クレヨンしんちゃんとホラー。
基本ギャグ路線のクレヨンしんちゃんですが、実はごくまれにホラー要素が入った回もあります。
有名どころだとネネちゃんの殴られウサギ。
実は劇場版クレヨンしんちゃんにおいて唯一ホラー要素全開だった回があります。
それが今回お話しする『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』。
もちろんホラー要素だけでなく、随所にギャグシーンもあるのですが、恐らく大多数の方がこの映画の感想を聞かれたら怖かったというでしょう。
特に子供の頃に観た人は。
実際私はこの映画を小学生時に観てかなり怖い思いをしたことを覚えています。
しかし、ただ怖いだけではありません。
巨大な悪に直面したとき普通の五歳児ならどうなるのか、また本当にピンチになったとき人はどう変わるのか。
そんな観点からも楽しめる作品です。
それでは早速ご紹介していきます。
- 『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』とは
- 圧倒的恐怖感がトラウマ級に怖い!
- 恐怖に怯えて戦いを拒否する等身大の5歳児しんのすけ
- やっぱり最後はギャグでしょう 真剣ババ抜きと全力追いかけっこ
- 心に残る名言集
- クレヨンしんちゃん映画を観るなら!
- まとめ
『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』とは
概要
1996年4月13日に公開された『クレヨンしんちゃん』の劇場映画シリーズ4作目。
タイトルは原作者の臼井儀人が付けた。
この作品から臼井は映画制作から関係を薄くしていて、原作漫画も描かなくなった。2009年に臼井が死去したため、この作品が臼井が制作側として直接的に関わった最後の作品となった。
あらすじ
闇に覆われたどこかの国。
ゴーマン王子がお姫様を救うため二人のオカマ魔女・マカオとジョマに立ち向かったが、マカオとジョマの魔法によって、呪いをかけられてしまう。
しんのすけは、ふたば幼稚園の遠足で群馬に出来た新しい遊園地「ヘンダーランド」(設定では群馬県桐生市に所在)に遊びに来ていた。
そこでひまわり組のみんなとはぐれたしんのすけは、サーカスのテントの中でトッペマ・マペットという不思議なねじ巻き人形と出会う。
彼女からヘンダーランドは、実は異世界の魔法使いであるオカマ魔女・マカオとジョマが潜む城であることが語られる。
トッペマはしんのすけにどんな願い事でも叶えられる魔法のトランプを手渡し、マカオとジョマの地球征服計画を阻止するよう協力してほしいと頼む。
そこにマカオとジョマの部下、クレイ・G・マッドが現れ、捕まりそうになるが何とか撃退する。
二人はテントから抜け出そうとするが、別の部下であるチョキリーヌ・ベスタが現れ、トッペマは魔法を受け、金色のぜんまいを残して姿を消す。
家に戻ったしんのすけは、今日の事を振り返っていたが、そこにトッペマが現れる。トッペマは呪いによって夜の間しか姿を現すことが出来なくなったことを告げる。
改めてトッペマから必死の頼みを受けるしんのすけだが、怖がってその頼みを聞けず、トッペマとは決別してしまう。
数日後、ス・ノーマン・パーと名乗る雪だるまの様な男が春日部市を訪れた。
程なくしてス・ノーマンは教育実習の先生としてふたば幼稚園に現れ子供たちの人気者となるが、しんのすけは偶然トイレでス・ノーマンと対峙した際、彼が魔法のトランプの存在を知っていることを知り、危機感を覚える。
ス・ノーマンは野原家にまで強引に押し入り、しんのすけはス・ノーマンは悪者だと訴えるも、ス・ノーマンに言葉巧みに騙されているみさえとひろしはしんのすけの言葉を信じてくれない。
みさえとひろしを睡眠薬で眠らせた上で、深夜にとうとう本性を現したス・ノーマンはしんのすけから魔法のトランプを奪おうと襲い掛かる。
その時、しんのすけがトッペマから教わっていた呪文「スゲーナスゴイデス」を唱えると、しんのすけにとっての他でもない三大ヒーロー、アクション仮面、カンタムロボ、ぶりぶりざえもんがトランプの中から助けに現れた。
しんのすけは3人と力を合わせ、何とかス・ノーマンを追い払う。
しかしス・ノーマンは退散する際、野原家のポストに突然出て行ったお詫びの手紙と共にヘンダーランドの招待券を残していった。
翌日、野原家はその招待券を持ってヘンダーランドへと遊びに行くことに。
しんのすけはなおもひろしとみさえにス・ノーマンに騙されていると訴えるがそれは夢の話だと相手にされない。
ヘンダーランドに着きひろしとみさえがはしゃいでいる間も、自分の言うことを信じてもらえないしんのすけは全く楽しめなかった。
帰宅時になってようやくしんのすけは安心し、ひろしとみさえはトイレに行ってから帰路につく。
だが、帰宅後、しんのすけは人形となっていたひろしとみさえに襲われ、絶体絶命の状況に陥るが、そこにトッペマが現れ二人を撃退。
ひろしとみさえはトイレに行った間にマカオたちに捕まったことに気づく。
一度は恐怖からトッペマの頼みを断ってしまったしんのすけであったが、ひろしとみさえを助け、マカオとジョマを倒すことを決意する。
そして、対決の地、ヘンダーランドへ向かう。
圧倒的恐怖感がトラウマ級に怖い!
