西武の新たな18番を背負う男。
郭泰源、松坂大輔、涌井秀章、そして多和田真三郎。
西武ライオンズの黄金時代から現在に至るまで、そうそうたる右投手が付けてきたライオンズの背番号18。
2013年に涌井秀章投手が千葉ロッテマリーンズにFA移籍してから2年間空白になっていたエースナンバー。
新たに託されたのは2015年のドラフト1位・多和田真三郎投手だった。
右膝全体が地面に着くほどの柔らかい下半身を活かしたフォームから繰り出されるノビのあるストレートと鋭い変化を見せるスライダーが特徴の本格派右腕。
好調時の奪三振を量産して相手打線を圧倒するピッチングはかつてのエースたちに引けを取らない。
今日はそんな埼玉西武ライオンズの新たなエース候補、多和田真三郎投手について語っていく。
多和田真三郎投手とは
【基本プロフィール】
生年月日 1993年4月13日(24歳)
出身地 沖縄県中頭郡中城村
身長 182㎝
所属 埼玉西武ライオンズ
ポジション 投手(右投右打)
推定年俸 2,300万円(2017年)
経歴 沖縄県立中部商業高等学校→富士大学→埼玉西武ライオンズ
中部商業高校では1年生の秋にベンチ入りし、2年生の秋にはエースとなった。
2年夏の全国高等学校野球選手権沖縄大会では糸満高校の現巨人の宮國椋丞投手と準々決勝で投げあい敗戦。
3年生は決勝戦で糸満高校に1-2で敗れ破れ甲子園出場はならなかった。
プロ志望届けを出すもプロから指名はなく、富士大学に進学。
1年春から登板機会を与えられると、第43回明治神宮野球大会の2回戦・国際武道大学戦で、1年生では史上2人目、大会史上4人目のノーヒットノーランを達成。
その後も成長を続け、大学時代にストレートの球速は最速152キロまで伸びる。
北東北大学リーグの中では図抜けた存在の投手となった。
4年春には6戦負けなしで、防御率0.20。
大学通算で大学通算で46試合に登板、316回1/3を投げ、32勝8敗、防御率1.08。
MVPを5回獲得し、リーグ新記録の299個の通算奪三振を記録を打ち立てた。
順調に来ていた大学生活だったが、4年次の5月に右肩を痛めてしまい、その後は公式戦はおろかピッチングする出来ない時期が続いた。
しかし、それでも多和田投手の評価は高く、ドラフト前に埼玉西武ライオンズが1位指名を明言。
2015年のドラフト会議で埼玉西武ライオンズから1巡目で指名を受け、契約金1億円プラス出来高払い5,000万円、推定年俸1,500万円で合意し、入団。
背番号は「18」に決まった。
なお、この指名で西武は3年連続で富士大学の選手を指名したことになった(山川穂高、外崎修汰)。
ルーキーイヤーは右肩の故障で開幕1軍を逃す。
5月に登録されると先発投手として起用される。
6月にプロ初勝利をマークしたものの、序盤は不安定な投球が続き、打ち込まれる場面が目立った。
8月以降に調子を上げると、8月11日の日本ハム戦では、先発登板して9回を投げ被安打3、奪三振8、与四球1、無失点の成績で、初完投・初完封勝利。
この年の新人選手の中で最初の完封勝利となった。
この完封勝利以降は5連勝。
5~6月は1勝3敗と苦しんだが、7~9月は6勝2敗と夏場に強さを見せた。
最終的には18試合に登板し、7勝5敗、防御率4.38、投球回数98.2、奪三振91をマーク。
2017年以降の飛躍を期待される内容となった。
多和田投手の球種 抜群の威力を誇るスライダー
多和田投手の球種は主に4つ。
投球割合は約55%がストレート、35%がスライダー、カーブ、フォークが5%ずつ。
投球の大半がストレートとスライダーで組み立てられている。
【球種配分&球種別被安打割合】
引用:2017年度 多和田 真三郎【西武】投手成績詳細(カウント別・球種配分)
直球の最速は最速152km/h。
ただ、残念ながらそのストレートはプロではまだ通用していない。
ストレートの被打率は2016年→.306、2017年→.328。
空振りもほとんど奪えておらず、投球を苦しくしている。
その一方でスライダーはプロでもトップクラス。
2016年のスライダー被打率は.184、空振り率も14.29%。
136被打者で奪三振47と3打者に1回は三振を奪っている。
この数字は2016年のスライダーを得意とするエース級投手の数字に引けを取らない。
【2016年のエース級投手のスライダー成績】
・則本昂大 被打率.263 空振り率15.49%
・涌井秀章 被打率.235 空振り率12.66%
・菅野智之 被打率.152 空振り率17.73%
ところがその好調だったスライダーもプロ2年目の2017年は中々通用せずにいる。
被打率.314、空振り率7.95%と一年目ほどのキレを見せられずにいる。
右肩痛が再発して、登録抹消されるなど苦しい投球が続く多和田投手。
6月末には1軍に復帰するなど、徐々に状態は上がっている。
1年目同様夏場からの活躍に期待したい。
現在最も日本一名前の長いプロ野球選手
