私は年間に300冊ちかく本を読みます。
特に学生の頃は小説ばかり読んでいて、友達から「本の世界から出てこない男」と言われることもありました。
今回はそんな私が、おすすめの小説をランキング形式にて100作品紹介します。
正直100に絞るのも難しかったくらい人気の名作を厳選しました。
ランキングを紹介する前にルールを説明しておきます。
【ランキング選定ルール】
- 完全な個人の主観でランキングする
- 年代は問わない
- 小説、洋書、ライトノベル、サウンドノベルなど形態は問わない
- SF、ヒューマンドラマ、随筆、ミステリー、サスペンス、恋愛、ドキュメンタリー、ビジネス、自己啓発などジャンルは問わない
- 同じ作家からは2作品以内しか選ばない
- シリーズ作品は1作品とカウント
同じ作家から選べる作品を限定しないとこのランキングが「遠藤周作」「司馬遼太郎」「谷崎潤一郎」らで埋め尽くされてしまうので、2作品以内としました。
完全に個人の主観なので、作品の外部評価などは一切考慮に入れておりません。
28歳時点の備忘録としての意味を込めてこのランキングを作成しました。
かなり長いページなので、面倒な方は先に目次に目を通されて面白そうだと思ったら本文も読み進めてください。
時間がない方は10位からでも読んで頂けると幸いです。
目次
- 100位 グレート・ギャツビー/スコット フィッツジェラルド
- 99位 スクラップ・アンド・ビルド/羽田圭介
- 98位 車輪の下/ヘルマン・ヘッセ
- 97位 二十四の瞳/壷井 栄
- 96位 ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン
- 95位 蒲田行進曲/つかこうへい
- 94位 犬神家の一族/横溝正史
- 93位 そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティ
- 92位 舟を編む/三浦しをん
- 91位 冷静と情熱のあいだ/辻仁成
- 90位 花芯/瀬戸内 寂聴
- 89位 ヘヴン/川上未映子
- 88位 宣告/加賀乙彦
- 87位 明日の記憶/荻原浩
- 86位 ドグラ・マグラ/夢野久作
- 85位 放浪記/林芙美子
- 84位 ボッコちゃん/星 新一
- 83位 あ・うん/向田 邦子
- 82位 リリイ・シュシュのすべて/岩井 俊二
- 81位 悲しみよこんにちは/サガン
- 80位 赤と黒/スタンダール
- 79位 夢を叶えるゾウ/水野敬也
- 78位 小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団/瀬名秀明、 藤子・F・不二雄
- 77位 さよならドビュッシー/中山 七里
- 76位 失楽園/渡辺淳一
- 75位 櫂/宮尾 登美子
- 74位 悪の教典/貴史祐介
- 73位 ムーミン谷の彗星/トーベ・ヤンソン
- 72位 時をかける少女/筒井 康隆
- 71位 剣客商売/池波 正太郎
- 70位 アンのゆりかご―村岡花子の生涯/村岡 恵理
- 69位 GO/金城 一紀
- 68位 華岡青洲の妻/有吉 佐和子
- 67位 火車/宮部みゆき
- 66位 一瞬の光/白石 一文
- 65位 点と線/松本清張
- 64位 肩ごしの恋人/唯川恵
- 63位 西の魔女が死んだ/梨木 香歩
- 62位 4TEEN/石田衣良
- 61位 龍時/野沢 尚
- 60位 永遠の0/百田尚樹
- 59位 ぼくのメジャースプーン/辻村深月
- 58位 火宅の人/檀 一雄
- 57位 解夏/さだまさし
- 56位 きらきらひかる/江國香織
- 55位 密やかな結晶/小川 洋子
- 54位 69 sixty nine/村上 龍
- 53位 告白/湊 かなえ
- 52位 森に眠る魚/角田光代
- 51位 夜のピクニック/恩田 陸
- 50位 向日葵の咲かない夏/道尾秀介
- 49位 雪国/川端 康成
- 48位 パラレルワールドラブストーリー/東野圭吾
- 47位 異邦人/アルベール・カミュ
- 46位 桐島、部活やめるってよ/朝井 リョウ
- 45位 ソロモンの偽証/宮部みゆき
- 44位 ふがいない僕は空を見た/窪 美澄
- 43位 じゃじゃ馬ならし/シェイクスピア
- 42位 幸福な食卓/瀬尾まいこ
- 41位 きよしこ/重松清
- 40位 空白の叫び/貫井 徳郎
- 39位 スローカーブを、もう一球/山際 淳司
- 38位 坊っちゃん/夏目漱石
- 37位 夏と花火と私の死体/乙一
- 36位 蟹工船/小林 多喜二
- 35位 さまよう刃/東野圭吾
- 34位 不毛地帯/山崎 豊子
- 33位 檸檬/梶井基次郎
- 32位 イン・ザ・プール/奥田英朗
- 31位 横道世之介/吉田修一
- 30位 砂漠/伊坂幸太郎
- 29位 ノルウェイの森/村上 春樹
- 28位 花神/司馬遼太郎
- 27位 アメリカひじき・火垂るの墓/野坂 昭如
- 26位 大地の子/山崎 豊子
- 25位 小説 上杉鷹山/童門冬二
- 24位 われはロボット/アイザック・アシモフ
- 23位 わたしを離さないで/カズオ・イシグロ
- 22位 老人と海/ヘミングウェイ
- 21位 山椒魚/井伏 鱒二
- 20位 砂の器/松本清張
- 19位 屋根裏の散歩者/江戸川乱歩
- 18位 金閣寺/三島由紀夫
- 17位 海と毒薬/遠藤周作
- 16位 ジキルとハイド/ロバート・L. スティーヴンソン
- 15位 友情/武者小路 実篤
- 14位 カラフル/森絵都
- 13位 朗読者/ベルンハルト シュリンク
- 12位 儚い羊たちの祝宴/米澤穂信
- 11位 エイジ/重松清
- 10位 五辧の椿/山本周五郎
- 9位 変身/フランツ・カフカ
- 8位 死神の精度/伊坂幸太郎
- 7位 走れメロス/太宰治
- 6位 アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス
- 5位 竜馬がいく/司馬遼太郎
- 4位 春琴抄/谷崎潤一郎
- 3位 さぶ/山本周五郎
- 2位 沈黙/遠藤周作
- 1位 痴人の愛/谷崎潤一郎
- まとめ
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100位 グレート・ギャツビー/スコット フィッツジェラルド
豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビーの胸の中には、一途に愛情を捧げ、そして失った恋人デイズィを取りもどそうとする異常な執念が育まれていた……。第一次大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描いて、滅びゆくものの美しさと、青春の光と影がただよう憂愁の世界をはなやかに謳いあげる。
「英語で書かれた20世紀最高の小説」では、第2位にランクインしている世界的な名作。
これまで5度回も映画化されたほどアメリカ人にとっては特別な作品。
その背景にはアメリカが最も豊かで恵まれていた時代を描いた物語だからです。
アメリカについて知る上で欠かせない作品です。
99位 スクラップ・アンド・ビルド/羽田圭介
「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、
ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動。
肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。
閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!
