どうも、はろーぐっばい(@jubenonz)です。
もう戦術は出尽くしていたと思われていた野球界に、新たな戦術が誕生しました。
それは、オープナーと呼ばれる本来リリーフの投手が初回限定で先発し、本来先発投手が2回から投げるというものです。
2018年5月19日、20日。
MLBのアメリカンリーグに所属するレイズは、本来リリーバーのロモをスターターとして起用。
メジャーデビューから588試合連続リリーフ登板が続いていたベテラン投手が、”初回”からワンポイントとして登板したのです。
本来であれば、2回から登板した左腕ヤーブローが先発を務める予定だった。キャッシュ監督は、ロモを先発起用した理由について「この考えに至ったのは至極当然。(エンゼルス打線は)右打者に偏っていて、何人かは固定されている。ロモが1、2イニングを投げれば、そこからヤーブローが投げることができる」とMLB公式サイトにコメント。左投げのヤーブローが、右打者偏重のエンゼルス打線に初回に捕まるのを防ぐため、ロモを起用したと説明している。
これからのこの奇襲ともいえる作戦の意図とメリット、日本でも採用可能なのかなどを解説します。
- オープナー戦術のメリットと難しい点
- 日本で導入が難しいのは日米で異なる打線の構成と完投文化
- 初回救援先発を導入しづらい点
- パワプロ2018で巨人野上投手を使って実践してみた検証動画
- まとめ
- 英語関連記事
オープナー戦術のメリットと難しい点
メリットは初回の上位打線に必ず救援投手をぶつけられることと先発投手の負担減
主だったメリットは二点です。
- 上位打線に力のあるリリーバーを投げさせられる
- 先発投手は下位打線から登板するので、負担が少し減る
上位打線に力のあるリリーバーを投げさせられる
9イニングを戦うプロの野球の場合、1人の打者に回ってくる打席数は基本的には4打席。
中でも気をつけるべきは上位打線との対戦。
逆算していくと、上位打線の4打席のうち、1打席はストッパーorセットアッパーが対戦します(先発が完投しないケースを想定)。
つまり、守る側としてはそれ以外の上位打線との3打席をいかに抑えられるかが、勝利に近づくためにはカギになるのです。
通常は先発投手が3打席対戦しますが、考えてみれば長いイニングを投げつつ、上位打線と対戦するのは負担が大きく、難しいもの。
どんな投手でも立ち上がりは不安定なものですので、初回から上位打線と対戦すれば、自ずと打たれる可能性が増します。
また、終盤疲れが見え始める6~7回に上位打線と対戦するのも、打たれる可能性が高まるでしょう。
ならばいっそ、初回に力のあるリリーバーを起用して、相手の上位打線を封じ込めようというのが、この戦術の狙いです。
野球の9回のうち、どの打順が打席に立つのかが必ずわかっているのは初回の1~3番のみ。
2回以降はどの打順にいつ打席が回ってくるのかわかりません。
そうなるとリリーバーも調整が大変です。
しかし、必ず初回に投げるならリリーバーの肩を作る負担も減らせますし、2回から投げるとわかっていれば、先発投手もある程度調整はしやすいです。
投手陣の調整やブルペンでの負担などを考慮しても、メリットがあると言えます。
先発投手は下位打線から登板するので、負担が少し減る
本来先発の投手は2回から登板します。
これはNPBの数字ですが、平均のWHIP(投手が1イニングにランナーを出す平均の数)はだいたい1.2~1.3。
ですので、確率的には5番打者以降から登板するケースが増えます。
そのため、2回は下位打線と対戦する機会が多くなるのです。
先発投手はスタミナを温存しつつ、初回から上位打線と対戦しなければいけないので、初回に失点するケースが多くあります。
その点、下位打線からスタートなら立ち上がりが不安定でも、抑えられる確率が高くなるでしょう。
初回ならランナーを出すと得点圏に走者を置いてクリーンナップですが、2回ならランナーを出しても下位打線との対戦。
先発がスムーズに立ち上がるためにも、2回先発は一定の効果が期待されます。
実際2015年のプロ野球では、初回に得点が入る傾向があったので、上位打線相手にリリーフが登板するのは面白い戦術かもしれません。
転載:https://www.tbsradio.jp/kanzensokuhou/2015/10/post-20.html
全体的に1回、6回、8回の得点確率が高いことがわかります。
※2番川端、3番山田、4番畠山のヤクルトは初回得点確率が凄いですね.;.
