現役日本人最強先発左腕投手は誰か。
昨年の成績と実績を考慮すれば、2016年最多勝で日米通算127勝の福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手の名前があがるだろう。
若手であれば、横浜DeNAベイスターズの2017年の開幕投手・石田健大投手、その同僚今永昇太投手、読売ジャイアンツの田口麗斗投手などの名前が挙がる。
絶対的にこの投手が最強という投手はいないが、西武ファンの贔屓込みで、私は埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手がその名にふさわしいと考えている。
プロ7年間の通算勝利数は43勝。
二けた勝利、規定投球回数到達はそれぞれ一度だけ。
個人タイトル、リーグ優勝、WBC出場経験なし。
これだけ見れば、最強という名はふさわしくない。
ただ、左腕史上最速の157km/hを記録したようにポテンシャルだけを見ればその素材はトップクラスであることは誰の目にも明らか。
高校時代から注目されてきたの素材はプロ入り後十分に発揮されているとは言い難かった。
しかし、2017年シーズンの菊池雄星投手はこれまでとはひと味違ったパフォーマンスを見せている。
ここまで7試合に登板して、防御率は脅威の1.08。
被打率は12球団トップの1割4分2厘。
内容でも結果でも打者を完全に圧倒している。
2017年こそ西武の、いや球界のエースの座を上り詰めてほしい。
そんな期待を込めて、今日は埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手についてご紹介していく。
- 中学生で140km/h! アマチュア時代の剛腕伝説
- 自分をコントロールできるようになった二つの成長
- 憧れからライバルへ 負けられないパリーグのエース対決
- 夢はメジャーリーガー 日本人メジャー最強左腕への挑戦
- まとめ
- 野球関連記事
中学生で140km/h! アマチュア時代の剛腕伝説
菊池雄星投手の名はアマチュア時代から広く知れ渡っていた。
【菊池雄星投手アマチュア時代の戦歴】
- 小学時代→全国大会
- 中学時代→東北大会準優勝
- 高校時代→春の選抜準優勝、夏の甲子園でベスト4
各年代で高いレベルの大会を経験してきた。
そして、その全てチームで中心選手。
意外にも小学生の頃のポジションは4番・一塁手。
当時から速球は速かったものの、コントロールが悪くて試合を壊してばかりいたそうだ。
しかし、中学以降は投手として活躍。
年齢と共に身体も大きくなり、速球のスピードは上がっていった。
【菊池雄星の球速】
- 中学3年生→140km/h
- 高校1年生→145km/h
- 高校3年生→154km/h(高校生左腕最速)
- プロ6年目→157km/h
- プロ8年目→158km/h(日本人左腕歴代最速タイ)
左腕最速記録を次々に塗り替えた歴史に残る剛腕投手だ。
自分をコントロールできるようになった二つの成長
しかし、その最速左腕が鳴りを潜めた時代があった。
プロ入り後肩の痛みなどの影響から、自分本来のスピードボールを投げられない時期が続いた。
一時期は140km/hまでに球速は落ち、プロで153km/hを計測するのに4年も時間がかかってしまった。
順風満帆にいかなかったプロ野球人生の中で、菊池雄星投手は自分をコントロールする二つの術を身につけた。
それは力を抜いて投げることと、セットポジションでの投球。
菊池雄星投手と言えば、花巻東高校時代から有名な全力投球。
常に100%の力出し切るプレースタイルが心情。
しかし、その代償として非常に怪我しやすい選手でもある。
プロ入り後は度重なる肩痛に見舞われ、規定投球回数に到達したのは僅か1回。
ダルビッシュ有、田中将大投手などの超一流選手は通常とピンチで力の入れ方を変える。
通称”ギアチェンジ”と言われるものだ。
それは試合で長いイニングを投げるため、ひいては長いシーズンを乗り切るため、もっというと長く現役生活を続けるために必要な技術。
しかし、菊池雄星投手の場合はどうしてもそれが出来ない。
理由の一つに、気のないボールを投じて打たれてしまうことへの恐れがあったそうだ。
2016年の開幕前に当時の潮崎投手コーチから力を抜いても十分に力強いボールが投げられていると言われてから、意識が変化。
実際の試合でも力を抜いたボールで打者を打ち取れることに気づいたそうだ。
そこから菊池雄星投手は状況によって、力の入れ方を変えられるようになったのだ。
また、菊池雄星投手の代名詞であった豪快なワインドアップを辞めて、セットポジションからの投球に変更。
そうすることで、余計な動作が減り、コントロールが安定。
コントロールが安定すれば、球数が減り、長いイニングを投げることにつながる。
まだ無駄な動作が減れば、それだけ体力の消耗を少なくすることができのだ。
その甲斐あってか、菊池雄星投手は1イニングにかかる球数を年々減らすことに成功。
2013年 17.38 (108回 1877球)
2014年 17.66 (139.2回 2467球)
2015年 17.29 (133回 2300球)
2016年 16.83 (143回 2406球)
2017年 15.70 (44回 691球)
減る球数と反比例するように投球回数を増加している。
やや古いデータになるが、 2015年のプロ野球の、1イニング当たりの投球数は16.71球。
一般的に16球を切ると非常に優秀である。
