埼玉西武ライオンズに受け継がれてきたスピードスターの系譜。
平成以降だと、秋山幸二(1)、佐々木誠(1)、松井稼頭央(3)、片岡易之(4)、そして金子侑司選手(1)の5名が盗塁王のタイトルに輝いている。
※()内は獲得回数
2016年に球団史上4人目のシーズン50盗塁越えとなる53盗塁で盗塁王を獲得した金子選手。
しかし、これまでの道のりは平坦なものではなかった。
遊撃手、スイッチヒッターとして失格の烙印を押され、二軍落ちも経験。
盗塁王を獲得した今でも、完全なるレギュラーとは言えない状況だ。
ただ、金子選手が持つポテンシャルなら、きっとライオンズの歴代スピードスターに負けないリードオフマンになれるだろう。
そこで今日は埼玉西武ライオンズの新たなスピードスター、金子侑司選手の魅力について語っていく。
- 金子侑司選手とは
- 華々しいデビューと遊撃手・スイッチヒッター失格の烙印
- 覚醒したスピードスター 盗塁王獲得への道のり
- 課題は怪我の多さと長いシーズンを戦う体力不足
- 外野手専念 2017年に求められる真価
- 目指せ西武の通算盗塁球団記録 西武史上最高のスピードスターへ
- まとめ
金子侑司選手とは
立命館宇治高校は甲子園出場経験は無し。
立命館大学時代に大学日本代表に選ばれるなどして、頭角を現す。
2012年のドラフト会議で埼玉西武ライオンズから3巡目で指名され、入団。
2013年は新人ながらそのスピードを高く評価され、開幕戦にて7番・右翼手でプロ初出場・初先発。
開幕一か月間は好調を維持し、前中日監督の落合博満氏から今年の新人で面白いのは金子と言われるほどの活躍をみせた。
しかし、守備難と体力不足からくる疲労により打撃を崩し、二軍落ち。
シーズン終盤に再昇格すると、9月15日の対千葉ロッテマリーンズ戦でサヨナラ安打を放った。
西武の新人選手としては2011年に秋山翔吾が記録した以来の快挙。
2014、2015年は遊撃手として期待されるものの、送球難と体力不足、故障などから思うようなシーズンを過ごせなかった。
転機となったのは2016年。
開幕こそキャンプ中に痛めた腰の影響で出遅れたものの、シーズンが進むにつれ調子を上げる。
途中から1番・右翼手に固定されると、リーグ最多の53盗塁を記録(オリックスの糸井嘉男選手と同数)して盗塁王獲得。
自身初の規定打席到達となり、初めて外野手としての出場が内野手としての出場を上回った。
またイケメン選手としても知られ、特に女性ファンが多い選手としても有名。
フジテレビのアナウンサー・三田友梨佳との交際が報じられるなど、私生活での言動にも注目が集まる選手。
ディラン・マッケイのものまねを得意とする。
華々しいデビューと遊撃手・スイッチヒッター失格の烙印
金子侑司選手と言えば、ルックスと相まった派手なプレースタイルが持ち味。
ショートのスイッチヒッターでスピードスターと言えば、往年の名選手広島の高橋義彦、ロッテ時代の西岡剛選手が有名。
そして、西武ファンにとっては何といっても松井稼頭央選手。
金子選手がデビューした時はこれらの選手に並ぶ活躍を期待された。
しかし、守備難から遊撃手、二塁手、三塁手と次々と内野のポジションを失格となる。
また2014年には当時の監督伊原春樹の方針でスイッチヒッターをやめ、左打ちに専念させられた。
最終的には当時の田辺コーチとの話し合いでスイッチヒッターに戻したものの、 遊撃手、スイッチヒッターと自分のアイデンティティを失うことが続いた。
覚醒したスピードスター 盗塁王獲得への道のり
そんな金子選手に唯一残されたのはスピードスターとしての道。
2015年のオフから守備・走塁コーチに就任した佐藤友亮コーチと二人三脚で盗塁の技術を磨いた。
何より、本人の盗塁に対する意識の変化がいちばん大きい。
スタート前の手を置く位置や、スライディングの意識など、ふとした練習のときに発見した方法を試して、改善を続けた。試合前の練習でも、金子の走り方を佐藤コーチが見て「姿勢が高い」、「力んでいる」と修正点を伝える。
そのやり取りは毎日続いた。
引用:盗塁王・金子侑司が生まれるまで。こだわりを捨て、周囲に愛されて。(2/3) - プロ野球 - Number Web - ナンバー
プロ3年間は自分のこだわりが強すぎるあまり、周囲のアドバイスを中々受け入れられなかったという金子選手。
「それまでは、自分のスタイル……ああいう選手になりたい、こういうプレーをしたいと考えてやってきた、その“こだわり”が強かった。でも、それが自分の成長を邪魔しているんじゃないかと思うようになりました」
首脳陣や先輩に様々なアドバイスをもらっても、自分の理想像にとらわれ過ぎて、なかなか受け入れられない3年間だったと語る。
引用:盗塁王・金子侑司が生まれるまで。こだわりを捨て、周囲に愛されて。 - プロ野球 - Number Web - ナンバー
しかし、自分を変えたい、結果を残したいという強い思いが金子選手は西武ライオンズの新たなスピードスターに変えたのだ。
そんな金子選手の姿勢を周囲も徐々に認めていく。
盗塁王を目指す金子選手をチーム全体でサポートする流れが生まれたのだ。
