9回の試合終了の瞬間にマウンドに立っているのは気持ちがいい。
闘争心があって、自己主張が強い選手の多いプロ野球選手の中にあって、西武増田達至はどこか異質な性格をしている。
普段は飄々としており、セットアッパーやクローザーといったリリーフのポジションにこだわりはないと語る。
試合中も淡々とボールを投げ込み、打たれても抑えても大きく感情を現れにすることはない。
リリーフ投手は過酷なポジション。
打たれても抑えてもすぐに試合がやってくる。
そんな中で、常に切り替えて次の試合に臨める増田投手こそ天性のリリーフ投手といえる。
今日はそんな埼玉西武ライオンズの守護神、増田達至投手について語っていく。
- 増田達至投手とは
- 増田投手の球種 アマチュア時代から鍛えぬいたストレート
- 抑え向きの落ち込まない性格
- 同い年の親友であり、ライバル・高橋朋投手から受け取った抑えの座
- 救援失敗が目立つ2017年 試練の時が増田投手を襲う
- まとめ
増田達至投手とは
【基本プロフィール】
生年月日 1988年4月23日(29歳)
出身地 兵庫県洲本市
身長 180㎝
所属 埼玉西武ライオンズ
ポジション 投手(右投右打)
推定年俸 11,500万円(2017年)
経歴 柳学園高等学校→福井工業大学→NTT西日本→埼玉西武ライオンズ
柳学園高校時代は甲子園出場経験は無し。
福井工業大学進学後は先発として活躍した。
4年の春に9連勝してあと1勝したら神宮へというところで2連敗し、全国には一度も手が届かなかった。
社会人の名門NTT西日本では、1年目に先発、2年目からは抑えを任された。
第83回都市対抗野球大会、第38回社会人野球日本選手権大会など自身初となる全国の舞台を経験した。
2012年のプロ野球ドラフト会議で、東浜巨の交渉権を重複指名による抽選で外した埼玉西武ライオンズと、同様に森雄大を外した広島東洋カープにそれぞれ外れ1位で指名され、抽選の結果西武が交渉権を獲得。
契約金1億円プラス出来高5,000万円、推定年俸1,500万円で合意し、入団、背番号は「14」に決まった。
西武の新入団発表では異例の婚約者・高木麻友さん(現妻)を伴って出席して話題を呼んだ。
2人は年内に結婚の予定だが、晴れの席に同席した麻友さんは「体が資本なので栄養管理をしていきたい。現金は持たせず、クレジットカードの明細とかも出させようかと」と早くも賢妻ぶりを発揮。さらに「少しでも長く野球をやってほしいので、私がしっかりやります」と宣言した。これには増田も「(お金を)使う時はバッと使ってしまうので助かります」と言いつつ、終始頭が上がらなかった。
引用:現金は持たせず?西武ドラ1増田に“コーチ妻”「私がしっかりやります」― スポニチ Sponichi Annex 野球
プロ1年目の2013年は故障で出遅れ開幕2軍スタート。
6月にようやく1軍に昇格した。
主にリリーフ投手として起用され、打ち込まれるケースも目立ったが、好調時は14試合連続無失点を記録するなど大器の片りんを見せた。
9月26日の対東北楽天ゴールデンイーグルス戦では初先発し、4回1/3を投げ1失点で勝敗つかず。
2017年7月4日時点で先発したのはこの年の2試合のみ。
最終的には42試合に登板し、防御率3.76、5勝3敗5ホールドを記録した。
2014年は右肩痛により開幕2軍スタート。
44試合に登板し、防御率2.82、3勝4敗22ホールドを記録した。
勝ちパターンで起用されるケースが増え、成績をルーキイヤーを上回る数字を残した。
2015年は自身初の開幕1軍スタート。
開幕からセットアッパーとして大車輪の活躍をみせ、監督選抜によりオールスターゲームに初選出された。
9月8日、対オリックス・バファローズ戦では初セーブを記録。
最終的には72試合に登板し、防御率3.04、2勝4敗40ホールド3セーブを記録した。
72試合の登板はリーグ最多。
42ホールドポイントおよび同40ホールドを挙げ、最優秀中継ぎ投手賞を受賞した。
2016年もセットアッパーとしてスタートしたが、抑えの高橋朋投手の故障離脱もあり、途中から抑えに回った。
最終的には53試合に登板し、防御率1.66、3勝5敗28セーブ5ホールドを記録した。
