面白かった!
クレヨンしんちゃん映画の新たな試みが大成功したと言っていい作品。
興行収入歴代1位の名に恥じぬ作品でした。
オールドファンが喜ぶ要素と子どもさんなどのライト層も楽しめる要素が融合した素晴らしい作品。
それが『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』。
この作品が劇場版クレヨンしんちゃん第一作である『ハイグレ魔王』の興行収入を越えたってのはクレヨンしんちゃんが新たな時代に突入したって感じがします。
一番象徴的だったのは声優さんたちの変更。
サザエさんだって、ドラえもんだってご長寿アニメ番組は惜しまれつつも声優さんたちが様変わりしていきます。
クレヨンしんちゃんだってその一つ。
物語序盤で野原一家がかすかべから引越す時に、時代の移り変わがしみじみと伝わってきました。
冒頭の短い15分程度の春日部の別れのシーンとそれ以降のメキシコでのパニックムービー。
両方が非常に良いバランスで成り立っている作品です。
- 『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』とは
- 一家の主ひろし(ローンが32年) 良妻賢母みさえ
- さようなら組長先生、偉大な声優さんたちとのお別れ
- やっぱりしんのすけのことが大好きな風間君
- 爆笑パニックムービー 徐々に結束が高まる登場人物たち
- クレヨンしんちゃん映画を観るなら!
- まとめ
『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』とは
概要
2015年4月18日に公開された『クレヨンしんちゃん』劇場映画シリーズ第23作目。
キャッチコピーは『ありがとうカスカベ。さようならカスカベ。』
『アクション仮面VSハイグレ魔王』(1993年)の興行収入22.2億を上回り、シリーズ最高記録を更新した。
あらすじ
ひろしは、メキシコの町に生息するサボテンの果実を集めるために双葉商事の部長から異動と同時に部長昇進を命じられる。
はじめは単身赴任を考えていたものの、みさえから「家族はいつも一緒!」との一言により一家総出でメキシコへ引っ越しすることに。
慣れ親しんだ春日部の住人達と涙の別れを告げることになった野原一家。メキシコのお姉さんはみんなスタイル抜群と聞いたしんのすけは喜んで旅立つ。
引っ越し先の町・マダクエルヨバカにて個性的なご近所さん達に囲まれ不安だらけの新生活が始まるが、そこでしんのすけ達を待ち受けていたのは人間を捕食する歩くサボテン・人喰いキラーサボテンだった。
果たして野原一家は、メキシコのご近所さん達と共にこのピンチを乗り越えることができるのか!?
2015年4月18日(土)公開!『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』 予告
一家の主ひろし(ローンが32年) 良妻賢母みさえ
サラリーマンって大変ですね。
会社の都合でいきなりメキシコに転勤になるわけですから。
しかもローンが32年残ったマイホームを持っているサラリーマンにとっては特に。
そのうえ、妻と子二人もいるのに。
ただ、それでもそれを受け入れて一人単身赴任を決意したひろし。
メキシコの方には失礼かもしれませんが、やはり妻子を治安が心配されるメキシコに連れて行くってのはかなり勇気がいることでしょう。
しかし、そのひろしの決断を聞いて、「ひとりで勝手に決めないで」と制すみさえも素晴らしい。
良妻賢母という表現はフェミニストの方から叱られるかもしれませんが、この時のみさえはまさに良妻賢母そのもの。
夫と子どもの両方のことを考えられる素晴らしい人物なのです。
この父と母、そしてたくましいしんのすけ・ひまわり、それとシロなら世界中のどこでだってやっていけるだろうと感じさせてくれる序盤の展開でした。
ロボとーちゃんで扱った”死”は例え劇場版での扱って欲しくないタブー的なテーマ
