選出。
大学4年生時の10月に行われた東アジア競技大会では、大学生で唯一日本代表に選ばれて4番を務め、韓国戦で満塁本塁打を放った。
大学リーグ通算成績は78試合出場、11本塁打、55打点、打率.304。
大学生最後の第5回明治神宮野球大会東北地区大会では準優勝に終わった。
2013年に行われたプロ野球ドラフト会議で、埼玉西武ライオンズが2位指名。
契約金7,000万円、推定年俸1,200万円で仮契約。
同大学からは4人目のプロ入りで、野手では初となった。
※なお、その後ドラフト会議で西武は山川含めて3年連続で富士大学の選手を指名している。
プロ一年目の2014年6月21日の対横浜DeNAベイスターズ戦にて5番・指名打者でプロ初先発・初出場。
一軍昇格から後7試合で、15打数無安打3四球と一軍レベルの対応に苦しんだ。
しかし、9月15日の対東北楽天ゴールデンイーグルス戦でプロ初安打となる本塁打。
この年一軍で放った3安打の内2本が本塁打と、天性の長距離砲の片鱗をのぞかせた。
二軍では5月度の月間MVPに選出。
フレッシュオールスターゲームに4番・一塁手で先発出場、2点本塁打を含む3打数2安打1四球の成績で優秀選手賞を受賞。
二軍通算では21本塁打を放ってイースタン・リーグの最多本塁打者になり、打点部門でもリーグ二位(62打点)。
二軍レベルでは、格の違いを見せつけた。
二年目の2015年は一軍出場1試合に終わった。
2016年はオリックス・バファローズとの開幕戦に7番・一塁手で先発出場。
ただ、結果を残せず序盤に二軍落ち。
シーズン後半から一軍に再昇格。
この年、8月19日の対千葉ロッテマリーンズ戦で2打席連続本塁打を放つと、21日の対ロッテ戦、9月20日の対オリックス戦でも2打席連続本塁打を記録。
最終的には、自身初の2桁本塁打を達成。
打率.259ながら、OPS.925。
36安打中、本塁打14本と相変わらず高い本塁打率を残した。
なお、二軍では64試合に出場して22本塁打。
二度目のイーズタン・リーグ最多本塁打者賞を受賞した。
2017年はシーズン序盤は不振のために、途中二軍暮らし。
夏場以降は勝負強い打撃でレギュラーのポジションを奪取。
8、9&10月の月間MVPに、二か月連続で輝くなど、飛躍の一年となった。
ピアノに書道 器用で多彩な男
引用:西武ドラ2山川は“動ける”巨漢108キロ 逆立ち披露― スポニチ Sponichi Annex 野球
見かけによらずと言っては失礼だが、山川選手は非常に器用な人物。
幼稚園の頃に始めた習字は8段。
サインやシーズン開幕前に書く絵馬の字を見ると非常に達筆なことがうかがえる。
また、大学生時代からピアノを趣味としている。
しかも独学で始めた趣味だそうで、 今では楽譜なしで、クラシックの名曲の数々を弾ける。
「カノン、エリーゼのために、匠、サマーは楽譜を見ないで弾けます。弾くとリラックスできるんです」と、意外な趣味を披露した。
身長176㎝、体重100gながら50mのタイムは6秒2と俊足。
愛称は故郷・沖縄のブランド豚の名から、「アグー」と呼ばれる。
ただ、「バック宙もできる」ほどの身軽な巨漢。
プロ入団当初は守備に難があったが、徐々に改善されつつある。
その器用さが野球にも活かされつつあり、色んな意味で楽しみな選手だ。
苦しんだ未完の大器
引用:山川穂高内野手・自覚が増した大砲が大アピール! | 週刊ベースボールONLINE プロ野球・ドラフト注目選手のコラム・インタビュー・戦力分析・予想・試合レポートなど徹底取材
そんな山川選手だが、入団してからのプロ3年間は非常に苦しんだ。
その要因の一つに、プロ意識の低さが挙げられる。
プロ入り最初のキャンプ前に、暴飲暴食でウェイトオーバーして入寮。
「地元で食べ過ぎてしまいました。昼に沖縄そばを6杯、夜はステーキを10枚。毎日じゃないですけど、お酒も泡盛を1升ぐらい。おいしかったです」。体重は公表よりも8キロ増の108キロに達したことを明かした。
コーラを1.5Lも愛飲するなど、プロ野球選手とは思えない食生活を暴露して話題にもなった。
インタビューの受け答えを見ていても芯がなく、「プロの世界でやっていけるのかな」というのが私の第一印象だった。
プロは結果が全ての世界。
私生活がどんなにハチャメチャでも、試合で結果を残せば許される。
