ここ最近この時期になると巻き起こる議論、それは「CSは本当に必要なのか」というもの。
ブログやtwitterなどのSNS上だけでなく、ラジオや新聞、週刊誌などの各種メディアでも、様々なプロ野球ファンがCSの是非について議論したり、独自の意見を述べたりします。
昨年はクライマックスシリーズ(CS)で敗退した。「オレはカレーを作りながら、CSを見ていたんですよ。負けた瞬間、ぼうぜんとして、カレーが燃えちゃいました…。リーグ優勝したのに、日本シリーズに出られないなんて。やっぱり、CSの有無は再考すべきだと思いますよ」。
私個人は「CS賛成派」なのですが、もちろん現行のNPBのCSに欠陥がないかというと嘘になるとも思います。
そこで今回は「プロ野球のCS(クライマックスシリーズ)は本当にいらないのか」について、私なりの意見をまとめました。
プロ野球ファンの方で、CSの必要性がわからないという方に是非読んで頂きたいです。
プロ野球のCS(クライマックスシリーズ)のメリットと必要性
消化試合を少なく出来る(終盤戦の盛り上がり)
消化試合減はCSの最大の目的と言っても過言ではありません。
仮にCSがなければ、シーズン終盤戦で盛り上がれるのは優勝争いをしているチームのみ。
年によっては3球団で優勝を争うこともありますが、大抵は2球団ないしは1球団の独走態勢。
2018年のプロ野球で言えば、セ・リーグが前者、パ・リーグが後者に該当します。
※パ・リーグの場合は一時期日本ハムを交えた三つ巴でした。
日本のプロ野球の場合、全12球団で2リーグ制ですので、最後までシーズンを盛り上がれるのは1/4の球団のみ。
コアなファンなら優勝争い脱落後のいわゆる消化試合でも楽しめますが、ライト層のファンの興味は薄れます。
最悪の場合、応援することに嫌気が差して、ファンを辞める人もいるでしょう。
その点CSを導入すると、最後の最後までファンを飽きさせない仕組みができます。
2018年のNPBで言えば、そうそうに広島が独走態勢に入り、ギリギリヤクルトが追走する形。
残りの4球団は借金を抱える中で、ともすれば最下位もありえた状況。
そこに「CS」という希望があることで、巨人、DeNA、中日、阪神の4球団が選手、ファン、球団としてもモチベーション高く終盤戦まで戦い続ける状況が生まれたわけです。
2018年の楽天にしても、開幕から躓いて下位に低迷しながらも、「CSに出られるかもしれない」という希望が、シーズン中盤の巻き返してに繋がったわけです。
消化試合がなくなることで、選手、ファン、球団のモチベーションを最後まで維持出来ることがCSの最大のメリットと言っても過言ではありません。
1位と2位のチームは満員確定の本拠地開催試合が増える
現行ルールでは、レギュラーシーズン上位チームが本拠地で試合を行えます。
2位のチームなら2~3試合、1位のチームなら3~6試合。
CSともなれば、ほとんどの試合が満員になりますので、主催者球団としてはこんなに美味しいことはありません。
「埼玉西武ライオンズファンが球団に貢献するためのお金の使い方」の記事でもお話しましたが、プロ野球球団の年間収入の約30%がチケット、20%がグッズです。
収入源の少ないNPB球団としては、満員が見込めるCSを本拠地開催出来ることがいかに大きいことか。
CSはリーグ優勝したチームにとって不公平さを感じさせるかもしれませんが、収入増というご褒美的な側面もあるのです。
試合の勝敗面でも本拠地開催は大きいですが、それとプラスして本拠地開催の試合が増えることは球団にとっても、ファンにとっても大きなプラスがあります。
面白い短期決戦が増える&プロ野球選手が短期決戦慣れする
これは結構個人差があるでしょうが、CSの試合は面白い試合が多くなる傾向にあります。
その年のAクラスチーム同士が、日本シリーズをかけて本気の試合を行うわけですから、当然試合内容は緊迫した熱戦が多くなります。
レギュラーシーズン中も直接対決はありますが、前後に別の試合を控えているため、先発もリリーフも後先を見据えたものになりがち。
ところがCSの場合は負けたら後がないため、レギュラーシーズンとは異なる選手起用をします。
本来先発の投手がリリーフに回ったり、抑えが本来より早いイニングから登板したり。
極端な話、レギュラーシーズンは上位球団に負け越しても、下位球団に大きく勝ち越し出来れば優勝は可能。
その点CSは直接上位チームを倒さないといけないため、真のリーグ頂上決戦を見られるのです。
同じ野球とはいえ、レギュラーシーズンとプレーオフの試合は似て非なるもの。