しかし、もし野原一家が引越したらどうなるかは劇場版だからこそ扱えるテーマ。
その違いについてはここでは別議論ですが、個人的には今回の試みは劇場版ならではの良さを活かした良テーマだと思います。
最後に荷物を全て引き払った後のがらんとした野原家は寂しかったです。
なんかフレンズのラストにも似た寂しさを思い出しました。
さようなら組長先生、偉大な声優さんたちとのお別れ
この作品冒頭で野原一家が引越しする際に春日部の人々がお見送りに来ます。
その中にはいつもかすかべ防衛隊だけでなく、またずれ荘時代のメンバーや埼玉紅さそり隊の面々が勢ぞろいします。
この中で一番印象的だったのは組長先生こと園長先生との別れのシーン。
実はこの映画が公開される前年の2014年に長年園長先生の声を担当された名優納谷六朗さんがお亡くなりになられています。
この映画では生前の声を用いているのです。
今回の出演について製作サイドは「園長先生のセリフは、納谷六朗さんの生前の声を使用したものです。
春日部のみんなに野原一家が別れを告げるという場面を描く時、そこに園長先生がいないというのはあり得ないので、今回、このような形で登場してもらいました。
引用:同上
普段の穏やかで優しい声と、組長になった時のキレキャラ。
園長先生のキャラクターの魅力を高めたのは納谷悟朗さんの功績です。
この別れのシーンは納谷悟朗さんとしんのすけの別れのシーンでもあるのです。
このシーンは『ブタのヒヅメ』の塩沢 兼人さん(ぶりぶりざえもん)との別れに並ぶ悲しい本当のお別れシーンなのです。
そして別れと同時に出会いもある。
この映画はクレヨンしんちゃんが新しい時代に進んでいく転換点でもある作品です。
ななこお姉さん役の紗ゆりさん、ひろしの上司の部長役を務めた郷里大輔さんが亡くなられてから初めて映画版にそれぞれの新キャラクターが新しい声優さんで登場します。
よしなが先生の声優さんも変わっています。
この映画のあと、ぶりぶりざえもん、園長先生役は二代目声優さんたちが務められています。
時代と共にクレヨンしんちゃんが変化していく、その転換点となるシーンがこの引越しシーンなのです。
※1 2017年6月16日追記
声優さんに悲しい話題が続いていたクレヨンしんちゃんですが、2017/6/16日に野原ひろし役の声優藤原啓治さんの復帰が決まりました!
お帰りとーちゃん! 野原ひろし役の声優藤原啓治さん病気療養から復帰決定
※2 2018年6月1日追記
藤原さんの復帰が決まった1年後に、野原しんのすけ役の矢島晶子さんの降板が決定。
クレヨンしんちゃんの声優陣も、世代交代を迎えています。
ファンとしては受け入れるしかないですが、ショックです...。
クレヨンしんちゃんファン歴26年が語る野原しんのすけ役の声優・矢島晶子さん降板について【理由と後任、思い出と違和感】
やっぱりしんのすけのことが大好きな風間君
別れのシーンでぐっとくるのが風間君との別れのシーン。
不覚にもジワっときてしまいました。
しんのすけが特に悲しむでもない態度を取るのが風間君には辛かったのでしょう。
「別れの時に、去るものは残されるものの気持ちを知らない」
ってやつですね。
他の誰よりもしんのすけとの別れを悲しむ風間君。
やはりこの二人の友情は特別なものがあります。
実はかなり古いエピソードなのですが、漫画とアニメで風間君がアメリカに引越しするという回があります。
結果的に風間君はお父さんの仕事の都合が二転三転して、引越しは中止になるのですが(栄転だの左遷だのという五歳児らしくない言葉が出てきます)。
その時もしんのすけと風間君の友情が描かれています。
初期の名作を活かした風間君としんのすけの別れ。
新たなスタートを切ったクレヨンしんちゃんですが、昔の良い部分も忘れず残っているのが古参心をくすぐります。
ラストで見せた風間君の涙混じりの喜びはこの作品で私が一番好きなシーンです。
