野球の打順の決め方は面白い。何故なら正解がないから。
どうも、はろーぐっばい(@jubenonz)です。
先日YouTubeでゲーム実況をしていたところ、リスナーの方と野球の打順の組み方で意見が分かれました。
[パワプロ2018]2020年東京オリンピックで金メダルを目指す!代表選考&グループリーグ編 #8[ペナント]
※打順の議論は1:17:00頃から
内容としては、「左のクラッチヒッターで俊足巧打の広島安部選手を7番と9番のどちらに起用するのか」です。
※「パワプロ2018」の2020年の安部選手の能力はミート&走力Bで、チャンスと盗塁もB。
私はポイントゲッターの役割を期待して7番派なのですが、リスナーさんの中には9番安部派の方も。
どちらにも良い面と悪い面があるので悩ましいところ。
ライブ配信終了後にも、果たして自分の打順の組み方は最適解だったのかを再考してみました。
野球ではチームで一番打力の低い選手を8番に置くか、9番に置くかで意見が分かれがち。
そこで今回は野球の打順を組む際に、8と9番打者の決め方をどうすればよいかについてお話します。
- セイバーメトリクスに基づく打順の決め方が私の基本方針
- 8と9番打者(下位打線)の決め方のセオリーと適正
- 9番に俊足の選手を置く戦術的なメリットとデメリット
- 9番先頭打者と8番得点圏打席の可能性はほぼ25%
- 重要なのはチーム内で最適な打順を組むこと
- まとめ
- 野球関連記事
- youtubeチャンネルのご紹介とお願い
セイバーメトリクスに基づく打順の決め方が私の基本方針
以前「セイバーメトリクスから見る最高の打順の組み方 2番強打者論は最適なのか」の記事でお話した打順の組み方が、私の中では基本的なベースになっています。
第一群:出塁率に優れた選手を1、2番に起用。長打率に優れた選手を4番に起用。
第二群:3、5番
第三群:残った選手の中から、6、7、8、9番の順で打力の高い選手を配置する
- 打てない選手に打席をまわさない
- 打てる選手を固める
- 打席に入ったときの平均的な走者数・アウトカウントを状況にいれる
打順を組むにあたって一番忘れてはいけないのが、自チーム内の基準で最適な打順を考えることです。
人が行う以上、心理状態が左右するだけに理論通りにはいかないのです。
答えは1つではありませんが、上記の重要ポイントを頭に置いておいて頂けると幸いです。
セイバーメトリクスから見る最高の打順の組み方 2番強打者論は最適なのか
8と9番打者(下位打線)の決め方のセオリーと適正
下位打線と言われる7~9番に求めるられる役割は大きく分けると二つです。
- 上位打線(1~6番)が貯めたランナーを返すポイントゲッター
- 上位打線の前にランナーを貯めるチャンスメイカー
理想は両方をこなしてくれることですが、なかなかそうはいきません。
そんなことが出来る選手たちなら、上位打線を打っているので。
野球の性質上(守備の比重が大きい守備位置もあるため)、1~9番まで打てる選手を配置するのは難しいです。
そうすると、必然的に下位打線には打力が低い選手が配置される傾向にあります。
ですので、打順を決める際には、下位打線をいかに上手く機能させて上位打線に繋げるかがビックイニングを作る上で鍵になるのです。
そうした時によく用いられるセオリー的な打順の決め方は二つ。
- 9番に最弱打者を置く(プロ野球でDH制度がない場合は主に投手)
- 9番に走力の高い選手を置いて上位打線に繋ぐ
この考えのどちらを選択するかが、8番と9番打者のどちらに最弱打者を置くかの議論の焦点になりがちです。
9番に俊足の選手を置く戦術的なメリットとデメリット
9番に出塁率の高い俊足のランナーを配置するメリットは下記の通り。
【9番俊足のメリット】
- 打力の高い上位打線の前にランナーを貯められる
