西武の大阪桐蔭カルテット。
現在の埼玉西武ライオンズには大阪桐蔭高校出身者が主軸を務めている。
6度の本塁打王不動の4番打者おかわり君こと中村剛也選手、2017年からキャプテンを務める2013年の打点王浅村栄斗選手、ルーキイヤーから強打で魅せる森友哉選手。
2015年には上記の三名が1試合でそろい踏みで本塁打を放ち、”大阪桐蔭トリオ”と称された。
西武ソロ5本で快勝 大阪桐蔭トリオ初そろい踏み - 野球 : 日刊スポーツ
しかし、西武ライオンズにはもう一人、大阪桐蔭出身の野手がいる。
それが今回ご紹介する埼玉西武ライオンズ・岡田雅利捕手だ。
まだプロに入ってレギュラーに定着したことはなく、”大阪桐蔭トリオ”と比べれば派手さはない。
それでも持ち前の強肩、強気なリード、明るいキャラクター、しぶといバッティングで徐々に存在感を放ちつつある。
正捕手炭谷銀仁朗捕手、大阪桐蔭高校の森捕手らライバルは強力だが、今や西武の正捕手争いに名乗りを挙げるまでに成長した。
今日は埼玉西武ライオンズの岡田雅利捕手について語っていく。
岡田雅利選手とは
【基本プロフィール】
生年月日 1989年6月30日(29歳)
出身地 奈良県奈良市
身長 172㎝
所属 埼玉西武ライオンズ
ポジション 投手(右投右打)
推定年俸 2,350万円(2018年)
大阪桐蔭高等学校時代は2年生から正捕手。
2006年の第88回全国高等学校野球選手権大会に出場。
1回戦で第78回選抜高等学校野球大会優勝校の横浜高等学校に勝利。
2回戦で斎藤佑樹を擁する早稲田実業に敗退。
3年生時の2007年の第79回選抜高等学校野球大会では中田翔とバッテリーを組みベスト8に進出。
第89回全国高等学校野球選手権大会・大阪大会では優勝候補に挙げられながらも、決勝で金光大阪高等学校に敗れ準優勝。
高校卒業後は社会人の名門大阪ガスに進んだ。
入社当社は先輩捕手の存在もあって、中々捕手としての出場はなかったが、DHで試合出場するなど、打撃で存在感を放った。
6年目の2013年、第84回都市対抗野球大会、第39回社会人野球日本選手権大会に捕手として出場。
その年に行われたプロ野球ドラフト会議で埼玉西武ライオンズに6巡目で指名された。
契約金4,000万円、年俸1,000万円(金額は推定)で仮契約を結び、背番号は「37」に決まった。
プロ一年間の2014年は怪我の影響で開幕は出会遅れたが、5月17日の対東北楽天ゴールデンイーグルス戦にて代走でプロ初出場。
その後、捕手としても出場し、22試合に出場した。
2015年は対オリックス・バファローズ戦の7回にプロ初本塁打を放った。
ちなみに、初安打、初本塁打のボールは全て奥様にプレゼントしているとのこと。
8月の対オリックス戦で二塁にヘッドスライディングした際に左肩を痛めて、登録抹消されてしまったが、年間で36試合に出場した。
2016年は序盤から先発出場する機会が増え、22試合で先発出場。
自己最多の47試合に出場し、出塁率も.338を記録するなどバッティングでも存在感を放った。
高校時代は中田翔の女房役
岡田選手の名が最初に全国に知れ渡ったのは大阪桐蔭高校時代。
二年生ながら、大阪桐蔭高校の正捕手として活躍。
本塁から二塁への送球1.9秒、機敏なフットワークの守備面はもちろん、状況に応じたバッティングと50メートル走のタイムは6秒0の俊足を活かした走塁など、攻守にハイレベルな捕手だった。
そのため、3年時には主に1、2番を任され、監督としてはこれほど頼もしい存在の選手はいなかった。
同級生には現日本ハムファイターズの中田翔選手がおり、互いに励ましあいながら名コンビに成長していった。
岡田君は中学時代、硬式野球チームに入っていた。高校で中田君の球を受け、「こんな速い球を投げるやつがいるのか」と驚いた。
1年の夏、部を辞めたいと漏らした時、中田君から引き留められた。「お前が辞めたらキャッチャーがおらへんようになる」
逆に中田君が昨春の府予選で右ひじを痛めてからは「お前の球は打たれへん」と励まし続けた。「中田は高校生で一番すごい投手」。その球を受けられることに誇りを持ってきた。
引用:asahi.com:高校野球「笑顔で励まし最後まで 大阪桐蔭・岡田雅利捕手」 - 第89回全国高校野球選手権大阪大会
丸山、岡田、山口、中田、堀、生島の強力な89年世代の中軸。
1学年下とはいえ、浅村選手が下位打線に座るほど、当時の大阪桐蔭高校のメンバーは豪華だった。
浅村選手が岡田選手のことを「こういう人がプロに行くんだ」と当時の岡田選手の実力に驚いたほど。
3年夏の決勝戦は金光大阪高等学校の植松優友(元ロッテ)投手の好投の前に甲子園出場はならなかったが、全国にその名を轟かせていた。
炭谷・森との熾烈な正捕手争い
大阪ガスを経て、プロ入りした岡田選手の周りには強力なライバルがひしめいていた。
ゴールデングラブ賞2回、ベストナイン1回、WBC出場2回を誇る不動の正捕手・炭谷銀仁朗選手。
