死ぬまで生きる問題

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野球の盗塁阻止率で捕手が評価される違和感と求められる必要な阻止率

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どうも、はろーぐっばい(@jubenonz)です。

 

良い捕手の条件の一つとして、盗塁阻止率の高さがあげられます。

しかし、はたして本当に盗塁阻止率は捕手を評価する上で重要な指標なのでしょうか。

 

私の持論としては、評価する要素の一つだが、評価の度合いは大きくないということです。

捕手単体の記録であるポップタイム(捕手が捕球してから二塁に送球するまでの時間)で評価するならまだしも、投手も影響する盗塁阻止率で捕手を評価するのは、評価項目として微妙な印象があります。

 

これから盗塁阻止率で捕手を評価することの疑問と、求められる阻止率について考察します。

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盗塁成功の行方を左右する四つのタイム

盗塁が成功するかどうかは、下記の四つのタイムによって決まります。

  1. 一塁ランナーが二塁に到達するタイム
  2. 投手がボールを投げてから捕手が捕球するまでのタイム
  3. 捕手がボールを受けてから二塁に送球するまでのタイム
  4. 二塁でボールを受けてから走者にタッチするまでのタイム

 

一塁ランナーが到達するタイムで有名なのは、かつてセ・リーグで5年連続盗塁王に輝いた赤星憲広選手(元阪神)の3.2秒。

理論上はもっと速い時間で二塁へ到達する選手もいますが、現実的にプロの俊足ランナーの目安としては3.2秒前後があげられます。

塁間27・4メートルでリードを2・4メートルとした場合、実際に走る距離は25メートルしかありません。単純に計算しても、50メートルを6秒で走る俊足ランナーは3秒で二塁へ到達します。

引用:捕手から二塁への送球は何秒くらい?:コラム 江藤省三の白球教室:中日スポーツ(CHUNICHI Web)

 

つまり守る側は上記の2~4のタイムを3.2秒以内にすることを求められるのです。

「投手がボールを投げてから捕手が捕球するまでのタイム」の平均は1.3秒。

「捕手がボールを受けてから二塁に送球するまでのタイム」の平均は2.0秒。

「二塁でボールを受けてから走者にタッチするまでのタイム」の平均は0.2~3秒。

合計するとちょうど3.4秒。

 

平均的なタイムのバッテリーVS俊足ランナーの場合、普通に考えると俊足ランナーが有利になります。

ただ、肝心なのは走者がスタートを切るタイミング。

極端に言えば捕手が捕球してからランナーがスタートを切れば、ウサイン・ボルトレベルの脚力があっても確実にアウトになります。

 

ですので、投手はいかにランナーのスタートを遅らせるか、逆にランナーはいかに投手が投げる前にスタートを切るかが鍵を握るのです。

 

ただ、どのタイミングでスタートを切るのかは、自分ではコントロールしづらい部分ではあります。

どんなに投げるタイミングを変えても、好スタートを切るランナーはいるからです。

そうなると、バッテリーに求められるのは、投球と送球動作を速くしてタイムを縮めること。

 

投手の場合は上手い人だとクイックタイムが1.1~1.2秒を切る選手もいます。

捕手の場合だと、強肩捕手で知られた古田捕手クラスになると1.8秒台を記録。

プロ野球史上盗塁阻止率6割超えが生まれたのは3回。

【プロ野球の盗塁阻止率記録】

福島知春(1978):.633(30-19)
古田敦也(1993):.644(45-29)
古田敦也(2000):.630(73-46)

引用:【勉強も野球の成績も凄い男】平成最強捕手・古田敦也伝説27

 

2018年の球界トップレベルの肩を誇る、「甲斐キャノン」でお馴染みのソフトバンクホークス・甲斐選手のポップタイムは平均的なタイムよりも0.2秒以上短い1.74を記録しています。

 

あとは捕手が正確に二塁にさえ投げられれば、投手初動~二塁タッチまでのタイムは3秒前後まで短縮することが可能。

そこまでの領域になれるバッテリーはほとんどおらず、現実的には3.4秒以内にまで収めると、盗塁阻止率は飛躍的に上昇するというデータがあります。

f:id:jubenonz:20180608164353p:plain

転載:1.02 Essence of Baseball

 

こうしてみると、3.7秒が盗塁阻止率における大きな分岐点になるようです。

捕手も握り直したり、若干送球が逸れてタッチする時間にラグができます。

ランナーも投手のモーションを上手く盗めなかったり、上手く加速しないなどがあり、一塁到達が理論通りのタイムにならないことがあるのでしょう。

 