”又吉じゃない方”の第153回芥川賞受賞作。
死を願う老人と強い生を求めて必死に生きる若者。
対照的な二人の生き方を通して生きるとは何かを学べます。
ラストの衝撃的で唐突な展開は人生の教訓を表しているのかもしれません。
98位 車輪の下/ヘルマン・ヘッセ
ハンスという少年は、天才的な才能を持ち、エリート養成学校である神学校に2位の成績で合格する。町中の人々から将来を嘱望されるものの、神学校の仲間と触れ合ううちに、勉学一筋に生きてきた自らの生き方に疑問を感じる。そして、周囲の期待に応えるために、自らの欲望を押し殺し、その果てに、ハンスの細い心身は疲弊していく。勉強に対するやる気を失い、ついに神学校を退学する。
愚直なまでに生真面目に生きようとした少年に待っていた人生の無常さ。
自分が本気になればなるほど、周りとの温度差が生まれついには自分自身を見失ってしまう。
そんな人生の息苦しさと無常さを教えてくれる作品です。
97位 二十四の瞳/壷井 栄
1928年(昭和3年)、普通選挙が実施される一方で治安維持法の罰則が厳しくなった年に、「女学校の師範科」を卒業したばかりの正教員の大石久子(おなご先生)は、島の岬の分教場に赴任する。そこに入学した一年生12人(男子5人、女子7人)の児童の、それぞれの個性にかがやく二十四の瞳を前に、この瞳をどうしてにごしてよいものかと感慨を持つ。
戦争が子供たちにもたらした貧しさ、苦しみ、悲しみを生々しく表現した作品。
そんな子供たちに大人は何をしてあげられるのか。
先生と生徒という関係を越えた大人と子どもの人間味溢れる関係には胸を打たれます。
96位 ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン
ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわっていた。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く……。
ウィトルウィウス的人体図、モナ・リザ、岩窟の聖母マリア、最後の晩餐...
中二病心をくすぐるようなワードが次々に出てくる推理小説。
個人的には「フィボナッチ数列」に一番心を踊らされました。
95位 蒲田行進曲/つかこうへい
東映京都撮影所は、5年に1度の大作「新撰組」の撮影に沸いていた。何といってもそのウリは、撮影所自慢の高さ数十メートルの樫の木の大階段で撮影するダイナミックなクライマックスである。池田屋に討ち入った新撰組隊士が、スタントを担当する“大部屋”役者を大階段の上から斬りおとし、壮絶に落下して行くその様を大迫力で映し出して映画を締めくくる、いわゆる『階段落ち』である。
もちろん、落とされた役者はただではすまない。軽くて半身不随、重ければ死亡という多大なリスクが付きまとう。しかし、撮影所の大部屋にすし詰めにされて日々を過ごす大部屋役者達が、それと引き換えに1日だけスターになれるのが、この映画だった。
倉岡銀四郎、水原小夏、ヤスの三人の奇妙な関係が魅力の作品。
移ろいゆく三人の恋愛関係を精緻な文章で描いています。
映画版が好きな人でも楽しめる小説です。
94位 犬神家の一族/横溝正史
信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような条件を課した遺言状を残して他界した。血の系譜をめぐるスリルとサスペンスにみちた長編推理。
「金田一耕助シリーズ」の一つ。
これまでに3度映画化され、「日本映画の金字塔」と称される名作映画の原作。
単なるサスペンスとしてではなく、戦後の日本社会の暗部を照らしている作品。
93位 そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティ
誰が犯人かわからない疑心暗鬼の中で、召使・老婦人・元判事・医師が死体となり、人形も減っていく。そして、残された3人のうち2人が死に、最後の1人も犯人がわからないまま精神的に追いつめられて自殺、そして誰もいなくなった。
次々と殺害されていく被疑者たち。
最後の最後で語られるタイトルの意味とは?
世界的にも有名なミステリーの極北と呼ばれる作品。
92位 舟を編む/三浦しをん
出版社・玄武書房では中型国語辞典『大渡海』の刊行計画を進めていた。営業部員の馬締光也は、定年を間近に控えて後継者を探していた辞書編集部のベテラン編集者・荒木に引き抜かれ、辞書編集部に異動することになる。社内で「金食い虫」と呼ばれる辞書編集部であったが、馬締は言葉への強い執着心と持ち前の粘り強さを生かして、辞書編纂者として才能を発揮してゆく。
長い時代の波をさまよってきた”言葉”
その言葉を編集する作業を”舟を編む”と称した三浦しをんさんのセンスにはただただ脱帽です。
言葉の世界に生きる小説家が同じく言葉の世界に生きる辞書編集部の悲喜こもごもを繊細に描いています。
91位 冷静と情熱のあいだ/辻仁成
大学を卒業後、絵画の修復士を志しイタリアのフィレンツェの工房で学んでいた阿形順正(あがたじゅんせい)は、同じフィレンツェに住む芽実(めみ)という日本人の彼女にも慕われ、周りの人々から見たら一見順調な人生を歩んでいるようにみえた。しかし、彼の心の中には常に空虚感があった。香港からの留学生で、日本での学生時代をともに過ごし、深く愛し合いお互いを分かり合えた女性、あおいをいまだ忘れられなかった。
辻仁成と江國香織による小説。
江國のパートは赤い装幀で「Rosso(ロッソ)」、辻のパートは青い装幀で「Blu(ブリュ)」というネーミングが冠され、別々の単行本としてセット発売されました。
男性と女性の目線で描かれた男女のすれ違いが話題を呼んだ作品。
ちなみに冷静と情熱は対義語ではありません。
90位 花芯/瀬戸内 寂聴
「きみという女は、からだじゅうのホックが外れている感じだ」。親の決めた許婚と結婚した園子は、ある日突然、恋を知った。相手は、夫の上司。そして…。発表当時、著者に「子宮作家」のレッテルが貼られ、以後、長く文壇的沈黙を余儀なくされた表題作ほか、瀬戸内晴美時代の幻の傑作五編を収録。
今や天台宗の尼僧として認識している人が多い瀬戸内寂聴さん。
その若い頃に女性の生々しいまでの純粋無垢な表現して、当日賛否両論巻き起こった恋愛小説。
女性の頭の中にもこんなことが渦巻いているのかと学生時代に妙な興奮を覚えたことを今でも覚えています。
89位 ヘヴン/川上未映子
<わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える<僕>は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。
いじめをテーマが持つ残酷さ、加害者側と被害者側で異なる論理を川上未映子さんの力強く言葉でこれでもかと生々しく描いた作品。
読んでいる内に胸が苦しくなるけれども、なぜかページをめくる手がとまらない本です。
88位 宣告/加賀乙彦
独房の中、生と死の極限で苦悩する死刑囚たちの実態を抉りだした、現代の“死の家の記録”。
全員が殺人犯のゼロ番囚たちは拘置所の二階に収容されている。死刑宣告をうけた楠本他家雄は、いつ「お迎え」がくるか怯えている。女を崖から突き落とした砂田の暴力、一家四人を殺した大田の発作、そして他家雄の奇妙な墜落感等、拘置所の医官で若い精神医の近木は丹念に見廻る。生と死の極限で苦悩する死刑確定囚たちの拘禁ノイローゼの実態を抉り出した現代の“死の家の記録”。全三巻。
死の宣告を受けた人間の心理とは?
死刑囚を犯罪者としてではなく、一人の弱い人間として見つめた死と生の物語。
87位 明日の記憶/荻原浩
広告代理店営業部長の佐伯は、齢五十にして若年性アルツハイマーと診断された。仕事では重要な案件を抱え、一人娘は結婚を間近に控えていた。銀婚式をすませた妻との穏やかな思い出さえも、病は残酷に奪い去っていく。けれども彼を取り巻くいくつもの深い愛は、失われゆく記憶を、はるか明日に甦らせるだろう!山本周五郎賞受賞の感動長編、待望の文庫化。
忘れられるから人は強くなれる。
とどっかの某有名マンガのキャラクターがいましたが、望まぬ形で記憶が失われていくことがいかに残酷なことかを描いた作品。
生きながらにして存在が消えてしまう過酷さを乗り越える夫婦の愛の物語。
86位 ドグラ・マグラ/夢野久作
1935年(昭和10年)1月、松柏館書店より書下し作品として刊行され、「幻魔怪奇探偵小説」という惹句が付されていた。
夢野久作は作家デビューした年(1926年)に、精神病者に関する小説『狂人の解放治療』を書き始めた。後に『ドグラ・マグラ』と改題し、10年近くの間、徹底的に推敲を行った。夢野は1935年にこの作品を発表し、翌年に死去している。
その常軌を逸した作風から一代の奇書と評価されており、「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」とも評される。
日本語ってなんだ? 正しい精神とは何か?