テレビ放送ではカットされていますが(笑)
爆笑パニックムービー 徐々に結束が高まる登場人物たち
今回のクレヨンしんちゃんが新たなに挑戦したのがパニックムービー。
今までもSFや逃走劇映画の中に入り込む劇中劇など様々な試みがされてきました。
そんな中で今回新たに取り組んだのが、パニックムービー。
ジョーズなどに代表される人喰いものです。
ある意味子ども向けのクレヨンしんちゃんが一番手を出しづらい分野です。
ただ、この作品に関してはその残虐性やバイオレンスさをクレヨンしんちゃん特有のギャグでいい感じに中和されています。
ストーリーは明らかに『トレマーズ』がベースとなっています。
マダクエルヨバカ町長がいい感じムカつくのがリアルで良かったです。
パニックムービーにつきものの利己的で嫌なやつ。
ただ、この嫌なやつの存在が結果的にみんなの団結を高めるのです。
いわば必要悪なのです。
しかし、この町長ただの嫌なやつではないのです。
ある意味一番人間くさい人物なのです。
サボテンの果実を狙って押し寄せる各国の人々からの誘いを蹴って、自分たちだけでその利益を享受しようとする姿。
ひろしサイドから見れば強欲なやつに見えますが、実はこれかなりリアル。
サボテンの果実を輸出してしまえば、人々はわざわざサボテンの果実を食べにメキシコまでは行きませんよね。
それでは希少性も下がるし、町を観光地化できない。
なので、あくまでマダクエルヨバカでしか食べられないサボテンとして希少性を高めて同時に観光地化も狙うというのは至極当然の戦略。
むしろ文字通り甘い蜜を吸おうとして群がってくる商社側の方がよっぽどあくどい。
そういった細かい人物設定があるからこそこの作品がただの子ども騙しにならないのです。
サボテンから逃げるためにバスに乗るシーンで、野原一家を待たずにバスを出発させるシーンがあります。
一見非情に見えますが、自分が死ぬかもしれない状況でどこぞの馬の骨ともしれぬやつを普通待ちますか?
この町長の妙に人間くさい設定こそがこの作品を魅力的なものにしているのです。
ただ、もちろんオリジナリティも満載です。
個人的に一番笑えたのはしんのすけがお茶碗持つ方の手を悩むシーンです。
左がわからないしんのすけにみさえがお茶碗を持つ方の手と教えるのですが、しんのすけは普段お茶碗を適当に使うので、すぐにどちらの手かを思い出せません。
実はこのネタは初期のクレヨンしんちゃんによく見られたネタです。
同時に子どもに悪影響を与えるとして、自主規制されてきたネタでもあります。
このネタを使ってまた古参の心を掴んでくれます。
もちろん、みさえのあるツッコミワードが大衆の笑いを誘います。
しかもこのやり取りをサボテンに襲われながら、コミカルにやりとりするあたりはまさにクレヨンしんちゃんワールド。
敵の弱点に気づいたのもしんのすけのある意味行儀の悪さからきたもの。
そしてラストシーンで、しんのすけを助けたものは序盤のある重要なシーンで渡されたものでした。
ストーリーの根幹にしっかりとしたパニックムービー要素を取り入れつつ、クレヨンしんちゃんらしさも忘れない。
非常にしっかりとした脚本です。
結果的に全員が団結して、それぞれ活躍して勝利を収める展開はまさにパニックムービーの王道。
個人的にある登場人物が成長していく展開が好きでした。
単純に笑えるキャラだったのも含めて。
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まとめ
新旧の良さ。
序盤の別れのシーン、中盤以降のパニックムービー。
笑いと感動のバランス。
それぞれのバランスが絶妙に合わさった最高の作品でした。
興行収入が全てではありませんが、やはり人の反応ってリアル。
良いものには人が集まるし、悪いものにはそれなり。
何度も見返して作品への理解を含めていきたい!
そう思えるほどの良作でした。
クレヨンしんちゃん新章突入!
それでは、さようなら!