この映画と言えば圧倒的恐怖感。
ホラー映画に分類してもよいくらいホラー要素が強いです。
特にス・ノーマン・パーが関わるシーンは非常に怖い。
陽気で、ユーモアあふれて紳士的な一面と冷酷で口調が汚く子供をガキ呼ばわりする一面の使い分けが絶妙に怖いです。
特にトイレで二人きりになるシーンと家に帰って来た時に家にいるシーンは鳥肌ものです。
個人的に一番びくっとなったのは春日部防衛隊のメンバーにしんのすけがス・ノーマン・パーは悪いやつだと打ち明けるシーンです。
このシーンの前にス・ノーマン・パーがトイレでしんのすけが隠し持つトランプの存在を知っていることをしんのすけに伝え、遠回しにしんのすけに恐怖を植え付けるシーンがあります。
それを踏まえてしんのすけが信頼する春日部防衛隊のメンバーに相談するのですが、風間くん、ネネちゃん、ボーちゃんはス・ノーマン・パーが良い人だと信じて疑いません。
いつも信頼してくれる人が誰も信じてくれないことでしんのすけの孤独感を強める。
そしてそれに追い打ちをかけるようにまさお君が実はしんのすけとス・ノーマン・パーが出会う以前からス・ノーマン・パーがしんのすけを探していたことを伝えます。
そしてまさお君もス・ノーマン・パーは良い人ではないと思うと。
それを伝えたあとまさお君は怖くなってしんのすけを置いて帰ってしまう。
1人取り残されるしんのすけ。
その時急に背後に自転車が急ブレーキをかけて止まります。
ただコンビニの駐輪場に自転車を止めにきた人だったのですが、その何気ないことにしんのすけはおびえます。
皆さんもホラー映画を観た後や何だか嫌な感じがしている時に急に携帯がなったり、物音がしてびくっとなった経験はあるでしょう。
いつもならなんとも思わないことに恐怖する感覚が再現されていて、非常に怖いです。
その後家に帰るとス・ノーマン・パーがしんのすけを待っています。
しかも頼りのみさえはすっかりス・ノーマン・パーと意気投合。
最後の頼みの綱であるひろしまでもス・ノーマン・パーに心酔しきっています。
普段頼れる人全員が自分が恐怖している対象を信じているという恐怖構造。
最終的に一度はス・ノーマン・パーを追い返すのですが、ス・ノーマン・パーの誘いで訪れたヘンダーランドでみさえ・ひろしが敵の手におちてしまいます。
トイレに行ってくると言い残したみさえ・ひろしをベンチに座って待っているしんのすけに何も声をかけずただ帰っていくみさえ・ひろし。
それを待って待ってと行って追いかけるしんのすけ。
それに返事はありません。
それらを暗い後ろ姿だけで表現されたらこっちは恐怖でしかありません。
しかもこのみさえ・ひろしは敵の魔法で生み出された人形。
後に家のお風呂でしんのすけにこの人形が襲いかかるシーンは本当に怖いです。
恐怖に怯えて戦いを拒否する等身大の5歳児しんのすけ
実は本作のテーマは等身大の5歳児。
以前の記事で「」本当のクレヨンしんちゃんとは何か?劇場版で急に成長するのはいかがなものか?」ということを記事にしました。
『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』ではあくまで普通のしんのすけが描かれているわけですが、この作品では等身大の5歳児が描かれているわけです。
簡単に言うと普通の5歳児が地球侵略or世界征服を企む悪と遭遇したら怖くて逃げ出すよねって話です。
当たり前のようにしんのすけやドラえもんののび太君が悪と戦っていますが、普通の幼稚園児・小学生だったらそんなことできません。
その観点からこの作品は作られています。
なので、最初にトッペマからおかま魔女と戦うことを求められたときしんのすけは拒否します。
しかも4回も。
理由はただ「怖い」から。
