中日ドラゴンズの平田良介選手と聞いてどういうイメージを浮かべるだろうか。
高校通算70本塁打の実績から右のスラッガーをイメージする人も多いだろう。
しかし、実際のところは走攻守のバランスに優れた万能戦士なのだ。
平田選手のプロ入り後の本塁打実績だけを見ると物足りない印象を受けるが、彼を走・攻・守のバランスがとれた選手として見ると非常に優秀な選手。
平田選手のインタビューや大阪桐蔭高校時代の恩師・西谷浩一さんの証言をもとに侍ジャパンにも選出された中日ドラゴンズ・平田良介選手について語っていく。
平田良介選手とは
大阪桐蔭高校出身。
甲子園ではあのPL学園清原和博氏以来となる1試合3本塁打を放った。
甲子園通算5本塁打は史上4位。
高校通算70本塁打を放ち高校生屈指のスラッガーとして注目を浴びる存在となった。
同級生には後に巨人に入る辻内投手、二つ下には日本ハム中田翔選手がいた。
2005年高校生ドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受けてプロ入り。
当時の監督である落合博満氏からは「この年のドラフトで俺が認めたのは平田だけ。そういう選手がいない年だってある。あれだけ振れる選手はそうはいない。鍛えれば俺以上の打者になる」と高く評価された。
プロ一年目の2006年に初の一軍昇格を果たし、代打でプロ初出場を果たす。
2007年はシーズン終盤から試合出場を重ね、クライマックスシリーズ以降はスタメンの座に定着。
物議をかもした山井→岩瀬の完全試合リレーの試合ではダルビッシュ有選手から決勝点となる犠飛を放ち、チームの日本一に貢献した。
2008年~2010年にかけては期待に応えることができず二軍生活が長く続いてしまった。
2010年のオフには背番号を8から40に変更され、厳しい立場となった。
2011年はきっかけをつかむ年となった。
6月に史上8人目(チーム史上初)となる2試合連続サヨナラ本塁打放ち、その後の活躍も評価され、自身初の月間MVPに輝く。
最終的には113試合に出場し、打率.255、11本塁打、38打点の成績を残す。
守備でもリーグ3位の8捕殺を記録し、チームのリーグ優勝に貢献した。
飛躍を期待された2012年は初の開幕スタメンを果たす。
しかし、シーズン序盤のぎっくり腰の影響から思うようなプレーができず、最終的には本塁打は前年と同じく11本だったものの、安定感を欠き打率.216と低迷し、出場試合数も91試合に減った。
2013年は開幕33打席で1本もヒットを打てずに登録抹消される苦しいスタートとなった。
しかし、最終的には復調し、右翼のレギュラーに定着。
規定打席には及ばなかったが、これまででいずれも自己最高の打率.289・15本塁打・55打点を記録した。
オフには井端弘和選手の退団により空き番となった6番をつけることになった。
2014年はプロ9年目にして初めて規定打席に到達した。
2015年は自己最多の130試合出場、OPS.799、盗塁11などで自身最高の成績を残した。その活躍が評価され、自身初となるベストナインを獲得。
シーズンオフには2016年シーズンの主将となることが発表された。
2016年はチーム・個人ともに成績が低迷。
9月14日に右肩痛で一軍登録を抹消されてい以降は一軍に戻ってくることはなかった。シーズンオフの移籍もささやかれたが、残留を決意。
実は守備の人?平田良介選手の本当の姿とは
高校生時代の本塁打の活躍からスラッガーとしての印象を持たれがちだが、様々な能力をハイレベルで持ち合わせた選手でもある。
守備へのこだわり
実は守備にも優れた選手である。
実際、前監督の落合博満氏は「ドラゴンズの外野守備でいちばんうまい」と賛辞を送っている。
本人も「自分は守備の人、守備から流れをつかむタイプ」であると語るほど守備への思い入れがある選手である。
大阪桐蔭高校の一つ下の後輩にあたる元キャプテン小山貴弘氏さんも、平田先輩の守備・走塁への意識の高さに感心していたそうだ。
平田さんは、とにかく走塁や守備に対する意識が高い方でした。次の塁を貪欲に狙う姿勢は、僕が大阪桐蔭で見た中では誰よりも優れていました。一度ホームスチールを決められたことがあるんですが、そのプレーは今でも印象に残っています」
引用:元キャプテンが明かす、大阪桐蔭カラー なぜ大阪桐蔭はNPBにスターを送り込めるのか | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)
実際プロ通算で犯した失策はわずか7。
守備率も.995と高い水準を誇っている。
2014年にはリーグ最多捕殺となる9を記録している。
守備の安定感だけでなく、肩の強さも彼の長所のひとつである。
打順適正は一番打者!?