日本で導入が難しいのは日米で異なる打線の構成と完投文化
一見面白い戦術なので日本でも採用して欲しいものですが、日本ではあまり機能しない可能性があります。
色々理由はありますが、一番は日米で異なる打線の構成です。
「セイバーメトリクスから見る最高の打順の組み方 2番強打者論は最適なのか」の記事でも紹介しましたが、近年のメジャーリーガーは2番強打者。
”2番強打者”の本懐は、良い打者(出塁率や長打率が高い)により多く打席を立たせようというものです。
そのため、2と3を中心に1~4番までにチームのスラッガーを固める傾向にあります。
その一方で、日本の野球界では打線の重心が後ろになる3~7番にチームのスラッガーを集める傾向が高いです。
「【野球初心者向け】1~9番打者の打順の役割とセオリー的な決め方【セイバー、適正】」の記事でも解説しましたが、日本では1、2番(特に2番)に出塁率の低い選手を配置することがセオリーとされています。
そのため、先発投手が2回から登板した場合、一番強力な打線からスタートする可能性があるのです。
もちろんチームによって打順は異なるので、全てのチームとの対戦で効果がないとは言えません。
ただ、MLBと比較すると、NPBの方が2回先発を採用しやすい相手打線が少ない傾向にあります。
あとは投手の意識の問題ですね。
最近では投手の分業制が進んできましたが、まだまだ完投信仰は根強いです。
先発投手の中には、完投したい、完投しなければならないと考えている投手もいるので、メンタルケアが必要になります。
基本的には先発5、6番手が登板する際の戦術ではありますが、先発投手のプライドを傷つけてしまうと、本来の能力を発揮できない事態になりかねません。
初回救援先発を導入しづらい点
相手の上位打線が固定でなければ採用しにくい
そもそも論ですが、相手打線によっては採用しづらいチームもあります。
例えば2018年の日本プロ野球なら、広島東洋カープの「田中、菊池、丸」や埼玉西武ライオンズの「秋山、源田、浅村、山川」のように、相手先発の右左関係なく不動のオーダーで構えるチームがいます。
上位打線が固定されているチーム相手なら、予告先発で左の変則投手が投げるとわかっていても打順を変えてこないでしょう。
しかし、もし上位打線が不動ではなく、猫の目打線で日替わりの場合は、効果が薄い(むしろ危険)です。
左の変則投手を先発させたのに、左キラーの右打者を上位に並べられると逆効果。
2018年のプロ野球では両リーグともに予告先発制度なので、初回救援を採用できる相手チームは限られるでしょう。
リリーフが豊富なチームでないとそもそも成り立たない
わざわざ上位打線と対戦するわけですから、当然初回救援投手には一定の力量が求められます。
初回にクローザーやセットアッパーを起用するのはさすがに愚策なので、基本的には中継ぎ陣の中でも、3番手以降の投手が投げることになります。
しかしはたして、中継ぎの3番手以降でしっかり上位打線を抑えられる投手を有するチームがどれだけいるでしょうか。
クローザーとセットアッパーを整備するだけでも大変なのに、初回に救援投手を投げさせられる余裕を持ったチームは少ないです。
2017年のソフトバンクホークスのように、8回岩崎、9回サファテは固定。
そのうえ、モイネロ、森、嘉弥真、五十嵐と、他球団ならセットアッパー級の投手を何枚も揃えているチームなら出来る戦術。
リリーフ陣の層が薄いチームでは採用しにくい戦術なので、実際に導入できる球団は少ないでしょう。
パワプロ2018で巨人野上投手を使って実践してみた検証動画
はたしてこの新戦術は効果があるのか。
野球ゲーム・パワプロを使って検証してみましたので、是非ご覧になってください。
初回上原(リリーフ)、2回から野上(先発投手)登板で成績が良化するのか巨人野上で検証【パワプロ2018】
まとめ
- 初回の上位打線に力のあるリリーバーさせて試合の流れを掴むための戦術
- 先発投手が上位打線と対戦する機会を減らせる
- 相手打線の構成や自軍のリリーフ陣の層次第では導入しづらい
弱者の戦略のようにみえて、実際は強者の戦術という気がします。
リリーフ陣は豊富だけど、先発の層が薄いチームに是非試して欲しいです。
阪神あたりがやってくれると面白いのですが...
日本でも見られる日を心待ちにしてしています。
それでは、さようなら!
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