メジャーリーグでは、3.3秒以内に走ればセーフとのデータもあるようで、バッテリーとしては3.4秒以内に収めて刺せないなら相手ランナーを褒めるしかないのです。

メジャーでは、投手のリリースタイムが平均1・3秒、捕手の送球タイムが平均2・0秒で、3・3秒以内に走ればセーフというデータがあります。さらに送球によってはタッチプレーの時間もプラスしなければなりません。

引用:捕手から二塁への送球は何秒くらい?:コラム 江藤省三の白球教室:中日スポーツ(CHUNICHI Web)

捕手個人の評価に他者の影響がのっかる違和感

このように”盗塁”というプレーが成功するかどうかを分解してみると、捕手だけに責任があるわけではありません。

投手が投げ始めるタイムや、クイックモーションによっては、捕手が投げる前に勝負が決まってしまっているケースもあるからです。

※もちろん捕手に責任がないわけではない。

 

名捕手であり、名解説者の里崎智也氏が「6割方、ピッチャーの責任」と主張するのも納得。

経験者の立場から言わせてもらえば、相手が走るか否かに、キャッチャーの「阻止率の高さ」は関係ない。さらに言えば、そこで盗塁を阻止できるか否かの責任の比重は、6割方、ピッチャーにあるとさえ言ってもいいだろう。

引用:「盗塁阻止率」の高低でキャッチャーのよし悪しは語れない【里崎智也の里ズバッ! #05】 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)

 

そんなことを考えて調べてみたところ、盗塁阻止におけるそれぞれのプレイの相関度合いを分析したものがありました。

まず捕手の捕球から送球の完了までの時間(pop time)と盗塁阻止率との相関係数は0.01であり、むしろほとんど関係がないという分析結果です。他方、投手が投球の動作に入ってから投球が捕手のミットにおさまるまでの時間と盗塁阻止率との相関係数は-0.88です。すなわち、投手が消費する時間が短いほど盗塁を阻止できる割合が上がるという強い負の相関関係があることがわかります。

引用:Baseball Concrete Blog 盗塁阻止における捕手の肩の重要度

 

 筆者の方も完璧な分析ではないとしていますが、どうも捕手の送球よりも、投手がいかにクイック出来るかどうかが、盗塁においては重要なのです。

 

21世紀に入ってからは、盗塁阻止に重要なのは投手のモーションという考えが広まっており、どちらにせよ捕手だけの責任ではないことは明白。

盗塁阻止には投手の影響のほうが大きいといったことの言及自体はJohn Dewan『The Fielding Bible Volume II』(ACTA Publications、2009)にもありますし実際の評価手法にも既に反映されていますから、発見自体が斬新であるというわけではありません。それでも一般的に興味を持った範囲でできる検証でわかりやすい形にまとめているという点でいい研究記事だと感じます。

引用:Baseball Concrete Blog 盗塁阻止における捕手の肩の重要度

 

イチローは1番向きじゃない? セイバーメトリクスの基本指標一覧と見方まとめ」の記事でも書きましたが、セイバーメトリクス(というよりは評価する際の本来の前提)の面白さは野球選手を”個人プレイ”を評価すること。

www.shinumade.com

 

打点や勝利、防御率など、本人以外の様々な要素が絡む指標を欠陥とし、選手個人の力量で評価することで、選手本来の成績を正しく評価するようにしたのです。

その観点から言うと、捕手だけの責任ではない”盗塁阻止”というプレーを捕手を評価において利用するのは、あまり良いことではありません。

 

極端にポップタイムが悪い、送球が逸れるなら問題ですが、一定水準のポップタイムを計測して、送球に問題がないなら、盗塁阻止というプレイにおいて合格点をあげてよいでしょう。

盗塁自体の価値の低さと配球を変えてまで刺しにいく違和感

「いや、盗塁阻止には盗塁を読んでウエストしたり、配球をストレート中心にすれば阻止率を上げられる」と主張する人もいるでしょう。

しかし、個人的にはそこまで躍起になって刺しにいく必要があるのかと言われると、微妙な気がします。

 

そもそも球の速さが盗塁阻止に与える影響は微々たるもの。

重要なのは投球動作をはじめてからリリースするまでの時間(元論文でいうmove time)だというはっきりした傾向が出ています。盗塁阻止率との相関は-0.90。球の速さと盗塁阻止率の相関は-0.04。

