どうも、はろーぐっばい(@jubenonz)です。
野球初心者向けに打順を解説するシリーズ。
今回はジグザグ打線編です。
野球でオーダーを組むときについつい有効だと思って意識しがちですが、 果たして本当に有効なのか。
結論から言えば、ジグザグ打線は無駄ではないがそこまでこだわる必要はありません。
ジグザグ打線のメリットとデメリットを考察しながら、有効性を解説します。
ジグザグ打線と左右病とは
右打者と左打者が交互に並ぶ打線のことを、ジグザグ打線といいます。
【ジグザグ打線の例】
- 左
- 右
- 左
- 右
- 左
- 右
- 左
- 右
- 左
スイッチヒッターが入った場合は、左右どちらとカウントしても良いです。
スイッチヒッターは左右両打席に立てるので、ジグザグ打線を組みやすいです。
完全なジグザグ打線ではありませんが、プロ野球では下記のようになるべく左と右が続かない打線を組む傾向にあります。
1 (中) 左 真中 満 .312(449-140) 7 36
2 (遊) 右 宮本 慎也 .270(477-129) 1 17
3 (右) 左 稲葉 篤紀 .311(527-164) 25 90
4 (一) 左 ペタジーニ .322(463-149) 39 127
5 (捕) 右 古田 敦也 .324(441-143) 15 66
6 (三) 左 岩村 明憲 .287(520-149) 18 81
7 (左) 右 ラミレス .280(510-143) 29 88
8 (二) 右 土橋 勝征 .249(442-110) 2 31
一見美しいジグザグ打線ですが、その一方で異常に投手と打者の左右にこだわる監督のことを、”左右病”とも称します。
調子の良い左打者に打席が回ってきたのに、相手投手が左投手に代わったので右打者(調子や実績は劣る)を出す采配などに対して、左右病という批判が時に巻き起こることもしばしばです。
ジグザグ打線のメリットとデメリット
ジグザグ打線の有用性を結論付ける前に、まずはメリットとデメリットを解説します。
メリット
- 相手チームに継投を悩ませる
- ワンポイント投手の投球機会を減らせる
- 投げづらく感じる投手もいる
- なんとなく打順の並びが美しい
大きく分けると、継投面と相手投手の感覚面の2つの点でメリットがあります。
継投のタイミングを悩ませられる
左右が交互に並ぶ打線の場合、相手チームの監督とベンチは継投のタイミングが難しいです。
仮に右投手が先発した際に、「あと一人次の右投手を抑えるまで投げさせたい」と欲をかいたがゆえに、その右投手が前の左打者に痛打されるケースがあります。
下記のようなケースで右投手がピンチを迎えると、ジグザグ打線でなければスパッと継投できますが、ジグザグ打線だと継投の判断が難しいです。
【ジグザグ打線の例】
- 左
- 右
- 左
- 右
- 左
- 右
- 左←ここで右投手がピンチ
- 右
- 左
【非ジグザグ打線の例】
- 左←ここで右投手がピンチ
- 左
- 左
- 右
- 左
- 右
- 右
- 右
- 左
また、左打者に強いワンポイントリリーフがいる場合、左打者が並ぶと連続して投球されるので、自チームの左打者を抑えこまれやすくなります。
これがジグザグ打線なら、左打者一人に投げたところで降板することが多いです。
その結果、自軍の打者がワンポイントリリーフと対戦する機会を減らせます。
相手ベンチが欲を出して、「右打者にも投げさせて次の左打者まで投げさせたい」と思って続投したら右打者に痛打を浴びるというケースも。
このように、ジグザグ打線を組むことで相手チームの継投を難しくさせ、自チームの打者の負担を軽くすることができるのです。
投げづらいと感じる投手もいる
投手個々の感覚で違いはでますが、ジグザグ打線は視覚と感覚の面で投げづらいというものがあります。
私の友人で甲子園に投手で出場した人も、投げづらいと言っていました。
連続で同じ利き手の打者が続くと、目標物が同じところにあるので、投げやすいそうです。
しかし、左右が交互に続くと目標物の打者が変わるので、感覚的に投げづらくなります。
プロ野球の投手レベルになるとその効果はわかりませんが、投手の中には感覚的に投げづらさを覚える人もいるようです。
なんとなく見栄えがいい
メリットに含めるかは微妙なところですが、ジグザグ打線はなんとなく見栄えが良いです。
左右交互に打者が続くと、なんとなくスッキリします。
これは個人差がありますし、戦術的なメリットはほぼないと言って良いでしょう。
デメリット
- 投手登録数が少ないカテゴリ(小・中学野球など)では意味がない
- 継投しやすいと感じる監督もいる
- 左対左、右対右は必ずしも投手有利ではない
これまた主に継投面ですが、必ずしもジグザグ打線が有効ではないケースもあります。
投手登録数が少ないカテゴリ(小・中学野球など)では意味がない
継投が前提で、投手が7~8人近く控えているプロ野球。
対して、アマチュア野球では投手の数は多くて4~5人。
大半のチームはエース級投手が中心です。