読了後に巻き起こる不思議な感覚は当然読んだものにしかわからない。
日本一の奇書とも言われる他に並ぶものがない珍書。
85位 放浪記/林芙美子
極貧の中、作家としての成功と、安らぎを求め続けた林芙美子。彼女が愛した男たちや、生きるためにした仕事…その全てを赤裸々に描いた、魂の日記。
日本の小説家の中でもトップクラスで貧乏と言われた小説家林芙美子の赤裸々な自伝小説。
壮絶な体験の数々はなぜか読書に生きる活力を与えてくれる本です。
生きてるだけで丸儲け。
84位 ボッコちゃん/星 新一
スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
ショートショートの名手・星新一さんによる珠玉の短編SF集。
世にも奇妙な物語が好きな人なら必ず好きになれる作品であり、作者です。
83位 あ・うん/向田 邦子
つましい月給暮らしの水田仙吉と軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長門倉修造との間の友情は、まるで神社の鳥居に並んだ一対の狛犬あ、うんのように親密なものであった。太平洋戦争をひかえた世相を背景に男の熱い友情と親友の妻への密かな思慕が織りなす市井の家族の情景を鮮やかに描いた著者唯一の長篇小説。
女の恐ろしさと男の情けなさを描かせたら日本一の向田邦子さんによる唯一の長編小説。
男の友情を描いているようでいて、弱さを炙り出していると言える作品。
「男は女の上で転がされている。」そんなことを思わされる作品です。
男は度胸、女は愛嬌って言葉は、お互いが持っていないものを指していると私は解釈しています。
82位 リリイ・シュシュのすべて/岩井 俊二
誰の心にも眠る“十四歳のリアル”
カリスマ歌姫・リリイ・シュシュのライブで殺人事件が起きる。サイト上で明らかになった、その真相とは?ネット連載という形で01年に映画化され、話題を呼んだ原作小説。
雄一は、中学一年の夏休み後、仲のよかった同級生から突然イジメの標的にされる。彼は、心の痛みをカリスマ的な存在である歌姫“リリイ・シュシュ”の世界で癒そうとする。そこだけが自分の居場所であるかのように・・・・・・。イジメ、万引き、援助交際・・・・・・閉塞感に押しつぶされそうな日常とそこから逃避してリリイ・シュシュのファンサイトに没頭する非日常の間で生きる十四歳。青春のダークサイドをリアルに描き出し、話題を呼んだ‘01年公開作品のもとになった、ネット連載小説の文庫化。解説・重松清
インターネットや携帯が普及し始めた頃のまだ人々がネットリテラシーが低かった頃の時代の作品。
不意に訪れる残酷ないじめには理由なんていない。
青少年たちの残酷さと脆さ、純粋さを描いた作品。
81位 悲しみよこんにちは/サガン
セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。
引用:悲しみよこんにちは (新潮文庫) | フランソワーズ サガン, Francoise Sagan, 河野 万里子 |本 | 通販 | Amazon
もうすぐ大人だけど大人じゃない18歳の葛藤を繊細に描いた作品。
海外文学でも最高峰の青春小説。
著者サガンの生き様を含めて読むと更に味が出る本でもあります。
80位 赤と黒/スタンダール
製材小屋のせがれとして生れ、父や兄から絶えず虐待され、暗い日々を送るジュリヤン・ソレル。彼は華奢な体つきとデリケートな美貌の持主だが、不屈の強靱な意志を内に秘め、町を支配するブルジョアに対する激しい憎悪の念に燃えていた。僧侶になって出世しようという野心を抱いていたジュリヤンは、たまたま町長レーナル家の家庭教師になり、純真な夫人を誘惑してしまう……。
大人になって失われてしまった内側の情熱が再熱する作品。
おどろおどろしい人間の野心と欲望がストレートに描かれています。
青少年が読むと一つ大人の階段を登れる作品でもあります。
79位 夢を叶えるゾウ/水野敬也
200万部を突破したベストセラー。「成功法則書を読んでも人が成功しないのはなぜか?」この疑問に対する1つの解答を用意したのが本書です。
主人公は「人生を変えよう」と思っているけど、何も変えられない普通のサラリーマン。そこへある日突然、ガネーシャというゾウの姿をした神様が現れ、主人公の家にニートとして住みつき、ゲームをしては寝るだけの怠惰極まりない生活を始めます。
しかしガネーシャは自信満々にこう言います。「今からワシが出す簡単な課題さえこなしていけば、お前は確実に成功する――」。
主人公とガネーシャの漫才のような掛け合いで、「成功するためにはどうしたらいいか?」「そもそも成功とは?」という自己啓発書のメインテーマを説いていきます。
一言で表現するなら、世の中の自己啓発本の有効な使い方を教えてくれる作品です。
この本があればその他の自己啓発本はいらないんですけどね。
78位 小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団/瀬名秀明、 藤子・F・不二雄
のび太が北極で拾った物は、なんと巨大ロボットの部品だった!
鏡面世界でロボットを組み立てたのび太とドラえもん。
しかし、それはビルを一撃で破壊する武器を持つ恐ろしいロボットだった。
のび太たちは、そのロボットの存在を秘密にしようとするが…。引用:小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団 | 瀬名秀明, 藤子・F・不二雄 | 日本の小説・文芸 | 本 | Amazon
大人気のドラえもんの長編シリーズを小説化。
数ある長編作の中でも一番哲学的な「ロボットの心」について描いた作品です。
ラストの結末は切なさとほっこりが同時に訪れます。
77位 さよならドビュッシー/中山 七里
ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な彼女人生は、ある日突然終わりを迎える。祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、ただ一人生き残ったものの、全身火傷の大怪我を負ってしまったのだ。それでも彼女は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する――。
音楽という文字にするのは中々難しいテーマ。
音楽スポ根という表現がぴったりくる作品です。
76位 失楽園/渡辺淳一
凛子と久木はお互いに家庭を持つ身でありながら、真剣に深く愛し合ってゆく。己れの心に従い、育んだ“絶対愛”を純粋に貫こうとする2人。その行きつく先にあるものは……。人間が「楽園」から追放された理由である“性愛=エロス”を徹底的に求め合う男女を描き、人間とは何かを問うた、渡辺文学の最高傑作!
いつの時代も古今東西で密かに楽しまれる大人の情事。
20代の私がこの作品を読むと”まだまだ自分は子どもだな”と思わされます。
75位 櫂/宮尾 登美子
渡世人あがりの剛直義侠の男・岩伍に嫁いだ喜和の、愛憎と忍従と秘めた情念。戦前高知の色街を背景に自らの生家を描く自伝的長編。
著者宮尾登美子さん自身の境遇をもとに書かれた小説。
血(親子の血のつながりなど)が人間の精神に与えるものの大きさをこれでもかと深く描かれています。
74位 悪の教典/貴史祐介
晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。
生意気なようでいて無垢な中学生が人を信じ過ぎることの危険性を描いています。
バトルロワイヤルを好きな人なら好きになれる作品です。
特に上巻は読み応えがあります。
73位 ムーミン谷の彗星/トーベ・ヤンソン
長い尾をひいたおそろしい彗星が地球にむかってくるというので、いつも静かなムーミン谷は大さわぎに。ムーミントロールは仲よしのスニフと遠くの天文台へ出かけ、彗星をしらべてくることに。道中、スナフキンや可憐なスノークのお嬢さんと友だちになるけれども、ぐんぐん彗星は近づいてきて……。
9作の短編からなるムーミンの原作です。
それぞれのキャラクターたちの出会いについても書かれたムーミンファン必見の作品。
72位 時をかける少女/筒井 康隆
放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。このにおいをわたしは知っている―そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。そして目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。
日本におけるタイムトラベルものの元祖と言っていい作品。
細田守監督の映画版も人気となりました。
キーワードは「ラベンダー」です。
71位 剣客商売/池波 正太郎
勝ち残り生き残るたびに、人の恨みを背負わねばならぬ。それが剣客の宿命なのだ剣術ひとすじに生きる白髪頭の粋な小男・秋山小兵衛と浅黒く巌のように逞しい息子・大治郎の名コンビが、剣に命を賭けて、江戸の悪事を叩き斬る田沼意次の権勢はなやかなりし江戸中期を舞台に剣客父子の縦横の活躍を描く、吉川英治文学賞受賞の好評シリーズ第一作。全7編収録。
全く性格も外見も異なる秋山親子が問題を解決していく、基本的には一話簡潔型の作品。
1話ごとにスッキリさせる話の展開と読みやすい文章も相まって、スラスラと読み進められます
老人ながら若い女性にもてる秋山小兵衛は同男として羨ましい!