引用:Baseball Concrete Blog 盗塁阻止における捕手の肩の重要度

 

よっぽどの山なりの超スローボールで球速80キロ以下ならまだしも、プロが投げる変化球であればさほど大きな違いはありません。

強いていうなら、ワンバウンドになる落ちるボールを投げてしまい、そもそも二塁に投げられない状況を作らないことでしょうか。

 

ただ、私は盗塁阻止を意識し過ぎて配球の優先順位が打者勝負<盗塁阻止になるのは間違っていると思います。

【年間4得点しか変化なし!?】得点期待値からみる野球の盗塁のメリット・デメリット」の記事でも話したのですが、盗塁自体が得点期待値に与える度合いは低いです。

www.shinumade.com

 

ヒットを打たれることに比べれば、盗塁を許す行為の傷口は浅いもの。

盗塁を意識するあまりにカウントが不利になり、安打を許したり四球を与えては元も子もありません。

そもそも盗塁自体が一般的なランナーなら成功率7割、俊足ランナーになると8~9割成功してしまうプレイ。

 

もとより阻止できる確率が低いプレイのために、カウントを悪くするのは過剰に意識し過ぎといえるでしょう。

もちろん刺せる確率を高めることは悪いことではないですし、みすみす盗塁されてはいけません。

 

ただ、盗塁阻止のためだけに捕手を起用したり、評価したりするのは逆に勝利を遠ざける采配になりかねないでしょう。

 

実際盗塁阻止によって年間防げる得点は、あの古田選手でも年間5得点。

肩が衰えた後の数値も含んでいるのですが、通算盗塁阻止率.462の古田選手ですらそのレベル。

通算で阻止した点数の歴代トップ5はこんな感じ。

古田 敦也 75.4
谷繁 元信 49.7
大矢 明彦 42.5
梨田 昌孝 38.9
城島 健司 36.9

 

想像に難くないことですが古田の圧倒的スコア。現役生活を通じて、盗塁を刺すことで平均に比べて75.4点も貢献してきたということです。
それでも1シーズンあたりにすると5点くらいで、得点数という意味では捕手の肩が莫大な影響を持つってことは意外とないんですが。
ただし単年の歴代ベストスコアは2000年古田の13.2。これを昨シーズンのRCAA換算で考えれば、平均的な打者を山崎武司に置き換えるぐらいの威力があったことを意味します。

引用:Baseball Concrete Blog 歴代捕手の盗塁阻止を得点化

 

もちろん古田さんの全盛期のように捕手1人の盗塁阻止で、13得点も奪えれば驚異ですが、そんな捕手は稀有。

 

その古田捕手でさえ、捕手単体の努力で盗塁を刺していたのではなく、監督を含めたチーム方針と投手陣の協力があって成し遂げられた数字。

93年にヤクルトが日本一に輝いた。当時、正捕手古田氏の盗塁阻止率は驚異の6割4分4厘。日本記録だ。古田氏の実力はもちろんだが、石井一氏、高津氏ら当時の主力投手もクイックは軒並み1.1秒台だったという話を聞いたことがある。野村監督のもと、投手、捕手ともに徹底して二盗撲滅の共同作業へ取り組んだ様子がうかがえる。

引用:二塁盗塁されるのは誰のせい?/里崎評論 - 野球 : 日刊スポーツ

 

そもそも盗塁阻止で防げる点数を考えると、よほどの鈍足ランナーにさえ走られなければ、盗塁阻止の観点からは及第点と言えるでしょう。

捕手に求められる盗塁阻止率と盗塁企図数

求められる盗塁阻止率は人それぞれでしょうが、一般的には4割を超えると強肩捕手、2割を下回ると弱肩の捕手と言われています。

※実際は肩の強弱だけで盗塁成功・失敗が変わるわけではありませんが。

 

盗塁」の記事でも書きましたが、盗塁を仕掛ける側の損益分岐点は盗塁成功率72%前後(アウトカウントやランナーの状況によって異なる)。

つまり、守備側としては盗塁成功率を7割以下に出来れば、プラスに転じられるわけです。

なので、捕手(というかチーム)に求められる盗塁阻止率は3割以上が一つの目安になります。

 