ですので、チームやカテゴリーによっては相手打線の左右が継投判断のポイントにならないことがケースもあります。
特に小・中学野球などのカテゴリでは、その傾向が顕著。
メリット面が継投に多かったように、継投が絡まないカテゴリにおいてはあまり意味を成しません。
継投しやすく感じる監督もいる
これはかつての名捕手で、後に監督も務められた古田敦也さんが解説で言っていたのですが、継投しやすいと感じる人もいます。
仮にジグザグ打線相手に、右投手が左打者相手にピンチの場面を迎えたとします。
古田さんは「無理に勝負せずに次の右打者と勝負をすればいいので割り切りやすい」と仰っていました。
【ジグザグ打線の例】
- 左
- 右
- 左
- 右
- 左←ここで右投手がピンチ
- 右
- 左
- 右
- 左
満塁の局面ではさすがに敬遠するのは難しいですが、それ以外の局面では有効な手段ではあります。
継投面で相手に揺さぶりをかけられないようだと、かえって相手に勝負しやすい状況を作りかねない打線なのです。
左対左、右対右は必ずしも投手有利ではない
傾向的には、左対左と右対右は投手有利とされます。
しかし、中には左打者が苦手な左投手や 右投手が得意な右打者もいます。
ですので、左対左と右対右だけが継投の判断材料にはならないのです。
少し古いデータですが、2016年の対左投手打率ランキングでは、左打者の秋山翔吾選手や坂口智隆選手がランクインしています。
※規定打席到達者のみ
※△は左打者
【パ・リーグ】
1位 .361 安達了一(オリックス)
打 率:.273(403-110)
左打率:.361(97-35)
右打率:.245(306-75)
2位 .329 秋山翔吾(西武)△
打 率:.296(578-171)
左打率:.329(149-49)
右打率:.284(429-122)
3位 .326 陽岱鋼(日本ハム)
打 率:.293(495-145)
左打率:.326(135-44)
右打率:.281(360-101)
中略
【セ・リーグ】
1位 .358 山田哲人(ヤクルト)
打 率:.304(481-146)
左打率:.358(151-54)
右打率:.279(330-92)
2位 .351 鈴木誠也(広島)
打 率:.335(466-156)
左打率:.351(174-61)
右打率:.325(292-95)
3位 .3354 坂口智隆(ヤクルト)△
打 率:.295(526-155)
左打率:.3354(161-54)
右打率:.277(365-101)
極端な話ですが、自チームの全右打者は右投手が得意、全左打者は左投手が得意であれば、ジグザグ打線はあまりメリットがありません。
これは投手にも同様のことが言え、チェンジアップ系を得意とする左投手などは、右打者より左打者を苦手とする傾向にあります。
例:中日・山本昌、巨人:杉内俊哉、横浜DeNA・石田健大など
データの少ないアマチュアでは難しいかもしれませんが、プロ野球であれば左右の対戦成績はハッキリとデータが出ます。
ですので、一般的な左右論ではなく、個々の選手の左右の相性を考慮して打順形成したり、継投する必要があるのです。
結論:ジグザグ打線は意識し過ぎる必要はない
継投面や人間の感覚部分で多少のメリットはありますが、大きなメリットは感じません。
中にはジグザグ打線を意識し過ぎて、打力のある選手の打順を下げてしまう監督もいます。
【ジグザグ打線にこだわり過ぎた例】
- 左 .312
- 右 .250
- 左 .334
- 右 .278
- 左 .305
- 右 .251
- 左 .287
- 右 .230
- 左 .267
上記は打率だけで見た例なので、実際は長打力や走力で打順の最適解は異なります。
ただ、あまりにジグザグにこだわり過ぎた結果、実力のある選手に打席が回りづらくなる、打線の流れが悪くなるのは本末転倒です。
「セイバーメトリクスから見る最高の打順の組み方 2番強打者論は最適なのか」や「【野球初心者向け】1~9番打者の打順の役割とセオリー的な決め方【セイバー、適正】」でもお話した点を考慮しながら、ベストオーダーを模索するのが最善の策。
ジグザグ打線というのはあくまで戦術の一つ。
打線を組む上で最優先するポイントではないので、考慮する一つの点という程度にとどめておきましょう。
まとめ
- ジグザグ打線は継投面で効果が期待される
- 相手投手や捕手、監督によっては気にならない人もいる
- 優先すべきは、個の能力>打順の巡り>ジグザグ打線の形成
ジグザグ打線は見栄えがいいのですが、有効性は少ないです。
あくまで作戦の一つでしかなく、打順を決める上で枝葉の部分でしかありません。
「策士策に溺れる」にならぬよう、最適なオーダーを組みましょう。
野球の打順に興味がある方は「【初心者向け】野球の打順の決め方記事まとめ【セイバー、戦術、役割、ジグザグ】」の記事も参考にしてください。
それでは、さようなら!
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