どうも、はろーぐっばい(@jubenonz)です。
本日は、【平成29年下半期】第158回芥川賞・直木賞の受賞作を800字で読書感想文します。
私は「おすすめ小説ランキング100」を書くほど読書が好きです。
ただ、最近はビジネス書や実用書ばかりに傾倒していて、小説はあまり読んでいません。
学生時代の本を読みあさった気持ちを取り戻す(懐かしむ)目的で、2018年1月16日に発表された第158回芥川賞・直木賞を読了。
せっかくならその読了感を形に残そうと、読書感想文をしたためることにしました。
童心に戻って、小学生の読書感想文と同様の文字数制限(800文字)も設けて、書評してみます。
目次
第158回芥川賞・直木賞と候補作品
芥川賞
- 石井遊佳:「百年泥」
- 若竹千佐子:「おらおらでひとりいぐも」
直木賞
- 門井慶喜:「銀河鉄道の父」
第158回芥川賞
- 石井遊佳(いしい・ゆうか)「百年泥」(新潮 11月号)
- 木村紅美(きむら・くみ)「雪子さんの足音」(群像 9月号)
- 前田司郎(まえだ・しろう)「愛が挟み撃ち」(文學界 12月号)
- 宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)「ディレイ・エフェクト」(たべるのがおそい vol.4)
- 若竹千佐子(わかたけ・ちさこ)「おらおらでひとりいぐも」(文藝 冬号)
第158回直木賞
- 彩瀬まる(あやせ・まる)「くちなし」(文藝春秋)
- 伊吹有喜(いぶき・ゆき)「彼方の友へ」(実業之日本社)
- 門井慶喜(かどい・よしのぶ)「銀河鉄道の父」(講談社)
- 澤田瞳子(さわだ・とうこ)「火定」(PHP研究所)
- 藤崎彩織(ふじさき・さおり)「ふたご」(文藝春秋)
第158回芥川賞・直木賞の読書感想文
小学生の読書感想文全国コンクールの文字数制限をもとに、今回は「本文800字以内」で書評します。
◇文字数については下記のとおりです。
・小学校低学年の部(1、2年生)本文 800字以内
・小学校中学年の部(3、4年生)本文1,200字以内
・小学校高学年の部(5、6年生)本文1,200字以内
・中学校の部 本文2,000字以内
・高等学校の部 本文2,000字以内◇句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
実際に賞を狙うわけでも、小学生の夏休みの宿題を助ける目的もないので、いつもの文体で雑感を述べるだけですが(笑)
芥川賞 石井遊佳:「百年泥」 787
私はチェンナイ生活三か月半にして、百年に一度の洪水に遭遇した。橋の下に逆巻く川の流れの泥から百年の記憶が蘇る! かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聴かれなかった歌。話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。流れゆくのは――あったかもしれない人生、群れみだれる人びと……。
インド在住の筆者が体験したインド生活記。
エッセイと小説の中間というか、混ぜ合わせたような独特の一冊。
一つ一つのエピソードは短く、一気に読み進められてしまいました。
闇金の取り立てを「見事な巻き舌で話す情熱的な男たちの訪問」と称する、ユーモアと表現の素晴らしさ。
普通の人なら一生に一度あるかないかという体験を、何度も体験した筆者の人生は人をひきつける魅力があります。
それでいて書き手の文体自体は非常に淡々としており、第三者目線。
物事を俯瞰して捉えられる方なのだなと、感心させられました。
そうした筆者の人生やインド滞在記の面白い部分を正とするなら、インドに蔓延する様々な諸問題を描いた部分が負。
インド人の親子関係というのは日本人から見ると独特で、そこには宗教やカースト制度などが複雑に入り組んだ古い慣習があるのです。
生まれ変わったら父の子か、父の父になって父に恩返しをしたい。
独立して稼いだお金は全て両親に預けて、結婚するまでお小遣い生活。
日本人にとっては異形に映るほどの、美しい(?)親子関係がある一方、持参金(ダウリー)を巡る結婚の暗部があるのもインド。
私は1ヶ月ではありますが、北インドを放浪したことがあります。
その時の経験や現地人との交流、そして放浪前後に読んだ書物で知ったインドの実態。
※詳しくは北インド旅行記まとめ 知っておいて欲しい基本事項10参照。
今回の芥川、直木賞は家族について書かれたものばかり。
家族や親子関係の難しさ、面倒さをいやというほど感じる一方で、日本人で生まれてよかった、グローバルな観点で見ればいかに恵まれているのかを実感させられもするのです。
タイトルの「泥」とはまさに言い得て妙で、色んなものがぐちゃぐちゃに混ざり合った人と人のぶつかり合いを、表するにはピッタリな言葉に思えます。
色んな意味で「純文学」のイメージをぶっ壊させられる、人生譚でした。
芥川賞 若竹千佐子:「おらおらでひとりいぐも」 800字