70位 アンのゆりかご―村岡花子の生涯/村岡 恵理
戦争へと向かう不穏な時勢に、翻訳家・村岡花子は、カナダ人宣教師から友情の証として一冊の本を贈られる。後年『赤毛のアン』のタイトルで世代を超えて愛されることになる名作と花子の運命的な出会いであった。多くの人に明日への希望がわく物語を届けたい―。その想いを胸に、空襲のときは風呂敷に原書と原稿を包んで逃げた。情熱に満ちた生涯を孫娘が描く、心温まる評伝。
偉大な翻訳家になるには様々な人との素晴らし出会いがあったことが暖かく描かれています。
最後に筆者がカナダ旅行行きをキャンセルする理由には翻訳さんならではのこだわりが見えて、感動しました。
69位 GO/金城 一紀
広い世界を見るんだ―。僕は“在日朝鮮人”から“在日韓国人”に国籍を変え、民族学校ではなく都内の男子高に入学した。小さな円から脱け出て、『広い世界』へと飛び込む選択をしたのだ。でも、それはなかなか厳しい選択でもあったのだが。ある日、友人の誕生パーティーで一人の女の子と出会った。彼女はとても可愛かった―。感動の青春恋愛小説、待望の新装完全版登場!第123回直木賞受賞作。
国籍と出自をもとにした人種差別。
その問題がいかに視野が狭く、ちっぽけな考え方から生まれたものなのかをストレートに表現した作品です。
68位 華岡青洲の妻/有吉 佐和子
記録に残るものとして、世界で初めて全身麻酔を用いた手術(乳癌手術)を成功させた江戸時代の外科医・華岡青洲。
青洲が妻と姑(実母)への人体実験を重ねた結果、麻酔手術を実用段階にまで持っていきます。
しかし、この小説で焦点となっているのは青洲の妻と姑(実母)の対立。
女性作家・有吉 佐和子の目線で女の確執をリアルに描いているのがこの作品の最大の魅力です。
67位 火車/宮部みゆき
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
現代社会が今なお抱えるクレジットカード破産問題とミステリーを組み合わせた至高の作品。
謎の女の巧妙な手口と被害者の心理描写は女性作家・宮部みゆきならでは。
色んな意味で女性は怖いと思わされます。
66位 一瞬の光/白石 一文
橋田浩介は一流企業に勤めるエリートサラリーマン。38歳という異例の若さで人事課長に抜擢され、社長派の中核として忙しい毎日を送っていた。そんなある日、彼はトラウマを抱えた短大生の香折と出会い、その陰うつな過去と傷ついた魂に心を動かされ、彼女から目が離せなくなる。派閥間の争いや陰謀、信じていた人の裏切りですべてを失う中、浩介は香折の中に家族や恋人を超えた愛の形を見出していく。
男が描く理想のサラリーマン像が巧みに描かれています。
若干の「ありえなさ」も男のロマン(妄想)が具現化したものだと私は解釈しています。
65位 点と線/松本清張
ミステリ好きなら名前を知らぬ人がない名作です。舞台は昭和三十年代。福岡市香椎の岩だらけの海岸で寄り添う死体が見つかったのは、汚職事件渦中にある某省課長補佐と料亭の女中。青酸カリ入りのジュース瓶がのこされ、警察ではありふれた心中事件と考えた。しかし、何かがおかしい──と福岡の老警官と東京のヒラ刑事は疑問を抱く。うたがわしい政商は事件当時、鉄道で北海道旅行中。そのアリバイは鉄壁だった──時刻表トリックの古典にして、今も瑞々しい傑作ミステリ。
今や携帯が当たり前の世代にとっては、電報が電話を補う情報伝達手段として重宝されていた時代のミステリーはかえって新鮮でした。
飛行機や電車の時刻表に隠されたトリックはトラベルミステリーの王道。
文章が読みやすいので、サクサク読み進められます。
64位 肩ごしの恋人/唯川恵
親友である室野(旧姓・青木)るり子の3回目の結婚式に出席した早坂萌は、式で出会った海老嫌いの男・柿崎祐介と関係を持つ。彼は新婚ほやほやであったが、萌はのめり込まない程度につき合うようになる。また、仕事の残業中に知り合ったバイトの青年・秋山崇と食事をともにした日、彼が家に戻ることを拒み、萌は崇を家に引き入れ、一夜を過ごしてしまう。一方、るり子は順調に新婚生活を送っているかに見えたが、結婚した途端に夫・室野信之とのセックスに興味がなくなり、崇を自分の家に連れこんで遊んでいたりなどしていた。
私は唯川恵さんの女性の心理描写が大好きです。
繊細とおどろおどろしさ。
か弱さと強さ。
私が描く女性像に大きな影響を与えたのが唯川恵さんです。
63位 西の魔女が死んだ/梨木 香歩
中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも……。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。
子どもはもちろん、生きることに疲れた大人にも読んで欲しい物語。
おばあちゃんが語りかけてくれる言葉の一つ一つが生きる意味を教えてくれます。
62位 4TEEN/石田衣良
東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない――。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。
少年たちの友情を爽快に描いた作品。
内容は中々重いテーマが扱われていますが、男子中学生独特のぶっ飛んだ行動がそれらを重く感じさせません。
61位 龍時/野沢 尚
本格サッカー小説第一弾
スペインとの親善試合で世界の壁を感じた無名の高校生リュウジは単身スペインに渡ることに。家族との葛藤や友情を描いた青春小説
漫画版も人気のサッカー小説。
必殺技があるわけではない、主人公が海外での厳しい競争に葛藤しながらも、精神的にも肉体的にもたくましく成長していく姿が描かれています。
60位 永遠の0/百田尚樹
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。
今までにない観点から戦争とはなんだったのかについて描いている作品。
祖父の生涯を現代の若者が追っていく過程で明かされる真実。
戦争について深く知らない若者世代が読むべき必読書です。
59位 ぼくのメジャースプーン/辻村深月
ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。
罪や復讐がテーマの作品ですが、小中学生にも読んで欲しい作品。
自分が大切に思う人が傷つけられた時は人はどうするべきかを教えてくれます。
58位 火宅の人/檀 一雄
一郎は窃盗をやらかす。次郎は全身麻痺で寝たきり。弥太はまだヨチヨチ歩き。フミ子は鶏の餌を喰ってひよ子のように泣きわめく。サト子は生れたばかり。妻は主人の放蕩・濫費・狂躁を見かねて家出騒ぎ……。よしたとえ、わが身は火宅にあろうとも、人々の賑わいのなか、天然の旅情に従って己れをどえらく解放してみたい――。壮絶な逸脱を通して謳い上げる、豪放な魂の記録。
檀 一雄氏の私小説。
強くたくましく生きた豪快な生きざまはくよくよ悩んでいる人に生き方のヒントを与えてくれます。
57位 解夏/さだまさし
東京で教師をしていた隆之は、視力を徐々に失っていく病におかされ、職を辞し、母が住む故郷の長崎に帰った。そこへ東京に残した恋人の陽子がやってくる。この先の人生を思い悩む隆之。彼を笑顔で支えようとする陽子。ある日、二人はお寺で出会った老人から「解夏」の話を聞く―。表題作他、人間の強さと優しさが胸をうつ、感動の小説集。
ベーチェット病を発症した主人公が次第に視力を失っていく過程の苦悩を描いた作品。
私自身長崎出身なので、「解夏」で描かれた坂道の描写は非常にリアル、妙に感情移入できました。
さだまさしというアーティストのマルチな才能にはただただ驚かされます。
56位 きらきらひかる/江國香織