- 器用な打者が多い1、2番打者と連携した攻撃を仕掛けられる(エンドランなど)
- 盗塁やエンドランを警戒してバッテリーが打者に集中できなくなる状況を作れる
実際野球では9番打者チャンスを作って、上位打線に回すことで大量点を生むことがあります。
元々打力の低い下位打線でチャンスを潰すよりも、いっそのこと俊足巧打の選手を9番に置いて上位で返す方が効率が良いかもしれません。
ただ、当然デメリットもあります。
【9番俊足のデメリット】
- そもそも打力が低い選手が多い
- 上位の前で盗塁を仕掛けるのはリスクも伴う(盗塁死、カウント悪化など)
デメリットという表現は適当ではないかもしれませんが、そもそも出塁率の高い選手が下位打線を打てるほど層の厚いチームはそうそうありません。
そして仮に塁に出られたとして、上位打線の前で走ることはそれなりにリスクが伴います。
一つは盗塁死のリスク。
野球のルールの性質上、アウトにならないことは非常に重要(時間も得点制限もなく攻撃できるので)です。
ましてや元々打力の高い上位打線の前ですから、そこでアウトになることはチームにとって損失。
得点期待値の観点からも、盗塁はハイリスク・ローリターンの戦術。
あまり盗塁という戦術を有効と見過ぎないことも大切です。
【年間4得点しか変化なし!?】得点期待値からみる野球の盗塁のメリット・デメリット
また、仮に盗塁成功したとして、打者のカウントは悪くなる可能性が高いです。
野球の統計的に、打者はストライクカウントが増えるとそれだけ打率が下がる傾向にあります。
この表の意味するところとしては、平均的な打者(というのがいたとして)が打席に入った際もっている打率の期待値は.253である。それが、0ボール1ストライクになると.225に下がり、さらにストライクが増え0ボール2ストライクになると打率の期待値は.169まで下がる。
逆にボールが先行していって2ボール0ストライクになれば打率の期待値は.288に上がり、OPSは.971は強打者のそれである。
特にボール先行カウントになるとHR%、BABIP、HR/FB%が上昇し、打者側が強くスイングしやすいカウントであることがうかがえる。
もちろん初球から盗塁をして、更にカウントもボールということもあります。
盗塁を警戒するあまりバッテリーがウエストしてボールが増えることもあるでしょう。
ただ、もちろんその逆に打者のカウントが悪化するリスクも伴います。
下記の記事は2017年シーズンのセ・パ両リーグ845盗塁企図をカウント別に分類したものです。
全盗塁企図の21.5%が初球カウントですが、裏を返せば80%近くは2球目以降に行われています。
つまりそれだけ打者のカウントが不利になっている状況を引き起こしてしまう可能性もあるのです。
中には日本ハム・西川、ヤクルト・山田哲人選手のように、ほぼ初球から盗塁企図して、かつ成功率が高い選手もいます。
しかし、彼らほど高い盗塁技術と出塁率を誇る選手を下位打線に置けるほど選手層が厚い打線は稀。
そう考える、9番打者で盗塁を仕掛けることを想定する場合、ある程度打者のカウントを悪くするリスクも頭に入れておいた方がいいです。
そしてここでもう一つ考慮するべきは、9番打者の次の1、2番打者のタイプも重要です。
打者の中にはカウントが不利な状況からでも仕事を出来るタイプがいます。
かつての中日の井端選手や、西武の栗山選手などの選球眼とカット技術、ミート力があるタイプ。
そうした巧打者タイプの選手が1、2番の場合は盗塁のために待球するのは打者への影響が少ないです。
ただ、巨人の坂本、西武の秋山のように長打力も期待できる選手の前で、長打率が低くなるカウントになりえる戦術(盗塁)をとるデメリットはつきまといます。
また、仮に盗塁死をすればせっかくの上位打線の前に貯めたランナーを失ってしまうリスクがあるのです。
7、8番に俊足の選手を置くメリットは盗塁の仕掛けやすさ(リスクをとりやすい)