キャリア初となる防御率1点台を記録し、抜群の安定感を誇った。
増田投手の球種 アマチュア時代から鍛えぬいたストレート
増田投手の球種は主に2つ。
キャリア平均の投球割合は60~70%の割合でストレート、20~30%がスライダー。
年によってフォークボールを投げるが、2016年は0.11%、2017年は若干増加して2.75%とほぼないに等しい。
【球種配分&球種別被安打割合】
引用:2017年度 増田 達至【西武】投手成績詳細(カウント別・球種配分)
直球の最速は最速155km/h。
アマチュア時代からトレーニングを積み重ね、現在の剛速球を手にした。
プロ入り後もシーズン中でもトレーニングを欠かさないと語っている。
また、プロ入り後故障続きだったこともあり、肩のケアを意識して取り組んでいると3年目のインタビューで語っている。
なお、社会人時代の同僚の選手曰く、上腕三頭筋を重点的に鍛えていたとのこと。
同期がドラフト1位になった!155kmの豪速球…西武L・増田投手の裏話
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投球の約7割を占める増田投手のストレートはただ速いだけでなく、プロでも特殊な回転をしていると荒川雄太ブルペンキャッチャーは語る。
「スライダーのような回転のまま、スライドする前にミットに届くストレートを投げるんです。それが増田のいちばんの武器でしょう。ブルペンでそのストレートが出ているときは、試合でも打たれることはまずないですね。160キロ近いボールはバットに当てることができる打者でも、増田の150キロ前後の、あのストレートをバットに当てるのは難しい。振り遅れていますよね。あんなストレートを投げる投手を僕は他に知りません」
握りはフォーシームでも独特な回転を見せるストレートに加え、140キロを超える高速スライダーで打者を抑える。
引用:「僕は目立たなくていい」守護神。西武・増田達至は温和な人、でも。(2/3) - プロ野球 - Number Web - ナンバー
特殊な回転があるからこそ増田投手はストレートとスライダーの2種類で活躍ことが出来るのだ。
ただ、その反面、ストレートの状態が悪いと打ち込まれるケースもある。
抑え向きの落ち込まない性格
セットアッパーでも抑えでも、任されたところならどこでもよいと語る増田投手だが、現在のライオンズで増田投手ほど抑えに向いている性格の選手はいない。
気持ちの切り替えが上手く、打たれた日もその場で善後策を話しあったとはすぐに忘れるそうだ。
曰く、全く落ち込まないと。
「もし打たれたときは、その日のうちにロッカーで何がアカンかったのか振り返って、キャッチャーや監督などと話します。球場を出るときには忘れるようにしています。次の日も試合があるので……。次の日には万全の状態で試合に臨めるように」
引用:「僕は目立たなくていい」守護神。西武・増田達至は温和な人、でも。(2/3) - プロ野球 - Number Web - ナンバー
そんな増田投手だからこそ、シーズン中の配置転換にも柔軟に対応できる。
2016年途中から任されるようになった抑えに関しても、セットアッパーとクローザーで気持ちの持ち方を変えて対処したそうだ。
セットアッパーから抑えに転向し、同じ1回でも、心掛ける部分が変わったと話す。「8回だと、後ろに投手がいるので、なるべく自分が最少失点に抑えるとか、走者を出さないということを考えてやっていました。でも、9回に投げるようになって、何人ランナーを出そうが、何点取られようが、最後に勝っていればいい、という開き直りが出てきました」。
抑えにこだわりはないと語る増田投手だが、2016年後半のインタビューでは9回を締めたあとに、マウンド上に全員が集まることに快感がないわけではないと語っている。
2、3年間だけなら抑えも悪くないと語っていた裏には抑えのやりがいを見出していたようにも感じた。
同い年の親友であり、ライバル・高橋朋投手から受け取った抑えの座
そんな増田投手には仲が良いチームメイトがいる。
同い年で同期、左腕から繰り出される快速球で三振を量産するリリーバー・高橋朋己投手だ。