私たちは十日前に結婚した。しかし、私たちの結婚について説明するのは、おそろしくやっかいである――。笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。そんな二人はすべてを許しあって結婚した、はずだったのだが……。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上る誠実、友情、そして恋愛とは? 傷つき傷つけられながらも、愛することを止められないすべての人に贈る、純度100%の恋愛小説。
不思議でいびつな三角関係は私が及び知らない世界ですが、なぜか共感できました。
それぞれのキャラクターが純粋で、だからこそ弱くもある。
全ての行動に理由がなくなっていいのかなと思わせられる作品です。
55位 密やかな結晶/小川 洋子
記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。
忘れていくことの恐怖。
徐々に空虚になっていく人間。
秘密警察の無機質さが恐怖心を高めます。
54位 69 sixty nine/村上 龍
1969年。安田講堂事件が起き、東大は入試中止。アポロが月に行き、ビートルズが「アビーロード」を、ローリング・ストーンズは「ホンキー・トンク・ウイメン」をリリースした。ベトナム反戦運動が高まり、基地の町・佐世保で、僕は高校をバリケード封鎖した―。明るく楽しく生きる青春のエネルギーに満ちた日々を描いた永遠の古典。
青春群青劇の決定版。
若者のどこから湧いてくるのかわからないパワフルさがリアルで、忘れていた青春を思い出させてくれる作品です。
53位 告白/湊 かなえ
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。
デビュー作にして最高傑作の呼び声高い名作。
様々な視点から語られていく伏線が最後の方で見事に回収されていきます。
52位 森に眠る魚/角田光代
東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通してしだいに心を許しあうが、いつしかその関係性は変容していた。あの子さえいなければ。私さえいなければ…。凄みある筆致であぶりだした、現代に生きる母親たちの深い孤独と痛み。衝撃の母子小説。
母性としての母ではなく、女性としての母を描いた作品。
綺麗ごとだけでは済まされない、子育て、母娘の関係が女性の視点で描写されています。
子どもの親へのストレートな意見は心を刺されるような思いがします。
51位 夜のピクニック/恩田 陸
全校生徒が24時間かけて80kmを歩く高校の伝統行事「歩行祭」。3年生の甲田貴子は、最後の歩行祭、1年に1度の特別なこの日に、自分の中で賭けをした。それは、クラスメイトの西脇融に声を掛けるということ。貴子は、恋心とは違うある理由から西脇を意識していたが、一度も話をしたことがなかった。しかし、ふたりの不自然な様子をクラスメイトは誤解して…。
こんなイベントが自分の高校にもあったらなと思わされました。
忘れていた高校時代の感覚を呼び覚ましてくれます。
50位 向日葵の咲かない夏/道尾秀介
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
400ページもあってかなり分量が多い作品なのですが、会話のテンポがよく軽快にストーリーは進んでいきます。
伏線回収もしっかりしており、物語の構成力はさすがだと唸らされました。
49位 雪国/川端 康成
親譲りの財産で、きままな生活を送る島村は、雪深い温泉町で芸者駒子と出会う。許婚者の療養費を作るため芸者になったという、駒子の一途な生き方に惹かれながらも、島村はゆきずりの愛以上のつながりを持とうとしない――。冷たいほどにすんだ島村の心の鏡に映される駒子の烈しい情熱を、哀しくも美しく描く。ノーベル賞作家の美質が、完全な開花を見せた不朽の名作。
有名な冒頭のフレーズだけにお金を払ってもいいと思わされる名作。
文章の美しさは他に並び立つものがいません。
48位 パラレルワールドラブストーリー/東野圭吾
親友の恋人を手に入れるために、俺はいったい何をしたのだろうか。「本当の過去」を取り戻すため、「記憶」と「真実」のはざまを辿る敦賀崇史。錯綜する世界の向こうに潜む闇、1つの疑問が、さらなる謎を生む。精緻な伏線、意表をつく展開、ついに解き明かされる驚愕の真実とは!?傑作長編ミステリー。
親友の恋人でも好きになったら奪うか。
大学生時代に友人と熱く議論したのが昨日のことのように思い返されます。
47位 異邦人/アルベール・カミュ
母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。
社会という一つのコミュニティにおいて、ルールを守らないものはどうなるか。
異邦人という名のアウトローが社会からどんな制裁をうけるのかが不気味に、そしてリアルに描かれています。
ちなみにタレントのセイン・カミュさんの大叔父(祖父の弟)さんです。
46位 桐島、部活やめるってよ/朝井 リョウ
田舎の県立高校。バレー部の頼れるキャプテン・桐島が、理由も告げずに突然部活をやめた。そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。部活も校内での立場も全く違う5人それぞれに起こった変化とは…?瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな青春群像。第22回小説すばる新人賞受賞作。
恐ろしいほどリアルに描かれたスクールカースト。
それぞれのキャラクターの心情を見事にかき分けている朝井リョウさんの筆致が凄すぎる。
45位 ソロモンの偽証/宮部みゆき
クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か、自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった――。ひとつの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、真実を求める生徒たちを描いた、現代ミステリーの最高峰。
一つの死を巡る学級裁判。
様々な視点から描かれる事件の概要。
謎が謎を呼んで謎になる。
全6巻に及ぶ長編が全く長く感じないほど一気に読めてしまう名作です。
44位 ふがいない僕は空を見た/窪 美澄
高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが―。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。
映画版が好きで読んでみたのですが、小説版の方が圧倒的に面白いです。
映画ではあまりスポットライトがあたっていなかった登場人物の内面が描かれており、映画が好きだった人はますます好きになれます。
43位 じゃじゃ馬ならし/シェイクスピア
もし気が強くてわがままな女性の扱いに困っているかたがいたら是非読んでみてください。
ここに完璧な対処法が書かれています。
42位 幸福な食卓/瀬尾まいこ
佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて……。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。
家族って枠組みに悩みを抱えている人に読んで欲しい。
父、兄、母...
世間が決めた理想をあてはめなくても、幸せな食卓を囲めることを気付かさせてくれます。
41位 きよしこ/重松清
少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと──。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。
大人になっても少年の純粋で繊細な気持ちを描き続けられる重松清って何者なんだ!?