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。夫に死なれ、子どもとは疎遠。新たな「老いの境地」を描いた感動作!圧倒的自由!賑やかな孤独!63歳・史上最年長受賞、渾身のデビュー作!第54回文藝賞受賞作。
私の母と同年の63歳新人女性作家による処女作。
他人ごととは思えないほど、母と似たような思考で行動をとる主人公・ 桃子さん。
母が私に見せない内面の葛藤や、人生観が映し出されているような気がして、読了もしないうちに、母にすすめました。
人生の酸いも甘いも知り尽くした人だからこそたどり着ける境地。
まぁ人間の無力を思い知らされたわげで、この世は絶望づ壁がある。
したども一回それを認めでしまえば、これで案外楽でねがと、おらは思ったわけで、そこに至るまでの身の処し方を考えればいいどいうごどになる。
あれがらおらはすっかど、別の人になってまった。
悲しみは感動である。
感動の最たるものである。
悲しみがこさえる喜びというものがある。
その境地に立った人しかこの言葉に説得力を持たせることはできないと言ってもいい。
「老いてこそ人生」
少しだけ長生きする楽しみが増えました。
下記の考え方は、未亡人の方のみならず、漠然と従っていた規範がある時ふいになくなった人なら誰しもが感じる感覚なのではないでしょうか。
こうせねば、生きる上で桃子さんを支えていた規範は案外どうでもいいものに思えてきた。
現実の常識だの約束事を亭主がいて、守るべき世界があってはじめて通用する。
読者の人生観の琴線に触れる、金言の数々がこの本の魅力。
また、本作で欠かせないのが軽妙な東北弁。
「声に出して読みたい日本語」なる本がありますが、本書の東北弁は「音で聞きたい日本語」。
本当のアクセントやイントネーションで聴いてみて初めて、言の葉に込められた思いや意味を知れるのではと感じました。
日常会話も内なる思考の言葉も標準語で通してきたつもりだ。
なのに今、東北弁丸出しの言葉が心の中に氾濫している。
私自身標準語と方言のバイリンガルなので、非常にこの感覚が理解できます。
地方出身で、上京経験がある人には是非読んで欲しい一冊。
直木賞 門井慶喜:「銀河鉄道の父」 797文字
宮沢賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、創作に情熱を注ぎ続けた。地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、このユニークな息子をいかに育て上げたのか。父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く、気鋭作家の意欲作。
小説家・宮沢賢治”になる前”の賢治を描いた作品。
主役は質屋の息子・賢治と、その父・政次郎。
幼少期の賢治の知的好奇心の対象、学校での立ち位置、青春期の心の揺れや将来の夢、そして青年期の父との本格的な対立。
偉大な小説家・宮沢賢治ではなく、一人の朴訥した田舎少年として描かれています。
私が感情移入できたのは、父・政次郎とのやり取り。
私自身、現在父とはうまくいっておらず、どこの田舎でも父と息子とは相容れないものだなと感じました。
父親が思う理想の人生と、子が描く理想のズレ。
言ってもわからぬ両者の平行線は、他人ごとのようには思えませんでした。
故に途中からは賢治への興味ではなく、父・政次郎への関心で読み進んでいたというのが正直なところ。
「共通の結論ないし認識に達することを目的として双方が積極的に発言する、いわゆる会話するようになったのは、小学校を卒業し...」と本文にあるように、父にとって子は自分の言うことを聞いておけば良い存在。
という明治の父親の価値観と親子関係。
そこには陰口を叩かれながらも、努力して質屋を大きくした父のプライドと意地が覗かされます。
その一方で、「父親になることがこんなに弱い人間になることと、若いころには夢にも思わなかった」や、「いっしょに成長するというのは、つまるところ、相手のなかに自分にないものを発見する、その連続なのかもしれなかった。」などの”弱い父”の内面も綴られていることも。
親子関係に悩んでいるに是非すすめたい、男の親子関係を精緻に描いた一冊です。
賢治と政次郎の親子関係がメインテーマではあるのですが、それ以外にも当時の日本の様子を詳細に描いているのも読んでいて面白かった部分。
19世紀後半~20世紀前半の怒涛の時代にあった、岩手の質屋が世間からどんな目で見られたのか、当時の進学することの意味、女性の扱い方。
当時の時代背景をちょっと覗き見する意味でも、この本は面白いです。
まとめ
なんて自分は読書感想文が下手なんだ...。
と自分の文章力や構成、語彙力に辟易とさせられました。
その一方で、自分の文字数制限の中で、自分の感想をまとめることの良さと面白さを実感。
読書感想文って良い試みだな、教育の一環として。
と、大人になってやる意味を理解できた気がします。
皆さんも一度童心に返って、書物に読み耽り、読書感想文に勤しんでみてはいかがでしょうか。
それでは、さようなら!
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