「終盤、奈良原コーチ(浩・日本代表ヘッドコーチ)が田邊(徳雄)監督に提案して、チーム全体が金子の盗塁数を伸ばすことに協力してくださいました。1番に起用して、戦術面などでも、彼がやりやすいようにしてくれた。周囲の協力なくしてこのタイトルはなかったと思います。ただし、それは、金子が必死に努力している姿をみんなが見ていたからこそ。金子が人間的に成長したことが成績を残せたいちばん大きな要因だと思います」
また後ろを打つ秋山選手も金子選手の盗塁をアシスト。
「初球で必ず走れるかというと、そういうものでもないので、どうしても2球、3球と待ってもらう場面が多かったですから。それが秋山さんのバッティングの足かせになってしまっていた打席もたくさんあったと思う。そんな中でも、試合前には笑顔で『今日、走れそうか?』と必ず声をかけてくれて、思い切ってスタートを切りやすい環境を作っていただきました。感謝しているのと同時に、そういうことを当たり前にできる秋山さんは改めてすごい選手だなと感じました。とにかく盗塁は、1人で走れるものではない、周囲の協力があって初めてできること。首脳陣はもちろん、チームの皆さんに改めて感謝したい賞ですね」
引用:盗塁王・金子侑司が生まれるまで。こだわりを捨て、周囲に愛されて。(3/3) - プロ野球 - Number Web - ナンバー
実はこの時、秋山選手も打率3割と最多安打のタイトルを争っていた。
それでも金子選手のために、秋山選手は待球して、金子選手をアシストしたのだ。
その周囲の期待に応えようと金子選手は必死の姿勢をみせた。
盗塁だけでなく、塁に出るための打席での粘り、コンバートされたライト守備での安定感。
走塁面だけでなく、攻守に渡ってチームに貢献しようと泥臭いプレーを見せたのだ。
ライトにコンバートされてからのわずか66試合で盗塁30を記録。
打率もシーズン通算が.265に対して、ライト出場時は.284。
走塁、打撃面の両面においてライトコンバートが活きる形となった。
その結果、糸井選手との激しい盗塁王争いの末に、2016年の盗塁王に輝く。
盗塁王タイトルの授賞式で金子選手が常に感謝という言葉を口にしていたのが非常に印象的だ。
課題は怪我の多さと長いシーズンを戦う体力不足
金子選手の最大の課題は怪我の多さと体力不足。
・2013年:疲労で二軍落ち
・2015年:鼻骨骨折
・2016年:腰の張りで開幕二軍 右足付け根と右膝裏
・2017年:シンスプリントによる右すねの痛みで開幕二軍。
常に怪我と隣り合わせの選手だ。
プロ4年間で100試合以上に出場したのが2016年の1度(129試合)のみ。
その2016年も、出場試合数が増えるごとに成績を落としていった。
引用:プロ野球 ヌルデータ置き場 西武 - 打撃成績 2 金子侑司 -
怪我なく、通年通して戦える身体作りが金子選手の課題の一つだ。
外野手専念 2017年に求められる真価
2016年に就任した辻監督は金子選手の外野手専念を打ち出した。
金子選手の体力面、守備を考えた上での決断だ。
また、チームとしても右翼手が固定出来なかったのが要因の一つ。
2017年はルーキーの源田壮亮選手が新人王獲得に迫る勢いで活躍を見せていることからも、金子選手が生きる道は外野手しかない。
金子選手が今後も盗塁王を獲得するには打撃力の向上も求められる。
盗塁するためにはまずは塁に出なくてはいけないからだ。
また、外野手は内野手と比べて打力が求められるポジション。
金子選手にとって打撃技術向上は必要不可欠。
2016年の金子選手は打率.265、出塁率.331、OPS.642。
お世辞にも攻撃力が高い選手とは言えない。
最低でも、打率.280、出塁率.360、OPS.750、盗塁35(成功率78%)を残さなければ、外野手として、金子選手のポテンシャルを考えた時に合格とは言い難い。
個人的には2016年の日本ハムの西川遥輝選手の数字を目標にして欲しい。
打率.314、出塁率.405、OPS.802、盗塁41(成功率.89%)
西川選手もまた、内野手・長打を捨てて花開いたスピードスター。
他球団の年下選手だが、ライバル意識全開で、意識して欲しい存在だ。
2017年の盗塁王獲得はやや厳しい状況だが、不可能ではない数字。
猛烈な追い上げで2年連続の盗塁王を獲得して欲しい。
目指せ西武の通算盗塁球団記録 西武史上最高のスピードスターへ
金子選手に是非目指して欲しいのは西武の通算盗塁球団記録更新。
【西武の通算盗塁球団記録】
- 1位:松井稼頭央 306個
- 2位:片岡治大 271個
- 3位:石毛宏典 242個
- 4位:秋山幸二 227個
- 5位:辻発彦 220個
金子選手は現在現役最多の122個。
100盗塁超えはライオンズ史上15人目となる。
306個は、5年連続45盗塁でようやくたどり着ける領域と考えると、非常に長く険しい道のりだが、金子選手ならやってくれるだろう。
ライオンズの球団史、そして、球界に名を残す選手になることを期待したい。
まとめ
派手なプレースタイルとデビューから、順風満帆なプロ野球人生を歩むことが予想された金子選手。
しかし、プロでは様々な挫折を経験してきた。
ただ、その中でもひた向きな努力をしたことで、盗塁王のタイトルを獲得することが出来た。
まだまだ、成長の可能性を残す選手だけに、更なる成長に期待したい。
西武の新たなスピードスターの活躍から目が離せない。
それでは、さようなら!