いつものしんのすけなら二つ返事で誘いに乗ったり、よくことの重要性を理解しているんだかどうなんだかわからないような感じで協力しますが、この物語ではそうではありません。
一度しんのすけが断ったあとからス・ノーマン・パーが登場するまでにトッペマのテーマ曲が流れながらしんのすけの朝から寝るまでの何気ない日常が流れるシーンがあります。
※征服した世界の王女を操り人形に変えて、その人形に「私はトッペマあなたのしもべ。だけど私は何の役にも立たない。だって私はただのマペット」って歌を歌わさせるなんて残酷過ぎます。
幼稚園に行って、帰ってきたらみさえにいたずらして、夜ご飯を食べながらみさえがひろしに愚痴を言って、最後はしんのすけが布団に入るまで。
恐らくこのシーンの意味は二つあります。
1つは等身大の5歳児しんのすけを描く。
非日常の中に5歳児の日常を挿入することでそのコントラストで恐怖を増大させる。
もう1つはしんのすけをトッペマの視点で見せるためです。
実はトッペマはしんのすけにおかま魔女と戦うお願いをするときに「こんなことを会ってすぐの子供に頼むのもどうかと思う」という発言をしています。
そのためらいを表すように、一度しんのすけに頼んで以降トッペマはしんのすけにおかま魔女退治の協力要請をしにきません。
それはこのシーンを通してトッペマがしんのすけの日常を見たうえで頼みづらいということを示しているからです。
最終的には父母を救うために戦いを決意し、1人勇敢にヘンダーランドに向かうしんのすけですが、それに至るまでの5歳児の恐怖感をしっかり描いているのは数ある劇場版でもこの作品のみです。
やっぱり最後はギャグでしょう 真剣ババ抜きと全力追いかけっこ
とここまではホラー要素に光を当ててご紹介してきましたが、もちろんこの作品にもクレヨンしんちゃんワールド前回のギャグシーンがあります。
それはおかま魔女VS野原一家の三本勝負のシーンです。
ヘンダー城ではおかま魔女は魔法を使えないため、踊り、ババ抜き、追いかけっこで戦うことになります。(当初は一発勝負の予定が双方インチキをして勝負が三本勝負になります。)
特にその中で傑作と言えるのは真剣ババ抜きと全力追いかけっこ。
世界の運命を賭けたババ抜き
最初の踊り勝負で勝利したもののおかま魔女のインチキでババ抜きによって決着を付けることになった一同。
真剣勝負が続く中、残すはひろし、しんのすけ、マカオ。
絶対に勝利が求められる状況で勝つか負けるかの二択を迫られるひろし。
「二者択一だ。1か0か、Yesかnoか、男か女か、男か女なら女だよな」との作中最高の名言が飛び出す中夜が明けるまで悩み抜いたひろし。
時の経過と共に膨大な汗と不精ひげが。
この続きが気になる方はぜひこちらの動画をご覧になってください。
最終決戦 超本気の追いかけっこ
いろいろあって最終的には魔法も知力も関係ない体力勝負になるわけです。
よっぽどトッペマVSチョキリーヌ戦の方が魔法魔法しています(笑)
ジョーカーのカードを奪い返しにくるおかま魔女とそのカードを城の頂上まで持っていこうとする野原一家との凄まじい攻防戦。
この戦いで名シーンなのはひろしが「こんな紙切れ欲しけりゃくれてやるーー!!」と言って投げた紙切れをマカオが必死になってキャッチして掴んでその紙を見る時でしょう。
ジョーカーだと思って必死にキャッチしたジョマは怒り狂ってひろしの名刺をちりじりにします(笑)
心に残る名言集
この作品は先ほどのひろしの名言を筆頭に数々の名言が飛び出します。
その一部をいくつかご紹介します。
野原しんのすけ
「狼のおじさんよりお人形の女の子、お人形の女の子よりピチピチのお姉さんが好きな男の子だもん!」
これは男の子限らず男性一同の心の叫び。(一部お人形の女の子好きもいるでしょうが。なんなら狼のおじさん派も?)
