バント&進塁打=チームプレイにはならない。
どうも、はろーぐっばい(@jubenonz)です。
野球の試合を観ていると、送りバントや進塁打を打った選手に対して、「自己犠牲」の素晴らしい選手という賛辞が送られます。
確かに自分はアウトになっても良いからランナーを進める行為は、チームスポーツならではの賞賛されるべきプレイ。
しかし、バントや進塁打の全てが褒められたプレイではありません。
サインが出ているなら仕方ありませんが、自らの判断で行った進塁打が全て褒められるべきものではないのです。
私が尊敬する監督の一人である岡田彰布氏は、著書で「責任逃れの送りバント」について語っています。
自分の野球観に影響を与えてくれた監督の一人が元阪神・オリックス監督の岡田さん。
— はろーぐっばい@パワプロ&野球youtuber (@jubenonz) 2018年6月15日
色々勉強になることはあるけど、1番印象深いのは「責任逃れの送りバント」って言葉。
自主的に犠打する選手の中には打てのサインなのに、批判されたくないからバントする選手もいる。
進塁打も含めて大事な考え方。
一見自己犠牲に見える犠打や進塁打の中には、自分が責められたくないがゆえに行う利己的なプレイもあります。
本日は自らの判断で行うバント&進塁打の是非について語っていきます。
責任逃れの犠牲バントと進塁打はいらない
打てなくて批判されるのを恐れる選手もいる
無死1塁や2塁の局面では、送りバントや進塁打の戦術が用いられることもあります。
仮に1死与えても、1死2塁や3塁のチャンスを作れれば、得点確率は高まるからです。
強いチームや頭の良い選手になると、ベンチから指示が出ていなくても、自らの意思で犠打や進塁打を打つケースがあります。
しかし、それらのプレイが全て賞賛されるものではありません。
中に併殺を打ったり、チャンスで打てないことを批判されたくないがゆえに、逃げの犠打や進塁打を選ぶ選手もいます。
阪神やオリックスで長年コーチと監督をされていた岡田監督は、弱気になった選手に対しては厳しく指導していたそうです。
「【年間4得点しか変化なし!?】得点期待値からみる野球の盗塁のメリット・デメリット」の記事でも紹介した通り、野球においてはアウトカウントが少なく、ランナーが塁に入ればいるほど、得点期待値が高まるスポーツです。
ですので、出来ることなら犠打や進塁打でなく、ヒッティングでランナーが貯まるもしくは返す方がチームへの貢献度は高いのです。
もちろん投手や本当に打撃が苦手な選手が打席に立っているなら良いのですが、十分打力がある選手が安易に犠打や進塁打に流れるのは、チームとしてもあまり良いプレイとは言えません。
前述した岡田監督は元々バントを好まない監督ではありますが、それ以上に選手の能力を信じた上で、打って欲しいとの願望があったようです。
基本的には選手にバントはさせず、打たせるね。理由は現役時代の経験。守っている時に、無死一塁で相手がバントしてくれるほど楽なものはない。アウトカウントが増えるからね。これは相手も同じだから、相手が嫌がる場面でなければ、バントする必要はないんや。
ただ闇雲に打たせるんやないで。基本的には流れを変えたくないから打たせるわけで、ライト方向を狙わせたり、ヒットエンドランのサインを出したりする。まァ、赤星憲広(元阪神)のように併殺になりづらい選手が打席に立てば、好きに打たせることもあるけどな。
あと3番、4番にはバントを命じたことはない。そのためにクリーンアップに置いとるんやからね。これも現役時代の話やけど、オレはバントのサインを出されてムッとしたことがあるのよ。日本一になった1985年の巨人戦や。
「プロ野球に革命をもたらした『平成1・2番コンビ』ベスト10 送りバントだけが仕事じゃない!」の記事でも紹介した、1番マートン、2番平野恵一の時には、平野選手が自主的にバントするたびに「打っていいから!」と言ったそうです。
リーグ2位の打率.350を誇りながら、球団新記録となる59犠打も挙げてしまったことを、著書で嘆かれていました。
打てる力がある選手が責任逃れしているように見えていたそうです。
繋ぎの2番打者のサードゴロ併殺を良しとした名将落合博満
今日は井端のサードゴロが一番の収穫といえば、収穫だな。意味? ああ、君たちはわからなくて結構
子供のころに上記の言葉を聞いた時は、ハッキリ言って意味がわかりませんでした。
本来進塁打を打つべき2番の井端選手が、あろうことか引っ張ってサードゴロ併殺。
一般的には怒られてもおかしくない結果です。
しかし、落合監督の中で大満足の収穫。
理由は右打ちを意識し過ぎる井端選手が、引っ張ってチャンスを拡げられるようになりそうだったからです。
2004年の監督就任後、落合は井端に「おれが右打ちしろというサインを出さない限り、右打ちはするな。チャンスのときは4番になったつもりでいけ」という指示を送る。
当時井端はキャリア7年目。既に実績を残していたからこそ右打ちの癖がなかなか抜けなかった。そして右方向へ打球を放つと、それがヒットであってもアウトであってもベンチに戻るたび、「なんであっちに打ったんだ?」と監督から問いつめられたという。
そんな試行錯誤を繰り返す中、サードゴロで凡退した井端に向けられたのが上述したコメント。右打ちを意識するあまりインコースでも右方向へ打っていた井端が、ようやく左方向に打つことができた「サードゴロ」だったからだ。
