走り打ちで話題のロッテ・サントス選手。
その様はキューバでは踊りながら打っているように見えるとの理由でファンから「バレリーナ」と呼ばれていたという。
日本では中々見ない打撃スタイルだけに注目が集まっている。
俊足の左打者が走りながら三遊間にゴロを転がせば内野安打量産間違いなし。
と夢のような光景が広がるが、私は正直走り打ちでは内野安打は量産できないと考えている。
恐らく野球をやったことがある人、特にプロ野球でショートを務めている人はそこまで驚異を感じていないだろう。
それは何故か。
端的に言って、走り打ちで内野安打を奪うのは非常に難しいからだ。
特にNPBのショートを相手に走り打ちで内野安打にするのは至難の技だ。
そこで今日は走り打ち恐るるに足らずということについて語っていく。
ロッテ サントス選手とは
2017年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でキューバ代表を務めたロエル・サントス外野手。
俊足と守備が売りで、WBCでは1番打者と中堅手を主に務めた。
ここまで1,2番が固定できずにいたロッテにとってはピンポイントの補強と言える。(本当の最優先補強ポイントではないが)
5月末に来日、5/30には二軍戦に早速出場。
ロッテの伊東監督は状態によってはすぐにでも1軍で起用する方針だ。
伊東監督は「何日かこっちで練習してもらって、その中でいけると判断したら即(出場)登録になると思う」と話した。
このサントス選手の代名詞と言えば、WBCでも披露した走り打ち。
ほぼ一塁側に走りながら打球を三遊間に転がして内野安打を狙うものだ。
日本球界ではこのような打ち方をする選手がいないため、非常に注目されている。
なぜ日本人は走り打ちをしないのか 振り切らない打者は怖くない
この走り打ちだが、実はソフトボールの世界では多用されている打ち方。
通称スラップという。
野球よりも塁間が狭いソフトボールにおいては俊足の左打者が内野安打を量産する武器となる打ち方なのだ。
だが、野球ではこのスラップをする打者は少ない。
最大の理由の一つが塁間の違い。
ソフトボールと違って野球の方が塁間が長いため、スラップ打法で塁間までのタイムを縮めてもアウトされてしまうのだ。
イチロー選手の内野安打を批判する人がいるが、あれはイチロー選手のバットコントロールがあって初めて成り立つ技。
野球の歴史上、イチロー選手と同等の脚力をもった左打者は一定数いた。
イチロー選手は野球の歴史上最速の選手ではない。
それでも、内野安打を打てる選手とそうでない選手がいる。
それはひとえにバットコントロールの違いがある。
野手のいないところやシフトなど見て、内野安打になる場所に意図的に転がしているからこそ、内野安打が生まれる。
イチロー選手の場合は内野手の後方に落としたり、時に長打を打つこともある。
また打球速度も速いため、安易に対内野安打用の前進守備を敷かせないようにしている。
つまり、守る側からしてどこに打球が飛んでいくかわからないからこそ内野安打が量産できるのだ。
では、今回のサントス選手のケースはどうか。
サントス選手はキューバ国内での通算成績は576試合に出場し、打率3割1分6厘、25本塁打。
1シーズン最高本塁打は6。
ここ2シーズンは本塁打0。
長打力がある選手ではない。
そうなると当然内野手は前に守りやすくなる。
サントス選手の全てのプレイをみたわけではないが、WBCで日本と対戦した際に走り打ちをしたものの、ショート坂本勇人選手にさばかれてアウトになっている。
坂本勇人選手の存在は唯一無二 ~WBCで最もなくてはならない男~
この時のサントス選手の一塁到達タイムは3.5秒。
イチロー選手の一塁到達タイムが約3.7秒であることを考えれば驚異的なタイム。
1塁ベースを駆け抜けろ!
— パ・リーグTV公式 (@PacificleagueTV) 2017年6月6日
打ってから1塁までの時間を計ってみました! pic.twitter.com/oBv4HM746u
しかし、結果はアウト。
もちろん坂本選手のプレーがすごいのも理由の一つだが、理由はもう一つある。
それはサントス選手が振り切らないから。
内野守備で重要なのは前で捕球すること。
前進するスピードや一歩目の速さなどが求められる。
これがあれば当然より速くボールを捕球できるし、当然送球もスムーズになる。
ところが打者に振り切られるとこの前で捕球するのが少し遅れる。
どうしても強振されると心理的にちょっと意識が後ろにいくからだ。
強い打球が来るような気がする、後方に打球が飛びそうな気がするのだ。
強打の2番でおなじみ楽天のペゲーロ選手。
公称体重119kgの巨体ながらここまでリーグ3位の内野安打数8を記録。
巨体の割に足が割りと速いのも理由の一つが、もう一つにペゲーロ選手のスイングも関係している。
ペゲーロ選手ほど打球が速く、フルスイングされるとどうしても内野手は深く守るし、一歩目が遅くなる。
そうなるとペゲーロ選手がスイングほど強い打球を打たなかった時に内野安打が生まれるのだ。
ところがサントス選手の走り打ちの場合は走り打ちの姿勢を見せた瞬間に内野手はある程度チャージをする。
そのため、内野手は通常以上に素早く一塁に送球することが出来るのだ。
パ・リーグには今宮健太、源田壮亮、安達了一、中島卓也と守備に定評がある遊撃手がずらり。
守備が苦手な遊撃手であれば内野安打を許す可能性がありますが、その確率は極めて低いだろう。
もし、サントス選手がキューバで残した並みの率を残すとしたらそれは打撃でしっかりと順応した時。
走り打ちで率を残すことは至難の技と言える。
まとめ
最初は話題になるだろうが、走り打ちだけで率を残せるほど日本球界のレベルは低くない。
キューバリーグで通算打率3割を越えているので、ある程度打撃技術もしっかりしているのだろう。
またキューバリーグではよく四球を選んでいるので、ある程度選球眼はありそうだ。
休日返上してトレーニングしたり、来日直後にロッテの試合を観たりと順応しようとする姿勢が見えているのは非常に頼もしい。
ロッテの救世主になれるよう、しっかりとミートする打撃で結果を残して欲しい。
それでは、さようなら!