私が7、8番に俊足選手を置くのが好きな理由に、盗塁やエンドランの仕掛けさがあります。
先ほど話した通り、上位打線の打席で盗塁失敗するのは非常に痛いプレイ。
しかし、下位打線の打席であればそこまでダメージは少ないです。
ゆえに盗塁が仕掛けやすくなります。
また、仮に8番打者が無死1塁で盗塁成功すれば、9番が送りバントや進塁打で繋げば、1死3塁の状況で上位打線に回すことも可能。
仮に足の遅い選手を8番に置いて、鈍足選手が1塁にいると仕掛けられる攻撃戦術が限られますし、進塁打の難易度もアップ。
チャンスメイクという観点で9番に俊足の選手を置く狙いはよくわかるのですが、個人的には8番俊足の方がチャンスメイクしやすい印象があります。
9番先頭打者と8番得点圏打席の可能性はほぼ25%
興味深いデータを一つご紹介すると、「9番打者が「無死走者なし」で打撃をする割合」と、「8番打者が「走者得点圏」で打撃をする割合」はほぼ25%と近い数字なのです。
チャンスメイクとしての9番なのか、ポイントゲッターとしての8番なのか。
どちらを優先するかは人それぞれですが、私はポイントゲッターとしての役割を優先すべきだと考えます。
どんなにチャンスを作っても、チャンスで打てなければ意味がありません。
優先順位:ポイントゲット>チャンスメイク
鶏が先か卵が先かのような議論になりますが、発生する確率が似たようなものなら私はチャンスで打てる確率を高めるべきだと考えます。
もちろん、チャンスメイクの場合は1死や2死で”出塁”(四死球など)すればよくて、ポイントゲットの場合はチャンスで”安打”を放たなければならない(満塁を除く)ので、多少難易度に差はあります。
平均的な打者の打率が.250であることを考えると、1試合にでる安打は4打数計算で1本。
その1本をチャンスメイクのために使うか、タイムリーのために使うか。
私ならやはり得点圏でのタイムリーを期待したいです。
中日の吉見一起投手も、投げていて嫌な打線は大島洋平選手やマートン選手のようなタイプが6番にいることと語っています。
投手目線で考えた時に、ランナーを出すこと以上に、得点圏で巧打者を迎える方が投げにくいのは明白。
塁に出しても返さなければ得点は入らないのですから、やはり「ポイントゲット>チャンスメイク」だと私は考えます。
ちなみに、2003年に切れ目のない打線で優勝したセパの両チームは、8番に打率3割の巧打者を配置して、上位打線の作ったチャンスを得点にしています。
- 村松 打率.324 6本 57打点 32盗塁(打率リーグ8位)
- 川崎 打率.294 2本 51打点 30盗塁
- 井口 打率.340 27本 109打点 42盗塁(盗塁王、打率リーグ4位)
- 松中 打率.324 30本 123打点(打点王、打率リーグ9位)
- 城島 打率.330 34本 119打点(MVP、打率リーグ6位)
- バルデス 打率.311 26本 104打点
- ズレータ 打率.266 13本 43打点
- 柴原 打率.333 4本 53打点(打率リーグ5位)
- 鳥越 打率.212 1本 25打点
(二)今岡誠 率.340(485-165) 12本 72打点
(中)赤星憲広 率.312(551-172) 1本 35打点
(左)金本知憲 率.289(532-154) 19本 77打点
(右)桧山進次郎 率.278(414-115) 16本 63打点
(一)アリアス 率.265(464-123) 38本 107打点
(三)片岡篤史 率.296(334-99) 12本 55打点
(捕)矢野輝弘 率.328(433-142) 14本 79打点
(遊)藤本敦士 率.301(402-121) 0本 36打点
上記の打線はジグザグ打線を意識した部分もあるので一概には言えませんが、ポイントゲッターが8番を打っています。