野球の短期決戦といえば高校や大学、社会人野球もありますが、選手登録数や投手の頭数が全く異なるプロ野球とでは、野球が全く異なります。
プロ野球選手の本気の短期決戦を見る機会が増えるのは、興行としてのプロ野球にとっては魅力増なのでかなりのメリット。
最近ではWBCなどの国際試合で、プロ野球選手でも短期決戦を戦う機会が増えています。
後にMLBで長丁場のプレーオフを戦う選手もいるので、日本で短期決戦慣れすることは、日本プロ野球界全体のレベルアップという点で大きなメリットです。
低迷している球団に再生の希望を持たせられる
2016~2018年にかけてセ・リーグを三連覇した広島は、1998年から15年連続Bクラス。
2017年にCSから日本シリーズに進出した横浜DeNAは、2002年~2015年までの14シーズンでBクラスが13度、うち最下位は10度。
今でこそ優勝やAクラス入りを期待されるチームになりましたが、上記の両球団は長らくBクラスに低迷している時期がありました。
優勝を目標に据えるのはなかなか難しい球団にとって、中間目標としてのCSの存在は大きなものです。
まずはCS圏内、そしてCSで勝てるチームになって、ゆくゆくは優勝を目指す。
CSをひとまずの目標に据えた中長期的チーム戦略が、下位に低迷していた球団を優勝を狙える球団にすることに繋がったわけです。
2017年に年間96敗して最下位に沈んだヤクルトが、2018年に貯金9の2位にV字回復出来たのも、「まずはCS」というモチベーションがあったことも影響しているでしょう。
チーム再建、低迷期脱出を目論む球団にとって、中間目標としてのCSの存在は非常に大きなメリットです。
プロ野球のCS(クライマックスシリーズ)のデメリット
リーグ優勝したチームが日本シリーズに出られない可能性
結局CSの是非を問う上で一番の論点は、リーグ優勝したチームが日本シリーズに出られない可能性です。
レギュラーシーズン143試合を戦って優勝したチームが、数試合のCSの勝敗で日本シリーズに進出出来ないことに納得いかない人は一定数いるでしょう。
結果的にリーグ優勝したチーム同士で日本シリーズを戦えれば問題ないのですが、非リーグ優勝チームが日本シリーズに進出すると、微妙な空気になることが多いです。
一応形の上ではリーグ優勝という勲章は残りますが、そのリーグ優勝の余韻を吹き飛ばすだけのダメージが、CS敗退にはあります。
MLBなどでもワイルドカードで勝ち上がったチームが優勝するケースはありますが、日本のプロ野球のようにシーズンの貯金差が25以上離れたチーム同士の対戦は稀。
基本的にはプレーオフに進出するチームは90勝前後したチームが戦うため、プレーオフで敗れても違和感が生まれません。
対して日本の場合は、シーズンで借金を抱えているチームがCSに進出するケースもあるため、どうしても割り切れない感が出てしまいます。
1勝のアドバンテージ、全試合本拠地開催、下位チームは3連戦後に中1日で6連戦...
現状でも上記に挙げた十分なアドバンテージが優勝チームにはありますが、そもそものCS進出or開催条件の見直し(例:10ゲーム差以上離れたらCSは開催しない)は今後も議論されるべきでしょう。
優勝争いを早々に諦めて2、3位に切り替える可能性
これはCSが開始された当初に表面化し始めた問題です。
仮に1位のチームが首位を独走して、2~6位は団子状態だったとします。
その場合、2位以下のチームが是が非でも首位を倒して優勝を狙うよりも、CSを確実に狙う戦力を立てる可能性が出てきます。
勝つ確率の低い首位相手にエース級をぶつけるよりも、首位よりも確実に力の劣るCS争い中のライバル相手にエース級を当てる戦略をとるのです。
ただ、これに関してはファンが思ってるよりも、現場は優勝にこだわるケースの方が多い印象。
2016年に日本ハムが6月24日の段階で最大11.5ゲーム差をつけられながらも、大逆転で優勝したことがありました。
絶好調の首位ソフトバンクを叩くよりも、確実に2位ロッテや下位球団相手にエース級をぶつけても良さそうだったのですが、栗山監督は違いました。
「俺はまだ諦めていない」と報道陣に宣言し、エース級を首位ソフトバンクにぶつけたのです。
その後球団新記録となる15連勝などもあり、日本ハムは奇跡の逆転優勝。
この栗山采配が球界全体の意識を変え、2017年の楽天、2018年ソフトバンク、2017、18の巨人など、2位狙いに切り替えてもおかしくない球団が、首位を狙うケースが増えてきました。