しかし、現実は甘くなかった。
同期のドラフト1位で、同じスラッガータイプの森友哉選手が一年目から一軍で結果を残す中、山川選手は一軍投手の対応に苦慮した。
一軍には同じ右の大砲の中村、メヒア選手がレギュラーで活躍しており、山川選手は出場機会すら限られていた。
いつまでもうかうかしていられない。
先輩と後輩が活躍する中、山川選手の立場は徐々に危ういものになっていた。
脱おかわり二世への序章
引用:“おかわり2世”西武・山川穂高、持ち前の長打力が開花した背景。2017年は「下位にいると怖いと思われる打者に」【2016年ブレイク選手】 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)
そんな山川選手が一軍で活躍し始めたのは2016年のシーズン後半。
この年の西武は優勝戦線からも離脱し、主砲の中村選手も怪我と打撃不振に苦しんでいた。
そんな中で、来季も見据えて山川選手に出場機会が与えられた。
そこで山川選手は大器の片鱗を見せた。
2016年の通算成績は出場49試合で打率.259ながら、本塁打14本、OPS.925。
二打席連続本塁打を2回記録するなど、本家おかわり中村選手のお株を奪う活躍を見せた。
実はこの活躍の背景には脱おかわり二世とプロでの経験があった。
山川選手は前述した通り、非常に器用な選手。
大学時代には動画を参考にして、中村剛也選手の打撃フォームを”完コピ”したそうだ。
確かに打席に入る仕草から、バッティングフォームまで、瓜二つだった。
打撃成績を除けば...。
一軍で結果を残せないでいた山川選手。
一見中村選手とそっくりな打撃フォームだが、周囲は中村と山川選手の打撃フォームの特徴は異なると見ていた。
常に“中村剛也の打撃”を身につけることだけを求め、研究し、プロ入りするにまで至った。周囲からも「そっくり」と認められた。だが、田邊徳雄監督、宮地コーチなど、プロの目から見れば評価は真逆。両者とも入団直後から、「中村は下半身、山川は上半身を使った打撃。フォームは似ていても、2人は全く違う」と分析していた。また、中村も以前、「山川は、上半身の力が強い。もっと下半身を上手く使えるようになったら、さらに飛距離が伸びると思います」と、自分との身体の使い方の違いを話していたことがある。
中村選手が技術で打球を飛ばすのに対して、山川選手はリストを中心とした上半身の強さで運ぶタイプ。
中村選手は前でボールを裁くのに対して、山川選手は非常にポイントが近い。
また、中村選手は左足を投手方向にまっすぐ踏み出すのとは対照的に、山川選手は三塁方向に開き気味に踏み出す。
どちらかというと、元巨人の二岡智宏、元広島の栗原健太、現ヤクルトの畠山和洋選手に近い打撃フォームだ。
成績は中村剛也選手のような本塁打、打点、OPSを目指すべきだったが、参考にすべき打撃フォームは違っていたのだ。
そのことに気づけた山川選手は”脱中村剛也選手”を図り、自分の特徴を活かすフォームを模索し始めた。
「今年になるまで、とにかく真似しようと思っていました。でも、構えは似ていても、打ちにいってからのバットを出す軌道や足の着き方が、全然違うんですね。中村さんは、リスト(手首)の強さで打っている僕とは違って、腰を中心に回って打つタイプ。バットも、腰元で構えて、指を2、3本添える感じで握るだけですし、ステップした足も、真っ直ぐに下ろして閉じています。だから僕も、そこにこだわって、まっすぐ下ろして、『閉じよう、閉じよう』と意識していたのですが、それに必死になりすぎて、逆に、上半身(肩)が開いていたんです」
それが、今年になって、「違くてもいいや」と、思えるようになったことで、結果が変わってきたという。「ステップして下ろした足が開いても、つま先さえ外側に開かなければ、僕の場合は回転しやすい。それに、構える位置も、肩付近にして、ヘッドを入れて、円を描くように振る。中村さんとは、全然違いますが、それが、今一番自分の中でハマっているんです」。結果が出たことで、「僕はこれでいいんだ」と思えるようになった。そして、打席の中で、自分とではなく、相手投手とだけ戦うことができるようになったことが、好結果につながっているのだ。
元々、山川選手は様々なことを実践してみて、修正することで結果を出すタイプ。