とただ脅かされる作品。
悩める少年少女に是非読んで欲しいです。
40位 空白の叫び/貫井 徳郎
久藤美也は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城拓馬だが、決して奢ることもなく常に冷静で淡々としている。神原尚彦は両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている。〈上巻〉第一部ではこの3人の中学生が殺人者になるまでを、その内面を克明にたどりながら描く。その3人が同じ少年院に収容されて出会うのが第二部。過酷で陰湿な仕打ちで心が壊されていく中、3人の間には不思議な連帯感が生まれる。
性格も育った環境も全く異なる三人の中学生が殺人をするに至ったのは何故なのか。
ラストで明かされる出生の秘密。
人はこんなにも豹変してしまうのかと恐ろしさを覚えた作品。
39位 スローカーブを、もう一球/山際 淳司
ホームランを打ったことのない選手が、甲子園で打った16回目の一球。九回裏、最後の攻撃で江夏が投げた21球。スポーツの燦めく一瞬を切りとった八篇を収録
実際にあった群馬県の高崎高校が高校野球で起こした快進撃をモデルにした本。
「江夏の21球」を含む野球好きにはたまらない珠玉の野球短編集です。
38位 坊っちゃん/夏目漱石
松山中学在任当時の体験を背景とした初期の代表作。物理学校を卒業後ただちに四国の中学に数学教師として赴任した直情径行の青年“坊っちゃん"が、周囲の愚劣、無気力などに反撥し、職をなげうって東京に帰る。主人公の反俗精神に貫かれた奔放な行動は、滑稽と人情の巧みな交錯となって、漱石の作品中最も広く愛読されている。近代小説に勧善懲悪の主題を復活させた快作である。
数ある夏目漱石の名作の中でも最も面白いと思った作品。
おかしいと思ったことにはとことん立ち向かう坊ちゃんの躍動感がたまりません。
37位 夏と花火と私の死体/乙一
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。
死体の女の子の目線で語られる兄弟の殺し隠蔽。
16歳でこれを書ききった乙一さん.... 天才だ。
36位 蟹工船/小林 多喜二
海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。“国策"の名によってすべての人権を剥奪された未組織労働者のストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る「蟹工船」。近代的軍需工場の計画的な争議を、地下生活者としての体験を通して描いた「党生活者」。29歳の若さで虐殺された著者の、日本プロレタリア文学を代表する名作2編。
人としてなど扱ってもらえない人ならざる人となった労働者の生活風景が生々しく伝わってきます。
ますます労働環境が悪くなっていく日本の現代の若者こそ読むべき作品です。
35位 さまよう刃/東野圭吾
自分の子供が殺されたら、あなたは復讐しますか?
長峰重樹の娘、絵摩の死体が荒川の下流で発見される。犯人を告げる一本の密告電話が長峰の元に入った。それを聞いた長峰は半信半疑のまま、娘の復讐に動き出す――。遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。
少年法や人が人を裁くことの意味が問われている作品。
良い意味で読んだ後に清涼感がない本です。
34位 不毛地帯/山崎 豊子
大本営参謀・壹岐正は、終戦工作に赴いた満州でソ連軍に抑留される。酷寒のシベリアで、想像を絶する飢餓と強制労働に11年にわたって耐え抜き、ついに昭和31年、帰還を果たした。その経歴に目を付けた近畿商事の社長大門の熱心な誘いに応え、第二の人生を商社マンとして歩むことを決意。地獄の抑留生活の傷も癒えぬまま、再び「商戦」という名の新たな戦いに身を投じる。
とことんまで取材して作り上げたフィクション&ノンフィクション。
シベリア拘留生活は読んでいるだけで過酷さが伝わってきますが、それでも不屈の闘志で耐えぬく主人公。
日本人が忘れてはいけない歴史の真実がここにあります。
33位 檸檬/梶井基次郎
肺を病み、憂鬱に心を潰されそうになりながら京都 の街を彷徨っていた私は、果物屋で目に留まったレ モンを買う。その冷たさと香りに幸福感を感じて ——。代表作「檸檬」を はじめ、有名なフレーズ、 〝桜の樹の下には屍体が埋まっている〟で始まる 「桜の樹の下には」、月夜の海岸で自分の影に途方 もなくリアリティを感じるあまり、自分と影との境 界が分 からなくなってしまう「Kの昇天」など、著 者独特の世界観と幻想的な美しさが響きあう名短篇 五篇を収録。
10ページだけでここまで表現できるのか。
31歳で夭逝した天才・梶井基次郎の才能がつまった短篇集です。
32位 イン・ザ・プール/奥田英朗
「いらっしゃ~い」 伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者は、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖……訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっとヘン。 こいつは利口か、馬鹿か? 名医か、ヤブか? ストレスで体調不良になった出版社勤務の和雄はプール通いを始めるが、今度は1日に複数回泳がなければ気が済まなくなって……(「イン・ザ・プール」)。 35歳バツイチの哲也。なぜか股間が勃ちっ放しになってしまったから、さあ大変! (「勃ちっ放し」)。 ほかに「コンパニオン」「フレンズ」「いてもたっても」の5編を収録する大人気シリーズ第1弾!
自分の悩みのちっぽけさと、人の悩みへの寄り添いかたを教えてくれます。
伊良部一郎先生がいてくれたら嬉しいし、自分が伊良部先生のようになれたらなとふと思う瞬間があります。
続編の「空中ブランコ」もおすすめです。
31位 横道世之介/吉田修一
横道世之介。
長崎の港町生まれ。その由来は『好色一代男』と思い切ってはみたものの、限りなく埼玉な東京に住む上京したての18歳。嫌みのない図々しさが人を呼び、呼ばれた人の頼みは断れないお人好し。とりたててなんにもないけれど、なんだかいろいろあったような気がしている「ザ・大学生」。どこにでもいそうで、でもサンバを踊るからなかなかいないかもしれない。なんだか、いい奴。
主人公なのに主人公らしくない主人公・世之介
同じ長崎出身というもこともあってこの世之介は自分のことではないかと何度も思いました。
唯一の違いは私は「なんだか、いい奴」ではなく「なんだかんだ、いい奴」ってことくらいです。
30位 砂漠/伊坂幸太郎
入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決……。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。
大学生の時にゼミの友達全員で揃って読んだ思い出の作品。
こんな主人公たちのような関係になりたいなと語り合いました。
そのことを思い出すたびに、ラストの校長先生の『学生時代(作品内の世界)を思い出して、あの頃は良かったなと逃げるような人生を送るなよ』って言葉を同時に思い出します。
29位 ノルウェイの森/村上 春樹
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
良くも悪く村上 春樹ワールド全開。
この作品をああだこうだいうのは日本の大学生たちが一度を陥る迷い道。
28位 花神/司馬遼太郎
周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげたわが国近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く長編。動乱への胎動をはじめた時世をよそに、緒方洪庵の適塾で蘭学の修養を積んでいた村田蔵六(のちの大村益次郎)は、時代の求めるままに蘭学の才能を買われ、宇和島藩から幕府、そして郷里の長州藩へととりたてられ、歴史の激流にのめりこんでゆく。
ここまで合理的な人間が江戸から明治の日本にいてくれたことがどれだけ日本の近代化を推し進めてくれたか。
27位 アメリカひじき・火垂るの墓/野坂 昭如
中年男の意識の底によどむ進駐軍コンプレックスをえぐる「アメリカひじき」など、著者の“焼跡闇市派"作家としての原点を示す6編。
今や現代の日本人の生活に欠かせない"ある嗜好品"こそが「アメリカひじき」。
今豊かな生活ができていることに改めて感謝したい。
26位 大地の子/山崎 豊子
陸一心は敗戦直後に祖父と母を喪い、娘とは生き別れになった日本人戦争孤児である。日本人であるがゆえに、彼は文化大革命のリンチを受け、内蒙古の労働改造所に送られて、スパイの罪状で十五年の刑を宣告された。使役の日々の中で一心が思い起こすのは、養父・陸徳志の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。