実は多和田投手、プロ入り時点でプロ野球選手で一番に輝いていることがある。
それは名前の長さ。
「多和田真三郎」の漢字6文字の長さが中日の小笠原慎之介投手と並んで球界最長。
プロ野球史上2位タイ、11人しかいない希少な存在なのだ。
氏名が6文字の1軍選手は、2007年にソフトバンク・ホークスの左腕投手、田之上慶三郎が一軍で投げて以来、8年ぶり。過去には、これだけの6文字名前の選手がいた。
1939-40 鈴木田登満留(巨人)外野手 8安打
1942-51 祖父江東一郎(大洋、西鉄、毎日)外野手、投手 32安打 0勝1敗
1962-81 佐々木宏一郎(大洋、近鉄、南海)投手 132勝152敗
1980 大久保美智男(広島)投手 0勝0敗
1990 小野寺在二郎(ロッテ)外野手 1安打
1990-97 今久留主成幸(大洋、西鉄)捕手 3安打
1991 加世田美智久(西武)投手 0勝0敗
1995-00 井手元健一朗(中日、西武)投手 4勝3敗
1996-07 田之上慶三郎(ダイエー・ソフトバンク)投手39勝42敗
2016- 多和田真三郎(西武)投手 7勝6敗
2016- 小笠原慎之介(中日)投手 2勝6敗
全部で11人。みんな歌舞伎役者のような名前だ。
引用:西武の多和田真三郎と、中日の小笠原慎之介は「NPB史上2位タイ」…何が? | Full-count | フルカウント ―野球・MLBの総合コラムサイト―
ちなみに日本記録は7文字。
1948-49 赤根谷飛雄太郎(急映、東急)
今後改名でもしなければ記録を伸ばすことは出来ないが、剣豪のような名前は多和田投手の長所。
プロ野球選手はもちろん実力も大事だが、人気商売でもある。
名前を覚えてもらってなんぼの世界。
インパクトのある剣豪のような名前に相応しい活躍を見せて、名前のように息の長い野球人生になって欲しい。
ハマっ時は手がつけられない エースの座を争う戦い
プロ入り後好不調の波が激しい多和田投手。
プロ初登板の際には三者連続押し出し四球を記録。
新人選手が初登板で三者連続押し出しを記録したのは、1940年に小野寺洋が記録して以来2人目の不名誉な記録となった。
しかし、その一方ではまった時のピッチングはプロでも手がつけられない。
【2016年好調時の多和田投手】
・6/10 8回 0失点 被安打3 奪三振8 与四球2
・8/11 9回 0失点 被安打3 奪三振8 与四球1
・8/24 7回 2失点 被安打7 奪三振7 与四球1
・9/7 9回 1失点 被安打6 奪三振15 与四球1
・9/19 8回 2失点 被安打9 奪三振9 与四球0
9月7に記録した15奪三振はあの松坂大輔投手に並ぶ西武球団では17年ぶりの記録。
次期エースに相応しい衝撃的な投球であった。
今の松坂大輔選手復活に期待しない 2017年の活躍に期待を寄せて
現在のライオンズにはエース菊池雄星投手。
また2012年の甲子園優勝投手で2014年のドラフト1位・高橋光成投手。
更には2016年の甲子園優勝投手でドラフト1位・今井達也投手。
といった潜在能力の高い若い投手たちが多数いる。
いずれの投手もポテンシャルだけなら球界を代表する投手になってもおかしくない。
多和田投手にはポテンシャルの高いチームメイトたちと切磋琢磨しながら、彼らに負けない球界のエースになって欲しい。
それだけの素質を多和田投手は十分秘めている。
2017年前半戦は不調の多和田投手。
しかし、辻監督は就任以来一貫して多和田投手への期待を口にしている。
全ては今後を見据えてのこと。「俺がやっていることは目先じゃない。先のことを考えて、あいつが主軸にならないといけない。そう簡単に(ローテーションの順番を)変えることなんてできない」
その期待に応えるピッチングで、次期ライオンズのエースに登りつめることに期待したい。
※追記 2017/10/15
2017年11月に行われる【アジアプロ野球チャンピオンシップ2017】のメンバーに選出されました。
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まとめ
多和田投手の右膝全てがマウンドに着かんばかりの柔らかいフォームは芸術的で非常に美しい。
西口文也投手の舞うようなフォーム、多くの少年野球児が真似した松坂大輔投手のワインドアップモーション、投手のお手本のような涌井秀章投手のフォーム、鞭のように腕がしなる岸孝之投手。
ライオンズのエースたちは投げるボールと残した成績の凄さもさることながら、そのフォームの美しさでもファンを魅了してきた。
その偉大な先輩たちと肩を並べる多和田投手の投球フォーム。
投げ終わった後に軸足膝部のユニフォームに土が着く投手は好投手と言われている。
多和田投手の右膝はいつも”泥だらけ”。
アマチュア投手にお手本にして欲しい投球フォームだ。
先輩たちに負けない成績を残して、多和田投手のフォームを観るために球場に子ども達が来る。
そんな少年たちの憧れのエースに育って欲しい。
それでは、さようなら!