※ジグザグ打線について知りたい方は、「【野球の打順の役割】ジグザグ打線のメリットとデメリット【左右病監督に捧ぐ】」を参照してください。
重要なのはチーム内で最適な打順を組むこと
ここまでは8番と9番に焦点を当てて話してきましたが、一番重要なのはチーム全体で駒を上手く活かすことです。
また、大会のルールやチーム力などでも最適な打順は異なります。
DH制度の有無、1発勝負のトーナメントか長期戦のペナントか。
上位打線に強打者(高長打率)を置けるか、右左の並び。
特にDH制度がなく投手が打席に立つ場合、8番にポイントゲッターを配置しても、敬遠策で逃げられるケースもあるので、悩ましいところ。
逆にDH制度があるなら、8番にもある程度の打者を配置できるので、9番に俊足のつなぎ役を置いても良いです。
そもそも足が速かったり、出塁率が高い選手がいなければ9番に置くメリットは薄いですし、ポイントゲッタータイプでなければ8番に置いても効果はありません。
2017年から横浜DeNAベイスターズが「9番・倉本」を採用できるのも、6番にクラッチヒッターの戸柱、8番に入る先発投手に打撃が良い選手が多い(ウィーランド、今永、石田)から成り立っていました。
前述した上位打線の選手タイプも含めて、自チームにどんな選手がいるかによって打線の最適解は異なるのです。
点ではなく線で考えて、9人を無駄のない並びで打線を組めるのかが重要です。
【野球初心者向け】1~9番打者の打順の役割とセオリー的な決め方【セイバー、適正】
ちなみに、アメリカのメジャーリーグ屈指の名将・マドン監督が8番・投手を採用した理由は、若手選手を守るため。
「投手に8番を打たせることで、アディソンを『守る』のさ」
アディソンとは、1994年生まれで21歳のアディソン・ラッセル内野手のことである。現在は二塁手としてスタメンに名を連ねているが、本来は遊撃手だ。2012年のドラフト1巡目(全体11位)指名でアスレチックスに入団した。昨夏、中島裕之(現オリックス)のチームメイトだった時、真夏の緊急トレードでカブスに移籍した有望株である。今季の開幕は傘下のAAA級マイナーで迎えたが、4月21日にメジャー・デビューを果たした。
「新人のアディソンを、敬遠の四球から『守る』んだよ」とマドン監督。理路整然と話すその口ぶりは、まるで物分かりの悪い部下を教育する上司のようだ。
「新人に必要なのは経験だろう? クリス(・ブライアント三塁手。現在新人最多の12本塁打を記録)のように中軸を打ってるわけじゃないラッセルを起用する時、普通は下位打線を打たせようとする。だが、「6番」や「7番」を打たせるならともかく、新人を「8番」に起用することには一つの大きな落とし穴がある……敬遠だよ」
引用:8番打者に投手を置く、という奇策。MLBの策士の遊び心あふれる打順論。(2/4) - MLB - Number Web - ナンバー
敬遠されて貴重な打席機会を減らさない、四球覚悟の厳しい攻めをさせないなどの理由が主。
こうした1試合だけを見ない選手起用もあるので、野球の打順は奥が深いです。
まとめ
- そもそもの打順観は人それぞれ異なる
- 下位打線にチャンスメイクとポイントゲッターのどちらを求めるかを決める
- 9番先頭打者と8番得点圏打席の可能性はほぼ25%
- 大切なのは前後の繋がり、選手の適正と持ち駒の活用
- 打順に答えはないし、みんな違ってみんないい
答えは一つではないですし、最適解は状況によって異なります。
打順についてあれこれ議論するのも野球の楽しみ方の一つですので、これから革新的な野球観が登場することに期待です。
野球の打順に興味がある方は「【初心者向け】野球の打順の決め方記事まとめ【セイバー、戦術、役割、ジグザグ】」の記事も参考にしてください。
それでは、さようなら!
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