ラストの一言に尽きる。
エンターテインメント性一切なしでも、ここまで人をひきつける作品が書ける山崎豊子先生には恐れ入ります。
25位 小説 上杉鷹山/童門冬二
灰の国はいかにして甦ったか。九州高鍋の小藩から養子に入り、十七歳で名門上杉家の藩主の座についた治憲は、自滅か藩政返上かの瀬戸際にある米沢十五万石を再建すべく、冷メシ派を登用し改革に乗り出す。藩主や藩のために領民がいるのではない、との考えのもとに人びとの心に希望の火種をうえつけてゆく…。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
ケネディ大統領が最も尊敬する日本人・上杉鷹山の米沢藩復興の物語。
24位 われはロボット/アイザック・アシモフ
ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。
ロボット、AI関連のSFの源流とも言えるロボットの暴走を描いた作品。
ますます進んでいく機会による自動化が人類にとって進化なのか破滅の道なのか。
この本が将来予言の書と言われる日もそう遠くはない。
23位 わたしを離さないで/カズオ・イシグロ
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。
引用:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) | カズオ・イシグロ, 土屋 政雄, 土屋政雄 | 英米の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
生まれながらに存在理由が決められた「提供者」と呼ばれる少年少女たちの葛藤を描いた作品。
大学時代の私の友人はこの本を「ただただ怖い」と言って3日間ほど家から出てこなくなりました。
それだけ人の心を良くも悪くも揺さぶる作品です。
22位 老人と海/ヘミングウェイ
キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく……。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。
少年時代に読んだ時には冒険としての面白さで楽しめた本。
20歳になってから読んだ時には生きることや抗うことの大切さを教えてくれる本だと気づけました。
自分が老人になった時に読めばどんな感想をいただくのか。
折に触れて何度も読み返したくなる名作です。
21位 山椒魚/井伏 鱒二
老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作「山椒魚」、大空への旅の誘いを抒情的に描いた「屋根の上のサワン」ほか、「朽助のいる谷間」など12編。
「お前井伏の山椒魚みたいだな」。
大学時代の友人に言われた一言が今でも忘れられません。
なんでも見えているようで実はそこから出られなくなっていただけに過ぎない。
物事の視座を変えてくれる本です。
20位 砂の器/松本清張
宿命とはこの世に生まれて来たことと、生きているということである。
東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する……。
人は変われるのか。
出生や病気による差別を乗り越えて変わろうとした天才ピアニストの悲劇と惨劇。
社会派サスペンスの巨匠・松本清張の決定版とも言える作品。
19位 屋根裏の散歩者/江戸川乱歩
郷田三郎は引っ越したばかりの下宿で、偶然、屋根裏への入口を見つける。異質な空間に魅力を覚えた郷田は、昼夜を問わず屋根裏を「散歩」し、天井の隙間から他人の隠された本性や生活の秘密を盗み見る興奮に酔いしれるようになる。 ある日、彼は天井裏の小さな穴を利用した恐ろしい犯罪を思いつく。自殺として片付けられようとしたこの事件を、名探偵明智小五郎が明敏な推理力を発揮する・・・・・・ 「屋根裏の散歩者」「鑑地獄」「押絵と旅する男」「火星の運河」「目羅博士の不思議な犯罪」「虫」「疑惑」 短編7編を収録。
「変態性が大事なんだ」 。
元会社の同僚が常々言っていた言葉。
人間誰しも内側に秘めた異常性ともいえる変態性。
それをのぞき見していく過程で生まれたある好奇心。
あなたの変態性が目覚めるかもしれません。
18位 金閣寺/三島由紀夫
一九五〇年七月一日、「国宝・金閣寺焼失。放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世人の耳目を驚かせた。この事件の陰に潜められた若い学僧の悩み――ハンディを背負った宿命の子の、生への消しがたい呪いと、それゆえに金閣の美の魔力に魂を奪われ、ついには幻想と心中するにいたった悲劇……。31歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文に綴った不朽の金字塔。
爆笑問題カーボーイで太田光さんの解説を聴いて読んだ思い出深い作品。
主人公の金閣寺への憧れを「遠足の前の子供」と称した田中裕二さんの表現も秀逸でした。
過去・現在・未来のうち人間は過去と未来を美化し、現在に物足りなさを感じる。
その物足りなさを埋めるために主人公がとった行動とは...
17位 海と毒薬/遠藤周作
戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? どんな倫理的真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識"の不在の無気味さを描き、今なお背筋を凍らせる問題作。
九州大学病院で実際に行われた生体解剖事件を題材にした小説。
倫理観など様々なテーマがありますが、一番のテーマであり、恐怖は人間は場の空気に流されるととんでもない禁忌を犯してしまうということ。
例えそれが倫理的に悪いことでも、自分が所属するコミュニティで生きていくためには異常な行動を取ってしまう。
遠藤周作さんが描いてきた”人間の恐ろしさとは何か”がこれ以上ないくらいに精緻に表現された作品です。
16位 ジキルとハイド/ロバート・L. スティーヴンソン
医師ジーキルは自ら発明した秘薬によって凶悪な人物ハイドに変身するが,くり返し変身を試みるうちにやがて恐るべき破局が…….人間の二重性を描いたこの作には天性の物語作家スティーヴンスン(一八五〇―九四)の手腕が見事に発揮されており,今も変わることなく世界中で愛読されている.映画化されることに実に七十回という.
この作品を含めイギリスでは人の二面性を描いた名作が多数存在します。
アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズやアガサ・クリスティのミステリーなど。
そこには殺人者にも関わらず、平然と生きている人々がいます。
普段押し殺している狂気が人知れず爆発する危険性を描いているのです。
イギリス紳士という言葉の裏には心の内側に”建前と本音”を持っていることの現れでもあります。
自分の本音を隠すイギリス人だからこそ二面性を描く名作を描け、同時にそれを楽しめる土壌が市民にあったからこそ、多くのミステリーの名作が誕生したのです。
15位 友情/武者小路 実篤
主人公野島とその親友大宮の友情と恋愛-青春時代のあらゆる魂の問題がこの2つのテーマをめぐって展開されるこの作品は,武者小路実篤(1885-1976)の数多い作品の中でも,とりわけ多くの若い読者に愛読されてきた.身につまされる思いで読み進んだ経験のある読者も多いであろう永遠の青春小説.(解説=河盛好蔵)【改版】
愛情の前では友情すらも無に等しくなる。
友情や愛情に揺れ動く、10代、20代に是非読んで欲しい作品。
夏目漱石のこころが好きな人には特におすすめです。
14位 カラフル/森絵都
生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。不朽の名作ついに登場。
もう一回生き直してみよう。
そう勇気づけさせてくれる本。
色んな悩みを抱えて、もうダメだって思えた時にこの本を読めば人生に彩りを与えてくれます。
13位 朗読者/ベルンハルト シュリンク
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や! 」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
引用:朗読者 (新潮文庫) | ベルンハルト シュリンク, Bernhard Schlink, 松永 美穂 |本 | 通販 | Amazon
知らないってことがどれだけ辛いことかを教えてくれる本。
恋愛、自由、尊厳、文もう、ナチス裁判....