※2016年のパリーグの先発投手で16を下回っているのは3名のみ。
2017年の菊池投手はその16を切っている。
試行錯誤を重ねてきた結果、菊池投手は少ない球数でイニングを消化できる投手への進化を遂げたのだ。
憧れからライバルへ 負けられないパリーグのエース対決
菊池選手には憧れであり、ライバルといえるパリーグのエースがいる。
日本ハムファイターズ・大谷翔平選手、千葉ロッテマリーンズ・涌井秀章選手、東北楽天ゴールデンイーグルス・岸孝之選手、福岡ソフトバンクホークス・和田毅選手だ。
大谷翔平選手は母校花巻東高校の3学年後輩。
菊池選手に憧れて花巻東高校に入学し、寮部屋はかつて菊池選手が使っていた部屋を使用した縁がある。
高校時代の実績では菊池選手の方が上だが、プロでは一転。
最多勝やリーグMVP、日本一などの実力・実績ともに後輩大谷選手が上をいっている。
そんな大谷選手に対して、菊池選手は悔しさとライバル心を持っている。
個人的にも、チームとしても負けられない王者日本ハムのエース。
それが大谷翔平選手なのだ。
ロッテ涌井投手も負けられないエースの1人。
プロ入り時の絶対的エースだった涌井選手こそ菊池選手にとって目標であり、倒すべきエースの1人。
高卒から入団した2010年。プロになって最初に出会った『エース』が、前年度に沢村賞を受賞し、球界の中でも屈指の存在に君臨していた涌井投手だった。その日から、常に「理想のエース像」として目標にしてきた。
「僕にとっては、特別な存在です。ずっとライオンズでエースとして投げていた投手なので、投げ合えることが、僕自身がどれぐらい成長できているかを確かめる“ものさし”にもなると思います」
引用:“真のエース”と認められるために―菊池雄星がどうしても投げ勝ちたい投手 | Full-count | フルカウント ―野球・MLBの総合コラムサイト―
更に楽天岸孝之選手もまた倒すべきエースの1人。
2016年までは左右のエースとして共に戦ってきた2人。
2017年は敵味方に分かれて戦います。
今年チームが勝てなければ、「岸がいたら勝てたのに...」と何かと比較される状況が増えるだろう。
菊池選手は常に前エースの亡霊と戦わなければいけない。
圧倒的な成績を残して、「岸がいなくても菊池がいるから大丈夫 」とファンに言わせてこそ、菊池選手が真のライオンズのエースと言える。
そして常勝軍団ホークスの左腕エース和田選手も倒さなければいけない相手の1人。
菊池選手は対ソフトバンク戦に勝利したことがない。
対ソフトバンク戦に限れば、一軍デビューした11年以降、先発した13試合で0勝9敗だ。
常勝軍団ホークスを倒さないことにはチームの優勝はない。
また現在の最強左腕といっても過言ではない和田選手は菊池選手にとって越えなければならない壁の一つ。
自身のためにも、チームのためにも倒さなければいけないエースがパリーグにいるのだ。
夢はメジャーリーガー 日本人メジャー最強左腕への挑戦
菊池選手は高校時代、メジャー挑戦をギリギリまで悩んで断念した経緯がある。
高校からの直接メジャー挑戦とはならなかったが、ことあるごとにメジャー挑戦願望を口にしている。
一部報道では2019年シーズンにメジャー挑戦を視野に入れているとあった。
西武内には各選手に対し、3年結果を出して一人前という考えがあり、雄星に対しても昨年、今年、来年の成績などを考慮して判断する方針で、挑戦は早くても18年オフになりそうだ。
また、2016年にはワールドスポーツMLBでキャスターを務める深津瑠美と結婚。
趣味は英会話。
趣味は英会話の勉強。外国人投手たちと意思疎通もできる。
具体的な時期は未定だが、遅かれ早かれ彼はメジャーに挑戦する。
その時は日本人左腕の歴史を塗り替える活躍をして欲しい。
現在の日本人左腕最多勝利は石井一久氏が持つ39勝。
2017年時点では日本人メジャー勝利数上位を右腕が独占している状況だ。
【2016年終了時点の日本人メジャー通算勝利数ランキング】
1位 野茂英雄 123勝
2位 黒田博樹 79勝
3位 岩隈久志 63勝
4位 松坂大輔 56勝
5位 大家友和 49勝
現在のメジャーリーグで活躍する日本人投手は右投手ばかり。
菊池選手には是非、日本人左腕の歴史を塗り替えて欲しい。
今まで彼が左腕投手の記録を塗り替えてきたように。
現在の左腕の最多勝利記録を持つ石井氏は西武時代のチームメイトであり、憧れの存在。
少年時代から、石井は憧れの存在だった。当時、岩手での野球中継は巨人戦が中心だったが、強大な戦力を相手に、真っ向から勝負する石井の姿が印象的だったという。「小さい頃は、カズさんが投げる試合は絶対に見た。幼い頃も、そして今も目標とする方です」
自身が背にする背番号16を越える勝ち星を残して、周囲にメジャー挑戦を納得させ、メジャーで石井一久氏を超える活躍を見せて欲しい。
まとめ
まだ通算47勝の投手を最強と言うには時期尚早だろう。
しかし、持っているポテンシャルと2017年のピッチングを見ていればその能力が国内トップクラスであることは明白。
後は結果、周囲の誰もが納得する結果さえ残せば最強左腕の称号は簡単に手に入る。
個人タイトル、チームの優勝を手土産に、世界で活躍する最強左腕に成長して欲しい。
それでは、さようなら!
野球関連記事
・【2017夏の甲子園】出場高校一覧と注目選手!優勝予想と展望も
・プロ野球は80勝すれば優勝確率71% 西武ライオンズが80勝するための戦略【2017年】
※菊池で16勝以上、菊池を合わせた先発全体で60勝、リリーフ陣で20勝。
これが西武の優勝絶対条件。