「2軍に落ちてきた時、自ら守備や走塁の個別練習を願い出てきたことも多々あった。それは、今までのあいつにはなかった部分。ただ打つだけの選手では使ってもらえないことを思い知ったと思う。でも、その代わり、そうした失敗を確実に自分の引き出しにすることができているのも、すごいこと」
歩みの遅さは、誰よりも山川自身が十分承知だ。
「僕は、どっちかといったら、昔から遠回りをするタイプ。上手くいかなくて、やらかして、『うわー、やべー』と思って、何とかする、みたいな感じで高校からずっとやってきました。今もまた、少しだけですが、結果が出てきたら、インサイドを攻められるようになってきて、また痛い目を見ています。
まだまだ、これからも、いろいろ失敗をすると思いますし、痛い目をみることはたくさんあると思いますが、1つ1つを乗り越えることができれば、 “一流”と言われる選手たちと対等に立てると思います。今はまだ、難しすぎて出来ないですが、いつか、中村さんの打ち方ができればいい。『ホームランの打ち損じがホームラン』と言っている、憧れの人。そんな選手に、これからなっていきたいです」
器用に見えて実は不器用。
遅咲きの大砲が徐々に進化を遂げはじめたのだ。
決意の2017年 闘志むき出しの戦う男に変貌
引用:西武、則本攻略で11連勝&楽天と5差 源田が巧打&好走塁、山川は3連発! | BASEBALL KING
決意を持って臨んだ2017年。
オフには大好きだったコーラの量を減らして、減量を敢行。
大好物のコーラと米を断ち、体重を現在の107キロから5キロ落とす意向。「一年を通じて戦える体にしたい。体が重いと思う時期もあった。パワーは落とさず、将来的な膝への負担も考えて食事制限する」。この日は埼玉・所沢での野球教室に参加。「(来季は)ずっと1軍で30発。2軍で打つ気はない」と言い切った。
そこには、かつて意識が低かった山川選手の姿はもういない。
2017年は2016年と同じよう推移を辿った。
開幕当初こそ、出場機会を与えられたものの、結果を残せず二軍落ち。
しかし、2軍で違いを見せつけ、7月に再昇格を果たすとチームの起爆剤になる働きを見せている。
中村、メヒアが不振で苦しむ中、指名打者や一塁手として出場の機会を与えられると長打を連発。
8月2日の楽天戦では、則本投手からの2打席連発を含む3打席連続の本塁打を記録。
8/5終了時点で、再昇格後19試合で、5本塁打、20打点。
勝負どころでもタイムリーを連発し、チームに欠かせない選手になっている。
何より目を見張るのが、表情の変化。
結果を残せば、笑顔や闘志むき出しの表情で喜びを爆発。
結果を残せない時は、この世の終わりかのような表情を見せる。
入団当初にはなかった、闘う姿勢が前面に出ている。
今の西武の選手で最も気迫をむき出しにして戦う”戦士”へと変貌を遂げたのだ。
実は2016年に結果を残したことについて、山川選手は気持ちの変化を要因として上げている。
山川はこのときの手ごたえをこう語っている。
「2軍での打席の技術、精神状態が1軍でも出せているというのが1番大きいですね。どこか自分に自信を持てていなかったのが、今はそれを持って打席に入れる。1軍と2軍でボールが違うのは当然ですけど、以前までは1軍のボールを見て、打てるかな?と思ってしまったことがあったんですが、いまは打てるという自信が持てる。それが一番大きいことかなと思います」
技術的にも精神的にも、ようやくプロ野球の世界で戦える準備が整ったようだ。
奇跡の逆転優勝を目指すチームにとって、既に山川選手は欠かせない選手になっている。
これからの山川選手の活躍から目が離せない。
※追記 2017/10/15
2017年11月に行われる【アジアプロ野球チャンピオンシップ2017】のメンバーに選出されました。
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まとめ
チームは現在、勝負の夏場を迎えている。
燃える想いの熱き若獅子が、かつてのパの盟主の9年越しの悲願達成の夢を叶えてくれる。
私はそう信じている。
次代を担う大砲の活躍に注目して欲しい。
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