オススメの本を紹介されたら真っ先に頭に浮かぶ作品です。
12位 儚い羊たちの祝宴/米澤穂信
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
ミステリーって概念を良い意味でぶっ壊してくれた本です。
推理やトリックだけではなく、人の心に隠された残酷さや無情さ、偽りの感情など様々な謎を扱うのがミステリーなのだと気づかされました。
平成生まれで江戸川乱歩などのいわゆる文豪の文体が苦手な人には米澤穂信さんのミステリを是非読んで欲しい。
特に儚い羊たちの祝宴を読んだ後の戦慄は震えます。
11位 エイジ/重松清
ぼくの名前はエイジ。東京郊外・桜ヶ丘ニュータウンにある中学の二年生。その夏、町には連続通り魔事件が発生して、犯行は次第にエスカレートし、ついに捕まった犯人は、同級生だった――。その日から、何かがわからなくなった。ぼくもいつか「キレて」しまうんだろうか?……家族や友だち、好きになった女子への思いに揺れながら成長する少年のリアルな日常。山本周五郎賞受賞作。
「キレる」ってなんだ。
少年犯罪が社会問題になった時に、大人は心理学などを用いて理論的に問題を捉えようとしました。
でも、子供たちにとってはそんな理論で解説されてもちっともしっくりこない。
もしかしたら自分の中にも「キレる」瞬間が訪れるのではと思い悩む少年「エイジ」の心を描いた作品。
10位 五辧の椿/山本周五郎
おしのの最愛の父・喜兵衛が死んだ。婿に入って以来、遊びもせず身を粉にして働いた身体は労咳に蝕まれていた。一方、母・おそのは夫を避けて寮に移り住み、遊興に耽り、男を連れ込んで、不行跡を続けていた。おそのが夫の死を知ったのは、おしのと見舞いに行く約束を破って、役者と行った箱根から帰ってきてからだった。おそのは夫の遺骸を前にしても悲しまないばかりか、死人の側にいるのを嫌がる。おしのに、父への不人情をなじられると、夫を悪く言い、この人は本当の父ではないから悲しむことはないと言い放った。呆然としたおしのは一人、部屋にこもり、己を恥じない母を汚れていると思った。母の血が流れる自分の身体も汚れていると身震いした。そして実の子でない自分への父の愛情を思った時、女ばかりか人間ぜんぶを辱める罪を犯した母と母と一緒に父を苦しめた男たちに、罪を償わしてやると誓う。
切なくて辛い話。
いつも悩める人に救いの手を差し伸べてくれる山本周五郎作品にあっては異質な話。
だけどおしのの凛とした生き方に惹かれてしまう。
山本周五郎先生が描く、人情劇の代表作です。
9位 変身/フランツ・カフカ
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。
ある朝目覚めたら何かに変わってしまっていた。
この設定の元ネタと言える作品。
この作品で最大のテーマは人はいかにして自分の存在を証明できるのかということです。
いつもと違う姿をした自分を両親や兄弟に認めてもらえない苦悩。
心や記憶ではなく、人は姿・形でその人の存在を確認しているのではないか。
自分が自分であると証明できない葛藤や元に戻れない焦りが主人公をどんどん追い込んでいく様子は色んな意味で読者に恐怖感をもたらします。
8位 死神の精度/伊坂幸太郎
1、CDショップに入りびたり、 2、苗字が町や市の名前であり、 3、受け答えが微妙にずれていて、 4、素手で他人に触ろうとしない。 ――そんな人物が身近に現れたら、それは死神かもしれません。1週間の調査ののち、その人間の死に〈可〉の判断をくだせば、翌8日目には死が実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。 日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作ほか、「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「恋路を死神」「死神対老女」を収録。
「死んだ牛はうまいか?」
上京(大学生になるとき)する際に姉が勧めてくれた本。
この本を読んだことで大学時代に本を読む習慣が着きました。
内容も伊坂ワールド満載で、伊坂幸太郎を好きになるきっかけとなった作品でもあります。
7位 走れメロス/太宰治
処刑されるのを承知の上で友情を守ったメロスが、人の心を信じられない王に信頼することの尊さを悟らせる物語。
太宰治と言えば人間失格、晩年に代表される人間の悲喜劇。
ただ個人的には太宰治の本当の良さが出ているのは寓話にあります。
太宰が女にモテた理由の一つは人の心理を掴むことに長けたから。
そんな心理を掴める太宰にとって人を喜ばせることも容易かった。
走れメロス、お伽草紙、新ハムレットなど人をワクワクさせる話こそが太宰の真骨頂。
特に走れメロスで書かれた友情や葛藤、情熱、裏切り、猜疑心など、私的太宰治の最高傑作です。
6位 アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス
32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。著者追悼の訳者あとがきを付した新版。
引用:アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV) | ダニエル・キイス, 小尾 芙佐 |本 | 通販 | Amazon
主人公の知能レベルに合わせて文体の変化は衝撃的でした。
知性のあるなしで人間の人生がいかに変わるか。
ただ、知性があるだけでは全ては変わらない。
知性の変化で変わっていくアルジャーノンの人間性も見所です。
最後の終わらせ方に作者の強いメッセージが隠されています。
5位 竜馬がいく/司馬遼太郎
幕末維新史上の奇蹟といわれる坂本竜馬。土佐の郷士の次男坊、しかも浪人の身でありながら、大動乱期に卓抜した仕事をなしえた。 竜馬の劇的な生涯を中心に、同じ時代をひたむきに生きた若者たちを描く、大歴史ロマン。全8巻。 たびたびドラマ化もされ、現在の竜馬像はこの本で形づくられたともいえる、累計2500万部の国民的ベストセラー。
中学1年生の時に母親の勧めで読んだ本。
同時に私の本格的な読書体験の始まりでもありました。
様々な人との関わりの中で、成長していく主人公・龍馬。
恋愛、友情、歴史、ビジネスなど様々なことが学べる青少年に最もオススメできる本です。
4位 春琴抄/谷崎潤一郎
盲目の三味線師匠春琴に仕える佐助の愛と献身を描いて谷崎文学の頂点をなす作品。幼い頃から春琴に付添い、彼女にとってなくてはならぬ人間になっていた奉公人の佐助は、後年春琴がその美貌を何者かによって傷つけられるや、彼女の面影を脳裡に永遠に保有するため自ら盲目の世界に入る。単なる被虐趣味をつきぬけて、思考と官能が融合した美の陶酔の世界をくりひろげる。
文章の美しさで谷崎潤一郎にかなう作家はいません。
悪魔的とも言われた耽美主義の極北。
最後に佐助が春琴への愛を誓うために見せたある行動は読んでいて興奮と感動を抑えきれませんでした。
本を読んでいて最も心を動かされた瞬間です。
あの興奮を超えるものは今後の人生で訪れません。
3位 さぶ/山本周五郎
才走った性格と高すぎるプライドが災いして人足寄場に送られてしまう栄二。鈍いところはあるがどこまでもまっすぐなさぶ、ふたりの友情を軸に、人の抱えもつ強さと弱さ、見返りを求めない人と人との結びつきを描き、人間の究極のすがたを求め続けた作家・山本周五郎の集大成。
山本周五郎の優しさが全て集約された本です。
「樅の木は残った」、「雨あがる」、「赤ひげ診療譚」、「人情裏長屋」...
不器用な人間に救いの手を差し伸べてくれる作品ばかり。
中でもさぶで描かれた友情を超える本はありません。
私は唯一親友と言える友人との別れの際にこのさぶを渡しました。
友情や人間の弱さなど色んなことを教えてくれる作品です。
2位 沈黙/遠藤周作
島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる……。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、〈神の沈黙〉という永遠の主題に切実な問いを投げかける長編。
日本人がなかなか理解できない宗教信仰。
宗教信仰理解へのヒントを与えてくれる本です。
世界中で賛否両論を巻き起こした「踏み絵」に関する解釈、信仰と裏切り、神の沈黙。
宗教だけでなく、何かを信じることの意味を教えてくれる本です。
1位 痴人の愛/谷崎潤一郎
きまじめなサラリーマンの河合譲治は、カフェでみそめて育てあげた美少女ナオミを妻にした。河合が独占していたナオミの周辺に、いつしか不良学生たちが群がる。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に河合は悩まされ、ついには愛欲地獄の底へと落ちていく。性の倫理も恥じらいもない大胆な小悪魔が、生きるために身につけた超ショッキングなエロチシズムの世界。
1位はこれしかない。
ただ、「痴人の愛」を含め谷崎作品を好きだと言うのは色々と誤解を生む可能性があるので普段は避けています。
太宰治の人間失格を読んで「俺の心を見透かされた!」と思う人がいます。
私の場合は谷崎潤一郎の痴人の愛を読んで「俺の心を見透かされた!」と思いました。
女性からしたら迷惑な話ですが、私が生涯付き合いたいと思う女性はこの「痴人の愛」を共感してくれる人です。
今まで会ったことはありませんが。
そもそも本来開けっ広げにする部分ではないので、知る必要もないことでもあります。
春琴抄、刺青、細雪...
耽美主義、マゾヒズム以外にも文体の美しさを始めたとした筆致の素晴らしさが谷崎潤一郎の魅力。
日本人なら谷崎潤一郎の美しい日本語を読んでおいて損はありません。
まとめ
小説はたくさんのことを教えてくれます。
それは語彙や教養などの格式高いものだけではありません。
自分でも気づいていない潜在的な意識や趣味嗜好。
過去の歴史的な事件や仮想未来など自分が体験、想像もしなかった世界。
先人たちが何十年もの時間をかけてたどり着いた思考をたかだか数百円から数千円で数時間で知ることができるのです。
こんな至福な瞬間を人類が何千年もかけて続けてきたことに感動すら覚えます。
これからも様々な読書体験を通して、色んな人の考えを知りたいです。
それでは、さようなら!
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