それに対してトッペマが「子供といえども男ってわけね」と妙に納得します。
その後チョキリーヌの性格が悪いとしんのすけが知った時に「今後女の人を見た目で判断しないことね」と人生の教訓を説いてくれるトッペマが妙にかっこよかったです(笑)
トッペマ・マペット
「運命のレールを元に戻すだけよ」
これは自分もろとも自爆覚悟で臨んでくるトッペマに対してチョキリーヌが「お前、死ぬ気?」と尋ねた際にトッペマが答えたセリフです。
大事をなしてるわけではなくただ元の世界に戻したい。
ただそれだけだというトッペマのセリフが心に響きました。
この戦いの後、トッペマは力を使い果たし倒れてしまいます。
心配するしんのすけに対してトッペマはちょっと横になるだけよと言い残して消えていきます。
しんのすけのを心配させまいと笑顔で。
トッペマが消えたあと、しんのすけの頬に涙がつたいます。
野原ひろし
「みさえ、今俺たちの子供がちょっと大人になったところさ」
これは先ほどのシーンでしんのすけが涙を流したあとにひろしが言うセリフです。
実はこのときみさえは魔法でチョキリーヌのブラジャーになっており(貧乳のみさえが巨乳のチョキリーヌのブラジャーになるとはなんだか滑稽ですが)、この戦いの一部始終を見ていません。
魔法がとけてすぐだったため状況が飲み込めないみさえに対してひろしが言ったセリフが状況のものです。
余談ですがこれに対してみさえはちょっと間抜けないつも通りトーンの声で「はぁっ!?」と言います。
ここから一気にギャグ路線になっておかま魔女とのギャグ連発の最終決戦に挑みます。
みさえの「はぁっ!?」が引き金になってクレヨンしんちゃんにかかっていたホラー&シリアスの魔法が解けたのでしょう。
ス・ノーマン・パー
「ばあさん! 死ぬまで生きろよ!」
まさかのまさか。
意外な形でス・ノーマン・パーがこのブログを宣伝してくれるとは。
正直このブログのタイトルを付ける際に一切意識になかったので、このシーンを最近みて彼がこの言葉を言った時にかなり驚かされました(笑)。
もしかしたら記憶の片隅にこの言葉が残っていたのかもしれません。
ちなみにこの後立て続けに通りすがりの学生に「手抜きのアニメみたいに突っ立ってんじゃねえぞ!!」ってアニメ業界を痛烈に皮肉るところも含めて好きです。
クレヨンしんちゃん映画を観るなら!
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まとめ
お話の7割以上がホラー要素満載とそれ以前、それ以後にもない構成のこの作品。
※唯一『アミーゴ』がホラーとサスペンス要素があります。
今回お話していない内容以外にもキャラクターの一言一言が伏線になっていたりして非常に緻密に練られた物語です。
それと野原一家以外の主要キャラである春日部防衛隊&ふたば幼稚園の面々の出演時間が劇場版4作目にして増えています。
このあたりから彼らの個性も出始めており、後の劇場版での活躍を予感させられるものでもありました。
ホラーとギャグ、等身大の5歳児しんのすけと破天荒な野原一家、魔法と体力勝負。
随所に見所があって非常におすすめの作品です。
皆さんも機会があったらご覧になってください。
それでは、さようなら!