そして盗塁阻止率について語る時に、セットで考えられるのが盗塁企図数。

ようは「どれだけ仕掛けられたのか=盗塁できると思われたのか」の数値です。

下記は2017年の両リーグの盗塁阻止率と企図数の割合。

セ・リーグ
小林誠司(読売) 137試合 企図数50 阻止率.380
梅野隆太郎(阪神) 112試合 企図数66 阻止率.379
戸柱恭孝(横浜) 110試合 企図数51 阻止率.353
中村悠平(ヤクルト) 126試合 企図数83 阻止率.337
會澤翼(広島) 106試合 企図数57 阻止率.263
石原慶幸(広島) 76試合 企図数25 阻止率.240
松井雅人(中日) 84試合 企図数41 阻止率.220

 

パ・リーグ
田村龍弘(ロッテ) 130試合 企図数83 阻止率.337
炭谷銀仁郞(西武) 104試合 企図数49 阻止率.327
甲斐拓也(ソフトバンク) 102試合 企図数34 阻止率.324
伊藤光(オリックス) 93試合 企図数31 阻止率.323
嶋基宏(楽天) 112試合 企図数90 阻止率.289
若月健矢(オリックス) 99試合 企図数51 阻止率.255
髙谷裕亮(ソフトバンク) 92試合 企図数62 阻止率.194
大野奨太(日本ハム) 80試合 企図数41 阻止率.098

引用:2017年 盗塁阻止率 - 野球のデータって見ていて飽きないですね

 

傾向としては、盗塁阻止率の低い捕手ほど、盗塁企図数が増加しています。

刺される確率が低いのなら、走るのは相手としては当然の策。

 

里崎智也氏は、盗塁阻止率と同時に被盗塁企図数の少なさも一つ重要だと発言。

そもそも、“企図され数”が「50」で、「阻止率」が3割のチームと、「阻止率」は4割でも、され数が「100」あるチームの、どちらがより「相手からナメられているか」と言えば、圧倒的に後者のほうなのだ。このコラムを読んでくれたみなさんには、「阻止率」と同時に、“企図され数”にもぜひ注目してもらいたいところだ。

引用:「盗塁阻止率」の高低でキャッチャーのよし悪しは語れない【里崎智也の里ズバッ! #05】 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel) - Part 2

 

データだけで見れば、盗塁は7割以上成功するもの。

ただ、キャッチャーの肩を警戒するがあまり、盗塁を仕掛けなければしめたもの。

当然のことですが、盗塁を企図されなければ盗塁は成功しません。

 

もし盗塁抑止力を高められれば、バッテリーはより打者との勝負に集中できるため、結果的に失点を少なくできる可能性が高まります。

クイックが“達人”の域までくると盗塁企画数がガクンと減る。二盗撲滅へ、究極を言えば、盗塁を企画されないこと、まさにこれだ。相手のベンチは、今日の先発投手はセットポジションで何秒かかっているか計測している。二盗がいけそうだと思わせない「抑止力」が効けば、捕手の肩の強弱が話に上がることもない。走者に気を取られず打者主体のリードもできる。走者を気にすれば自然とストレート系主体の配球となり、カーブなど緩い変化球が敬遠されがちだ。が、盗塁を企画されなければ全球種を交えた配球となるため痛打される確率も下がる。

引用:二塁盗塁されるのは誰のせい?/里崎評論 - 野球 : 日刊スポーツ

 

盗塁戦術の目的は進塁だけにありません。

相手バッテリーの集中力を削いだり、配球を変えたりなど、心理的な面のプレッシャーを与えることでもあります。

もし相手が盗塁という戦術を一つ捨ててくれるなら、バッテリーとしてはこれ以上楽なことはありません。

 

そういった意味でも、”一定”の盗塁阻止率を維持することは、チームとしては大きな意味を持ちます。

ですので、盗塁阻止率3割を一つの目安として、”チームとバッテリー”を評価するのが良いでしょう。

まとめ

  • 盗塁阻止は投手と捕手の両方に責任がある
  • 研究によっては、投手の方が投手阻止の鍵を握っている
  • 捕手を評価するときは盗塁阻止率ではなく、ポップタイムで見る
  • チームとして盗塁阻止率3割以上あれば合格点
  • 相手が盗塁企図すらしないレベルになると理想的 

 

盗塁阻止をすると、守る側の士気は高まり、攻撃にも良い影響がでると言われています。

ただ、忘れていけないのは盗塁阻止は捕手だけの手柄ではなく、盗塁成功は捕手だけの責任ではないということ。

 

そもそもの盗塁の価値、過剰に意識するデメリットなど、様々な観点から捕手評価・起用を検討して欲しいものです。

 

それでは、さようなら!

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