落合監督の真意について、井端自身が次のように述べている。
「右打ちしなければならない条件のある場面では、そういう2番の仕事をしなければいけない。でも、それ以外の場面だったら、左へ引っ張ったほうがいいこともある。チャンスも膨らむし、点も入る」
「それまでは右へ打たなきゃという意識が強過ぎたあまり、インコースの球でも右方向へ打とうとしていました。そういう癖がまだなかなか抜けないでいた時期に、あの打席ではセカンドゴロではなくサードゴロを打つことができた。(略)落合さんに教えられた打撃ができるようになっていたわけですね。こういうことを続けて行けば、自分もチームも、次の段階へ進んでいける」
井端選手は打率3割も記録できるほどの巧打者。
落合監督は中日の監督時代、何度も3番井端をテストするほど、井端選手の打力を高く買っていました。
ここは絶対1点欲しい場面では進塁打もありですが、出来るなら引っ張ってヒットを打ってチャンスを拡大して欲しいところ。
そうした右打ちを警戒してバッテリーがインコースを攻めれば引っ張り、引っ張りを警戒していれば右打ち。
といった具合に、自分のヒットコースを拡げるためにも、井端選手が引っ張れるようになったことが、落合監督には嬉しいことだったのです。
責任逃れをしているのは選手だけでなく監督も
監督の中には、批判が怖くて犠打や進塁打を要求する人もいます。
監督がファンやフロント、マスコミに怒られたくなくて采配をふるっていては、勝てる試合も勝てません。
伸びる選手も伸びません。
選手の成長のために、監督が選手が出した結果の責任を全て受け入れる。
これこそが選手とチームの成長には必要です。
選手の中には、本当は打った方がいいと思っていても、監督やファン、チームメイトから批判されたくなくて、進塁打や犠打を打つ選手もいます。
それではチームが強くならないので、責任逃れをさせないチーム作りと意識合わせが、強いチーム作りには必要なのです。
2017年の夏の甲子園を制した花咲徳栄高校の岩井監督と千丸キャプテンには、厚い信頼関係がありました。
高校野球にしては珍しく無死2塁で、広く開いた三遊間を2番打者が打って狙ったりなど、高いレベルで野球をしていたのが非常に印象的です。
もし無死2塁で二番打者がヒッティングして、ランナーを進塁できなければ、選手と監督は批判されるかもしれません。
しかし、岩井監督と千丸キャプテンの中には、そうした批判への恐れはなかったように感じました。
高校野球に限らず、もっと積極的な野球をするチームが増えて欲しいです。
「お前が決めてこい!責任は俺がとる」という姿勢を持った監督がいなくては、責任逃れ体質のチームが出来上がってしまうでしょう。
”責任逃れ”の線引きは非常に曖昧ですが、指導者の役割とは選手を安きに逃がさないことではないでしょうか。
バントを全否定するわけではない 犠牲バントが有効になるシーンもある
責任逃れ、責任逃れというと、何だか進塁打戦術を否定しているように感じる人もいるでしょう。
私は決して犠打や進塁打を否定しているわけではありません。
時にバントが必要なケースは生まれてきます。
8、9回で同点もしくは1点ビハインドの状況で無死2塁なら当然進塁打が求められますし、投手が無死1塁で打席に立てばもちろん犠打が有効な作戦になります。
下記は無死1塁の「作戦別の走者進塁率・走者生還率・得点期待値」です。
転載:日本でも「脱バント」が浸透するか 日米野球比較5 :日本経済新聞
上記の数字だと、送りバントをしようがヒッティングをしようが生還率はほぼ一緒。
100回やったら一回差が出るかどうかのレベルです。
ならばヒッティングだけで良いのではと言う人もいますが、バントがあるからヒッティングが活きるケースもあります。
バントが存在するからこそ、ヒッティングが生きてくる面もあると補足した。
「バント企画後のヒッティングの得点期待値が一番高い。それは、シフトも敷いてくるし、相手が考えてくれるからだと思う。(大学で監督をしていて)バントをするのをやめたら、相手が余裕を持って守っていた。打ってくるだろうということで下がって守られると、強攻したらゲッツーになったりする。(相手が)バントシフトを敷いたところで打つから、面白い」
普段犠打や進塁打を打ってくる選手が、ここぞで強攻策をとることで、チャンスをものに出来る確率が高まるかもしれません。
野球には数多くの戦術があります。
その数ある戦術を上手く活かしながら、勝つための最適な戦術を選ぶ。
勝つことよりも批判されないことを優先し始めたら、チームは瓦解するでしょう。
まとめ
- 打力のある選手の犠打&進塁打は責任逃れの時もある
- 責任逃れさせない監督の手腕も大切
- 監督が責任逃れしてはいけない
- もちろん犠打&進塁打も時には有効な戦術
人間がプレイする、観戦する以上、必ず心理的な要素が絡んできます。
「怒られたくない」、「批判されたくない」という弱気な姿勢が、チームの勝利と選手の成長を遠ざけてしまう可能性もあるのです。
主力選手には背負うべき責任があります。
ただ、過剰に責任を押しつけても潰れる要因になりかねません。
監督、ファン、フロント、チームメイトなどが寛容な心を持って臨むことが、責任逃れをしないチーム作りに繋がるのではないでしょうか。
それでは、さようなら!
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