ドラフト1位と4位、右腕と左腕、おっとりとした性格と負けん気の強さ。
リリーフのポジションにしても、高橋朋投手は抑えを熱烈に希望する中、増田投手はどこでもよいと語る。
一見好対照にも思える二人だが、普段は非常に仲が良く、お互いを認めあっている。
高橋朋投手がケガするまでは8回増田、9回高橋朋が西武の勝利の方程式だった。
しかし、2016年に高橋朋投手は左ひじの故障で戦線離脱。
左肘内側側副靭帯の再建手術(トミー・ジョン手術)を受け、復帰には1年以上をようする重傷となった。
その高橋朋投手の離脱後、増田投手が守護神の座を引き継ぐこととなった。
2017年7月現在、高橋朋投手は長きにわたるリハビリを経て、2軍戦で登板するまでになった。
親友から託された守護神の座。
その座を高橋朋投手が復活するまで、誰にも明け渡さずに増田投手は待っている。
高橋朋投手が復帰した時、また二人のリレーでライオンズの勝利する瞬間を見たい。
そして、二人が切磋琢磨し合って、抑えの座を争う姿も。
救援失敗が目立つ2017年 試練の時が増田投手を襲う
2017年の増田投手は苦しいピッチングが続いている。
2017/7/4時点で救援成功率は81.1%(27-22)。
4/27のオリックス戦では味方のミスがあったとはいえ黒星を喫すると、6/4のヤクルト戦では9回に4点差を追いつかれ、6/9のDeNA戦では9回に逆転ツーランを献上しセーブ失敗。
6/25のソフトバンク戦では9回二死から逆転サヨナラ本塁打を浴びた。
防御率3.42で既に3敗。
救援投手としてはリーグワースト2位の被本塁打5を献上している。
ソフトバンク戦の後では辻監督から配球について苦言を呈されるなど、抑え投手の座陥落の危機にある。
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リリーフ陣を支えた森コーチが亡くなった時には滅多に表情を変えない増田投手が悲痛な表情を浮かべた。
「慎二さんが来なかったらクビに」西武が涙で送った名コーチ・森慎二。 https://t.co/QQrx3A5c9I
— ごっつ (@gotts10) 2017年7月3日
打たれても表情を変えない増田が、悲痛な表情をしており、見ていて辛くなる。大石同様、ここからは結果を出してほしいが。
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精神的にも肉体的にも立場的にも辛い状況にある増田投手。
しかし、ファンは信じている。
増田投手が復活して、完全無欠のストッパーになることを。
6/11のDeNA戦で前回逆転ツーランを喫した宮崎選手を迎えた時、ベンチから辻監督がとっさに出てきて、場を和ませた。
その後、宮崎選手を打ち取った時に増田投手はホッとした表情で笑顔でキャッチャー岡田選手にお辞儀をしてみせた。
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ストッパーの多くは感情をむき出しにして、マウンド上で吠えたりするが、増田投手はそんなことをしない。
自分のセーブ成功はまるで他人事のようにチームの勝利、ファンの笑顔を喜びに変える。
福井工業大学時代の下野博樹監督も増田投手は優しくて後輩思いであると語っている。
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そんな人を思いやれる増田投手のマウンド上の笑顔をもっと私はみたい。
もちろん、プロ野球の世界は性格だけで務まるものではない。
求められるのは実力と結果。
増田投手にはいち早く復調してもらい、9回勝利の瞬間の快感を何度でも味わって欲しい。
まとめ
抑えて当たり前、打たれれば批判される。
そんな過酷なポジションを務める選手の負担は常人ではとても計り知れない。
どんなに状態が悪い時も試合は待ってはくれない。
それでも増田投手はファンとチームの期待に応えるために今日もマウンド駆け上がっていく。
抑え投手最大の喜びは優勝決定時の胴上げ投手。
その最高の舞台に増田投手が最高の笑顔で立っている日を待ちわびながら、増田投手の活躍に期待したい。
それでは、さようなら!