プロ入り後は高校生時代ほどスラッガーとしては活躍できずにいる。
6年連続で2桁本塁打を放っているものの、最多本塁打は15。最高OPSも.799と期待された通りの結果は残せていない。
実は過去に高校時代の彼を知る、大阪桐蔭高校の西谷浩一監督のインタビューに興味深いことが書かれていた。
それは西谷監督いわく、平田良介選手の適正はホームランバッターではないとのこと。
「平田は3年夏の甲子園で、1試合で3本もホームラン打ったもんだからホームランバッターみたいに言われますけど、本来は足と肩の選手。1番タイプなんです。意外なところでセーフティーバントを決めるような。高校時代は、盗塁の数も西岡より多かったですから。本来、平田が生きる場所はそこだと思うんですけどね……」
引用:大阪桐蔭・西谷監督の炯眼恐るべし。中田翔と浅村栄斗、覚醒の理由。(3/3) - プロ野球 - Number Web - ナンバー
甲子園での活躍や高校通算本塁打の印象でスラッガーの役割を期待されるが、本来は1番打者のタイプ。
平田良介選手は俊足の選手としても知られ、2015年には盗塁11を記録している。
2016年は打率.248だったものの、出塁率.358とIsoD.110を記録するなど高い選球眼を持っている。
実際平田良介選手は2016年オフのテレビ出演時には出塁への意識を口にしているほどだ。
二桁本塁打・盗塁が出来て、高い出塁率とOPS.8割台、加えて安定した守備誇る『1番打者』
実はこれが平田選手の完成形なのかもしれない。
最大の魅力はここぞで発揮される勝負強さ
大阪桐蔭の西谷監督は平田選手の魅力は試合でこそ発揮される勝負強さだと語っている。
「練習ではほとんど存在感がないんですよ。普通のバッターと変わらない。当時のうちには平田と同じ学年で、彼よりいい選手がいました。でも、平田が試合に出ると活躍するんです。練習でどうっていうより、バッターボックスの中に入ったら、体中にあるものを全て出せる、そういう選手。実は中学生の頃から彼のその部分に注目していました」
理詰めの野球論というより本能で野球をしていくタイプといったほうがいいかもしれない。そもそも、高校入学後に、平田を使い始めたのも、ど派手な活躍からだったと西谷監督は言う。
「平田が1年生の時に、夏を前にした練習試合でセンターを守る選手がケガをして、先のこともあると思って、平田を使ったんです。そしたら、いきなりホームラン。でもまぁ、その時は、よく打ちよったなくらいにしか思わななかった。そして2日目、もう一回、平田を出してみようか……で、またホームラン。練習と試合で全然違うんです」
引用:平田、高校時代から変わらぬ勝負強さ。突出した数字なくも『何かをやってくれる男』が中日をけん引 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)
プロ入り後も日本一を決める試合で放った決勝犠牲フライ、2試合連続サヨナラ本塁打などここぞという場面で勝負強さを発揮してきた平田選手。
西谷監督は高校時代から平田選手にフォームを指摘したことはないそうだ。
平田選手は高校時代をこう振り返りました。
「あまり細かいことは言われませんでした。とにかくフルスイングできるフォーム、自分が思い切り気持ちよく振れるかどうか、それだけを気にしろと言われて好きにやらせてもらっていました」引用:代表を席巻するフルスイングの男たち。鋳型にはめない大阪桐蔭流に注【二宮清純コラム プロ野球ガゼット】 | J:COMプロ野球中継 | MY J:COM
平田選手の普段のインタビューの受け答えを見ているとやや天然な一面が見受けられる。
平田選手のようなタイプにはああしろ、こうしろと型にはめて考えること自体が間違っているのかもしれない。
ホームランバッター、1番打者、出塁率。
そんな既成の枠にはめず、平田選手が思ったことをのびのびやらせる環境作りこそが一番輝かせられる起用の仕方なのだ。
熱い闘志とキャプテンシー 中日愛を貫いて残留へ
2016年からドラゴンズのキャプテンに就任した平田選手。
チームを引っ張りたい熱い想いでチームの先頭に立とうしたが、チーム・自身の成績両方で思うような結果が出なかった。
2016年のシーズン中にはファンからの野次に熱くなりエキサイトしてしまう場面もあった。
しかし、これはチームメイト・ビシエド選手に対する心ない野次に対してのものだった。
結果的にファンとエキサイトしたことはいただけないかもしれないが、チームを想う気持ちが生んだ結果だった。
「チームが連敗してて、この日も最後のバッターはビシエドだったんですけど、試合終わってから、あの人(客席にいたファン)がビシエドに向かって中指を立てていた」と明かす。
さらに「最初はビシエドが怒っていてなだめたんですよ。もういいからって。でも(そのファンが)まだずっと言ってるからブチっとキレました」という平田。チームメイトが侮辱されたことに対する怒りであると説明
オフにはFA権行使に注目が集まったが、権利行使を見送って残留。
平田は11年間を過ごした名古屋にも愛着を感じている。「絶対に名古屋を盛り上げたい」。結果で恩返しする。
自分を育ててくれた球団、ファン、名古屋への愛を貫いた。
侍ジャパンで求められる役割
今回の侍ジャパンでは基本的には外野手のバックアップとしての役割が期待される。
【侍ジャパンの外野構想】
左翼:筒香(青木)、中堅:青木(秋山)、右翼:秋山or鈴木(平田)
対左投手用の右打者:内川
※侍ジャパンの外野手事情は過去記事も参照。
平田選手が2016年シーズン対左投手打率.197だったことを考えても対左投手時の先発はあまり考えられない。
よほどのこと(けが人続出、平田選手絶好調)がない限りベンチスタートとなることが予想される。
ただ、平田選手は走攻守を高いレベルで兼ね備えているので、バックアッパーとしては非常に心強い存在。
平田選手が控えていることで積極的に采配をふるえる局面も出てくるだろう。
追記
平田選手は2017年WBCで2試合に出場し、4打席、3打数、1四球。
一次ラウンド第三戦の中国戦では7番ライトで先発出場しましたが、安打を放つことは出来なかった。
まとめ
豪快な高校時代の活躍と明るいキャラクターとは違って、選手としては非常に渋い働きができる選手。
こういう選手がいるチームは非常にしぶといチームとなる。
WBCでの出場機会はそう多くはないかもしれないが、出場した時は持ち味を存分に発揮して頂きたい。
それでは、さようなら!
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