間違いなく良作。
だけど、認めたくない。
だってこれはクレヨンしんちゃんじゃないから。
こんな話をするのは二度目です。
『戦国大合戦』についで二回目となる人の死をクレヨンしんちゃんで扱った作品。
それが、 映画『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』。
名作なんです。
この作品が評価されるのはわかるんです。
でもクレヨンしんちゃんで扱って欲しくないテーマを扱っているんです。
- 『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』とは
- ある日突然自分の役割が失われてしまう恐怖
- 母みさえ 妻みさえ 女みさえ
- 禁じて発動 野原ひろし死す
- クレヨンしんちゃん映画を観るなら!
- まとめ
『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』とは
概要
2014年4月19日に公開された『クレヨンしんちゃん』劇場映画シリーズ第22作目。
第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞作品。
あらすじ
ギックリ腰で腰を痛めたひろしは突如現れた謎の美女に連れられ、マッサージも兼ねてエステの「無料体験」を受けることに。
エステを終えて家に着いたひろしだったが、そこで自分の体がロボットになっていることに気づき、ビックリ! ロボットになった自分を前に警戒心むき出しのみさえに対し大喜びのしんのすけ。
そんな中ひろしは、自分の体がロボットになった原因があのエステサロンであったことに気づく。それは、邪険に扱われる日本の弱い父親達の復権を企てる『父ゆれ同盟』の恐るべき陰謀だった。
「家族は、オレが守る!!」
崩壊寸前のカスカベを前にロボットになったひろし=ロボとーちゃんが、しんのすけと共に立ち上がる。
映画『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』予告編
ある日突然自分の役割が失われてしまう恐怖
この映画の怖いところは自分の役割が突然失われてしまうことです。
物語冒頭ひろしはみさえから使えない旦那として描かれます。
また、しんのすけやひまわりと遊んだり、壊れたテレビの電線を修理してあげることもできません。
ただ、この時点では父として、夫としての役割が存在するのです。
しかし、ロボになってしまったひろしはその役割を失ってしまいます。
子どもたちに触れることだけでなく、家族と暮らすことすら許されません。
家の外で寝ることを強いられます。
その後、ロボひろしがどうしたか。
彼は自分の役割を取り戻すために全力で頑張ります。
家事、育児、果ては仕事まで今まで以上に全力で遂行します。
自分の父として、夫として、会社員としての役割を取り戻そうと。
しかし、ロボひろしが頑張れば頑張るほど、野原ひろしが失ってしまった役割の大きさとその状況の儚さが映し出されてしまいます。
ひろしがロボになるまえに、家庭から虐げられるお父さんたちが描写されます。
それは「父」としての役割が近年変容してしまったことを描いています。
父ゆれ同盟が目的とした家長としての復権。
恐ろしいテーマのように見えて、異常に映ります。
しかし、人は役割を失ってしまうと通常異常に頑張って役割を取り戻そうとする。
それは父ゆれ同盟も野原ひろしも変わらないのです。
役割を失うことの恐ろしさをこの映画では描いているのです。
母みさえ 妻みさえ 女みさえ
ひろしが主役ならヒロインはもちろんみさえ。
この作品ではみさえが3つの役割を果たします。
また、それがこの作品の良さを引き立てています。
ある日夫が異型な姿に変わってしまったらどうするか。
みさえが最初にとった行動は子どもたちからロボひろしを引き離すことでした。
それは母みさえとして子どもたちのことを優先して考えた結果なのです。
次にみさえが見せたのは妻としての役割です。
夫が不在になったことで、自分が家庭を守っていく。
ひろしの捜索願いや家族参加の工場見学など、家庭を守ろうとする妻としての一面が描かれます。
工場見学でひろしがしんのすけたちを守ってくれたことを喜んで感謝するみさえは良い母・妻としての描かれています。
しかし、これらの二つの役割以上にこの作品で強く印象づくのは女みさえとしての役割。
ロボひろしと本物のひろしの対立の狭間で揺れるみさえは一人の女性として描かれています。
『ブリブリ王国の秘宝』でも新婚夫婦のようにみさえとひろしが描かれていますが、あれは表面的な部分。
今回のように一人の女性としてみさえの内面が描かれたのは劇場版では初めてのこと。
本物のひろしが生きていた時の反応、最後のロボひろしと本物のひろしが戦うシーン。
今作はみさえ視点で見てみると違った味わいがあります。
もし二回目以降を見る機会があれば、ぜひみさえになりきってみて観ることをおすすめします。
禁じて発動 野原ひろし死す
この作品の賛否が分かれるのはひろしの死。
ロボットだからでは済まされない人の死を描いています。
テーマとしては非常に面白いのですし、映画としてもよくできています。
間違いなく名作です。
しかし、野原ひろしが死ぬってことを描くのは「クレヨンしんちゃん」としてはどうなのか。
サザエさんなら波平、名探偵コナンなら毛利小五郎、ドラえもんならジャイアンなどその作品での主要キャラの死を描くことはタブー。
それを描けば良い話になります。
しかし、本来ギャグものとしての立ち位置であるクレヨンしんちゃんでそれをやるのは違うのではないかと私は思います。
子どもたちを全力で助けたり、家族のために仕事を頑張ったり、しんのすけを拷問するためにピーマンひと皿用意したり、最終決戦で本物のひろしでも気づけなかったしんのすけの合図に気づいたり。
ロボひろしは間違いなく、本物のひろしだったのです。
オトナ帝国での有名なひろしの回想シーン。
あれと同じ記憶をもったひろしが、家族から偽物扱いされ、自分の存在がみさえをはじめとした家族を悩ませていることを自覚して死を選ぶ。
そんな残酷な話をクレヨンしんちゃんで描いては欲しくなかった。
また、本物のひろしの行動がやや冷たく見えすぎて、本物のひろしの評価も下げかねない。
色々と危険性のあるシーンも目立ちました。
映画としては良作だけど、クレヨンしんちゃんとしてはどうなの?
と疑問を持たずにはいられませんでした。
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まとめ
ようやく『オトナ帝国』、『戦国大合戦』に匹敵する作品が登場した。
しかし、『B級グルメ』で近づいたクレヨンしんちゃんらしさから遠ざかった。
大衆が望む作品と古参なファンが望むものが必ずしも一致するものではありません。
時代が変われば求められるものは変わっていきます。
でも、根幹にある”クレヨンしんちゃん性”だけは失って欲しくないです。
その根幹を揺るがしかねない作品が今回のロボとーちゃん。
名作だけどクレしんじゃない。
それが私の感想です。
それでは、さようなら!