もちろん首位を諦めてCS狙いに切り替えるリスクは潜在的に含みますが、必ずしもそうなるとは限りません。
ただ、ペナントが先行逃げ切りしやすくなる可能性を高める要因にはなり得ます。
なので、CSが結果的にペナントを面白くなくす可能性は否定できません。
世代交代が遅れる可能性
これはあまり表面化していませんが、チーム編成に悪影響を及ぼす可能性があります。
「優勝は出来ないけど、まだCSの可能性が残されているから」と、負けられない試合が続くことで、なかなか若手をテスト出来ない球団も出てくるのです。
CS導入以前であれば、優勝の可能性がなくなった時点で若手をテストしたり、数年後を見据えた選手起用をしていたのに、CSの存在が世代交代への移行を遅らせてしまう可能性があります。
その悪い例が、巨人、中日、阪神。
上記の三球団はセ・リーグでもCSが導入された2007年前後の優勝争い常連球団。
毎年のように優勝を争い、仮に優勝出来ない年もCS進出を争ってきました。
優勝争いはともかく、優勝の可能性がなくなった後も2位や3位を狙わないといけない常勝球団ならではの責任から、抜本的な世代交代を出来ないまま、主力が高齢化。
その結果、2018年に巨人は4年連続V逸、中日は5年連続Bクラス、阪神は17年ぶりの最下位に転落。
日本ハムのようにCSがあってもなくても割り切って改革を進められる球団なら問題ありませんが、行き当たりばったりの球団編成を行っているチームにとって、CSがチームの新陳代謝を遅らせる事態を招くのです。
本来優勝出来なかったことはプロ野球球団にとって問題なのですが、「優勝出来なかった」が「CSに進出出来た」に変わってしまい、問題意識を弱める危険性もあります。
CSによって「負けられない試合」が増加することはメリットでもありますが、チーム編成においては「負けても良い試合」の減少によるデメリットも生まれるのです。
プロ野球のCS(クライマックスシリーズ)は本当にいらないのか
結論から言えば、今のNPBにCS(クライマックスシリーズ)は必要です。
CS制度がNPBに導入されてから今年で12年目。
今の小中学生の方にはピンとこないかもしれませんが、CSのなかった時代の消化試合の雰囲気といったらそれはそれは悲惨。
各球場で閑古鳥が泣いて、下位球団の試合結果がクローズアップされることもなく、散々なものでした。
プロ野球のレギュラーシーズンは年度によって多少試合数は異なりますが、約140試合。
12球団それぞれのファンの目線で考えれば、年間1,680試合が行われるわけです。
その1,680試合をいかに年間通して飽きないものにさせるかが、NPB全体の盛り上がりを考えた時に重要。
先程話したとおり、1/4の球団しか味わえない優勝争い。
一番の理想は戦力均衡になりやすいルールを作って、毎年最終戦までどこが優勝するかわからないようにすることですが、現実的ではありません。
そうなると、優勝争いできない3/4の球団のファンもいかに楽しめる仕組み作りを出来るかが、大切になってきます。
現状各球団の資金力や本気度の違いがある以上、CSを導入する方が消化試合を少なくできる確率は高いです。
ですので、CSを廃止するならば、CSに替わるNPBを盛り上げる制度が必要。
その案が出来るまでは、CS廃止論を議論出来ないほど、CSはNPBにとってなくてはならないものになっています。
もちろん、人それぞれプロ野球に求めることは様々なので、求めるものが違えばCS是非の意見も異なります。
ただ、あくまで私の場合は「NPB全体の盛り上がり」が理想にあるため、人によってはCSの是非は異なるでしょう。
まとめ
- CSのメリットは消化試合減や下位チーム救済など様々
- 現行のCS(日本球界の構造)では欠陥部分やデメリットもある
- 何をNPBに求めるかで、CS是非の意見は異なる
私個人の感覚ですが、CS導入移行のプロ野球の方がシーズン後半の盛り上がりは大きいように感じます。
もちろんCS導入だけが盛り上がりの要因ではなく、様々な要素が絡み合っているでしょう。
ただ、CSで生まれた弊害よりも恩恵の方がトータルで見ると大きいように感じます。
毎年優勝したチームのファンにとっては割り切れなさが残るかもしれませんが、NPB全体の発展のためにも、CSが存続・改善されることを願っています。
もちろんあくまで私の理想は「NPB全体の盛り上がり」なので、CSに替わる案があれば、CSにこだわる必要はない思いますが...
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