大阪桐蔭高校の後輩で同期のドラフト1位、強肩強打の森友哉選手。
守備、打撃両面で自分よりも実績が上の存在とたった一つの捕手の枠を争っている。
岡田選手は折に触れて、ライバルたちへの想いを口にしている。
「銀仁朗さんと違うリードをしなければ勝ち残れない」、「元気では負けない」、「森を意識しないと言えば嘘になる」
元々岡田選手が西武に入団したのも、森選手の教育役としての側面もあった。
森にとっては岡田(雅利、25=大阪ガスを経て13年ドラフト6位・捕手)の存在が大きいのでは。最初は同じポジションでどうかなと思いましたが、岡田と森が気が合うという性格的なところも見抜いておられた後藤スカウト、球団の方針がはまって森がのびのびとやれているのだと感じます」。
しかし岡田選手にも意地がある。
森選手とは同期入団でドラフト1位と6位の差があれど、6歳も下の同じポジション・高校の選手に負けたくない思いが当然ある。
実際、キャンプではライバル心むき出しで森選手と争っている。
森友哉vs.岡田雅利の配球一本勝負。西武の紅白戦で見た捕手サバイバル。(3/4) - プロ野球 - Number Web - ナンバー
プロ一年目のインタビューで、1軍の試合になると気後れしてしまい積極性が失われてしまうとこぼしていた岡田選手。
しかし、プロの水に慣れてきたこと、自身の技術的な成長もあって、徐々に持ち前の強気なリードで投手を引っ張れるようになってきた。
入団後出場試合数は22→36→47と年々増加している。
また、打撃でも少ない打席数ながら出塁率が.212→.283→.338と向上。
正捕手を争う炭谷選手の出塁率のキャリアハイが.274、通算でも.244であることを考えれば、十分合格点だ。
森選手ほどの強打ではないが、捕手で出塁率.338あれば申し分ない。
打撃:森>岡田>炭谷
守備:炭谷>岡田>森
岡田選手にしかない突出したものはまだ見えていないが、岡田選手にしかないものが見えてきた時、正捕手の座はぐっと近づく。
第二捕手の重要性 存在感を増す岡田選手
そんな岡田選手の頑張りが2017年になって徐々に形になり始めた。
6/30終了時点で30試合に出場、スタメンマスクは16試合。
森選手が骨折の影響で離脱しているとはいえ、キャリアハイに迫るペースで出場を重ねている。
主に佐野、十亀、多和田といった先発投手の試合時にマスクをかぶっている。
球の力はあるが、制球に難があるいわゆる荒れ球タイプの投手とコンビを組むことが多い。
そこには、「ピッチャーにどれだけ気持ち良くなげさせる」を信条とした強気なリードが持ち味の岡田選手に投手を引っ張って欲しいという首脳陣の意図が現れている。
また課題のバッティングもここまで出塁率.290とまずまずの働き。
5月17日のロッテ戦ではプロ4年目で初となる猛打賞を達成。
攻守に存在感を放っている。
そんな岡田選手の働きを秋元コーチも認めている。
対して第二捕手の岡田について、秋元コーチは「打つほうでしぶとさがあって面白い。リード面では、ピッチャーの良さを引き出そうとするのは炭谷も同じですけど、岡田のほうがより表に出る」という。
交流戦の折り返し時点で貯金10を積み上げた西武で、二人の役割分担は明確だ。菊池雄星、ウルフ、野上亮磨という経験のある中心投手を炭谷が引っ張り、プロ入り3年目の佐野泰雄や昨季勝ち星を伸ばせなかった十亀剣という今後の上積みが期待される投手の持ち味を岡田が引き出している。
投手と捕手には相性があり、それぞれの投球スタイルと配球面、つまり二人の呼吸が合致したとき、バッテリーは1+1の力を2以上に発揮することができる。また、ある投手が思うように勝ち星を伸ばせない場合、捕手を変えてみることで持ち味が引き出されることも少なくない。
たとえば、今季の十亀の場合だ。初登板からの2試合で岡田がマスクをかぶって勝利できず、5月10日の日本ハム戦からの3試合で炭谷と組んで1勝1敗。6月1日の広島戦から再び岡田がボールを受け、2連勝を飾っている。
「岡田は普段から炭谷のリードを見て感じたことを、リードとしてやってくれている。炭谷にない部分を見せてくれています」
2017/6/30時点で、岡田選手がスタメンマスクを被った試合の西武の勝敗は10勝6敗、勝率.625。
第二捕手としてその存在がますます大きくなってきた。
今後もその強気なリードとしぶといつなぎのバッティングでチームを盛り上げていって欲しい。
まとめ
入団当初の状況を考えれば、岡田選手にここまで活躍をすると期待した人はいなかっただろう。
しかし、今や正捕手・炭谷選手を脅かす存在にまで成長した。
球団としては将来的に森選手に正捕手になって欲しいだろうが、そうは岡田選手が許さない。
岡田選手が森選手を押しのけるほどの活躍をした時、それは西武のチーム力が非常に高まった時だ。
いつか”大阪桐蔭カルテット”と呼ばれる日に期待したい。
それでは、さようなら!
大阪桐蔭高校OB記事
・阪神藤浪晋太郎選手は大谷翔平に負けないほどのポテンシャルを秘めている